米ニューヨークの連邦地裁が「プリンス・グループ」を詐欺・資金洗浄などの容疑で起訴。米司法省・財務省は10月14日「プリンス・ホールディング・グループ(Prince Holding Group)」と創業者の陳志の海外資産を差し押さえ、台湾の関連9社と台湾人女性3人を含む計146件を制裁リストに追加した。長腕管轄が及ぶなか、台湾側も司法・警察・調査のみならず法務部・内政部まで連携し、全面的に捜査を支援している。
制裁公表を受け、台北地検は緊張を強めた。かつて同地検はプリンスグループの台湾企業による9億元超(約44億円)の横領事件を受理し、台湾地区の元責任者・張剛耀を主犯として通緝(指名手配)していた。当時の地検検察長が現法務部長の鄭銘謙氏、現検察長は当時の調査局長・王俊力氏にあたる。

検警は真の首魁を割り出せず 今回は徹底調査で網の目を埋める
当時、検察・調査当局が突き止めたのは、張剛耀がプリンス不動産の会長、陳志が登記上の経営責任者という事実にとどまった。だが陳志は“雇われプロ経営者”に見せかけた実質的オーナーで、米側が詐欺組織の中枢と認定する国際級の大物だ。
今回、台北地検の王俊力検察長は米側が追跡するプリンス・グループ案件で直ちに立件。検察は専案チームを編成し、刑事警察局と法務部調査局を指揮して、台湾内の関係企業と資産を縦横に洗った。調べでは、制裁対象に挙がったプリンス不動産、聯凡、聯凡貮、睿督、博居、博居貮、澄碩、邁羽、鳴湾の9社にとどまらず、さらに関係先が存在することが判明している。
専案チームの担当者によれば、米制裁リストの9社と台湾人女性3名に加え、同リストに載る外国人が台湾で設立した法人も、今回の資産調査の対象に加えているという。

プリンス・グループの数十億規模の台湾資産を追跡 高級マンションと暗号資産の資金動線を監視
米国が制裁名簿を公表後、FBIは被害者へ損害申告の受け付け開始を発表。これを受け、台湾の検・警・調はプリンス・グループの国内での犯行連携や不正利得の有無を急ぎ精査した。法務部国際事務司は台米司法互助協定に基づき連絡メカニズムを起動し、FBIとAITの担当者と専用ルートを構築、米側の捜査情報の入手を急いでいる。
2025年10月14日の米側による全球制裁リスト公表以降、検察は資金洗浄容疑などで立件。まず睿督、邁羽、鳴湾、澄碩、博居、博居貮、聯凡、聯凡貮が所有する台北市・和平東路一段「和平大苑」内の物件11戸を押さえた。評価額は合計38億元超(約186億円)。あわせて銀行口座の資金も追跡し、すでに数十億円規模を把握している。
なぜ高級レジデンスに狙いを定めたのか。捜査当局によると、詐欺組織はしばしば“合法企業”を介して不正資金を隠し、貴金属・宝石・不動産の購入や再投資、名車・豪邸の取得に充てるのが通例。近年は暗号資産でカンボジアへ資金を流す手口も確認されており、プリンス・グループの本部がカンボジアにある事情を踏まえ、関連法人の暗号資産取引にも重点監視を敷いている。

検察はプリンス・グループ全資産を凍結 次のステップは一斉摘発
専案チームの把握では、台湾内資産(不動産+口座資金)は少なくとも40億元(約196億円)。調査は続行中で、総額が上振れする可能性もある。台湾内の関連企業の不動産と現金はすでに凍結され、各社は動揺。ある企業は検察に対し「数百人の従業員に給与が払えず、会社を解散したいが解散費も捻出できない」と申し立てた。
一方、検・警・調は次段階へ進み、資産凍結に加えて台湾内の関係幹部に出国規制を実施。米側からプリンス・グループの犯罪資料を受領し次第、事情聴取や逮捕などの“収網”に踏み切る構えだ。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp





















































