トランプ氏の「ゴーサイン」で東アジアの軍拡が加速? 日本は「戦後タブー」を越えるのか――高市政権、維新と連携し原子力潜水艦を視野

2025-11-04 14:25
2025年10月28日、高市早苗首相がトランプ米大統領とともに横須賀で在日米軍を視察。(写真/AP通信)
2025年10月28日、高市早苗首相がトランプ米大統領とともに横須賀で在日米軍を視察。(写真/AP通信)
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米国のトランプ大統領が韓国の原子力潜水艦建造を支援する方針に同意したことで、米韓の防衛協力は新たな段階に入った。余波は日本政界にも及び、発足直後の高市政権は長年の「戦後タブー」と向き合う局面を迎えている。問われるのは「日本も“原潜クラブ”入りすべきか」という重い選択だ。2023年3月13日、バイデン米大統領、アルバニージー豪首相、スナク英首相が米・サンディエゴ海軍基地でAUKUSの原潜協力を共同発表。(写真/AP通信)

木原稔官房長官は10月31日、原子力潜水艦の導入可能性を問われ、「抑止力・対処力を高めるため必要な方策は幅広く検討し、選択肢は排除しない」と述べた。一方で、原子力基本法などの見直しが不可欠になるとして「現段階で決定はない」と慎重姿勢も示した。

官邸の慎重論に対し、政権与党は機動的だ。高市氏が率いる自民党は、日本維新の会と10月21日に交わした連立合意文書で、「次世代動力」を活用しVLS(垂直発射システム)搭載潜水艦の保有を推進すると明記。防衛・海洋分野では「次世代動力」=原子力と解するのが通例で、防衛相の小泉進次郎氏も「あらゆる選択肢を検討し、可能性を排除しない」と述べ、政策転換の余地を示した。

高市早苗(左)、防衛大臣小泉進次郎(中)一起登上駐紮日本的喬治華盛頓號航空母艦。(美聯社)
高市早苗首相(左)と小泉進次郎防衛相(中央)、米空母「ジョージ・ワシントン」に乗艦。(写真/AP通信)

かつては連立与党の公明党が鳩派として歯止め役を担ってきた。だが、自民と右派色の濃い維新の連立体制では、いわゆる「国家の正常化」へアクセルが踏み込まれやすい構図に変わる。トランプ氏が今回のアジア歴訪で韓国の原潜開発に前向きなシグナルを送ったことは、東京にとっても“深海”を見据え自らの将来像を描く契機となった。

東アジアに「原潜クラブ」? 日本の不在が際立つ懸念

『日経アジア』によれば、西太平洋の水面下のパワーバランスは長年、米・中・露の原子力潜水艦が主導してきた。中国の原潜は東シナ海、南シナ海、西太平洋の深海で活動を活発化。ロシアのボレイ級は北のオホーツク海に潜み、日本列島を太平洋への“門”としてにらむ。

これに対し、海洋国家の日本と韓国は、主力が従来型のディーゼル電気潜水艦だ。日本の「そうりゅう型」「たいげい型」はAIP(非大気依存推進)やリチウムイオン電池で静粛性・持続力に定評があるが、酸素を要するディーゼルの宿命として、定期的に潜望鏡深度まで浮上して“呼吸”しなければならない。この露出は、現代の対潜探知に対して致命的な弱点となり得る。

由川崎重工製造、日本自衛隊大鯨型6號潛艦「蒼鯨」14日正式下水。(翻攝自防衛省裝備廳粉專)
川崎重工が建造した海上自衛隊「たいげい」型6番艦「蒼鯨」が14日に進水。(写真/防衛装備庁提供)

韓国と比べ、日本が守る海域ははるかに広い。静かなディーゼル潜でも水中航続は有限で、定期浮上・充電が不可避――広大な太平洋ではハンディが大きい。原子力潜水艦なら、この制約を断ち切れる。原子炉を動力源に理論上は無制限の航続を得て、補給のボトルネックは食料と乗員の体力のみ。高速で長期にわたり深海に潜伏し、遠距離の戦略任務を遂行できる“真の海の幽霊”であり、万一の核攻撃時における理想的な核報復プラットフォームでもある。 (関連記事: 21年ぶりの対話なるか 高市首相、北朝鮮に「日朝首脳会談」呼びかけ トランプ大統領も全面支持 関連記事をもっと読む

この文脈で、トランプ氏が米造船所の支援を前提に韓国の原潜開発を後押しすると示したインパクトは大きい。AUKUS(英豪との枠組み、2021年発足)に続き、米国の原子力技術の供与を受ける“第2の国”がインド太平洋に生まれれば、日本への戦略的圧力は一段と増す。『日経アジア』は、米国が太平洋の防衛責任を同盟国により多く委ね、自国防衛に軸足を戻すシナリオを指摘する。

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