台湾代表のエストニア停滞、日本経済新聞アジア版が報道「リトアニア悪夢再びか?」

2025-11-04 10:45
2023年4月19日、エストニアでのサイクリスト(写真/AP通信提供)
2023年4月19日、エストニアでのサイクリスト(写真/AP通信提供)
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「名称」をめぐる外交的駆け引きが、台湾のバルト三国での拡大計画を行き詰まらせ、中国とロシアによる台湾外交への圧力を浮き彫りにしている。複数の関係者が日経アジアに明らかにしたところによれば、エストニアと台湾が同国の首都タリンに設置を予定していた準外交機関の計画は停滞しているという。問題の核心は、台北側が「台湾(Taiwanese)」の名称使用にこだわる一方で、タリン側が北京の反発を懸念し、国際慣例に沿った「台北(Taipei)」の呼称を固守している点にある。

この事態は、2021年のリトアニア「台湾代表処」問題の再来を思わせるものであり、また、台湾の頼清徳政権にとっては、カナダとの「投資促進・保護協定(FIPA)」交渉を終えながらも署名に至っていない件に続き、外交舞台で直面する現実的な試練となっている。

「リトアニアモデル」の誘惑と呪い

時をさかのぼると2023年、当時の台湾外交部長・呉釗燮氏は異例のバルト三国訪問を行った。これを受けてエストニア政府は善意を示し、タリンに「非外交性質の台北オフィス」を設立することを認めた。この種の「代表処」は、台湾が国交を持たない国で実質的な大使館として機能しており、経済・投資の促進、文化交流、領事業務などの重要な役割を担っている。だが、それから2年を経た現在も、このオフィスは計画段階にとどまっている。

交渉の内幕に詳しい関係者が日経アジアに語ったところによると、双方の最大の障害はオフィスの正式名称にあるという。台湾側は、2021年にリトアニアの首都ヴィリニュス(Vilnius)で「駐リトアニア台湾代表処(The Taiwanese Representative Office in Lithuania)」を設立した成功例を再現しようとした。これは、台湾が国際社会で主権的地位を示す象徴的な一歩とみなされた。しかし関係者は、「エストニアにリトアニアと同様の名称を求めるのは現実的ではない」と明言する。

当時、中国はリトアニアへの報復として外交関係を代弁級に引き下げ、大使を追放したうえ、税関システムからリトアニアを事実上「除外」し、経済制裁を科した。さらにドイツなど欧州連合(EU)の主要国企業に対しても、リトアニア製部品の使用をやめなければ中国市場から排除すると圧力をかけ、EUの根幹である「域内での自由な物資の流通」原則に挑戦した。

スロバキアのシンクタンク「中欧アジア研究所(CEIAS)」のマテイ・シマルチク氏は、中国によるこうした「サプライチェーンの武器化」が、二国間の外交摩擦をEU全体の根本原則を揺るがす危機へと拡大させたと分析する。その結果、EUが結束して対抗する事態となったという。もっとも前出の関係者は次のように指摘する。「リトアニアがあの混乱を生き延びられたのは、中国がやり過ぎたためだ。ドイツはリトアニアを救うためではなく、EU単一市場を守るために動いた。もしエストニアが同じ道をたどろうとすれば、他のEU諸国の首都から支援を得るのは極めて難しいだろう」。

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