高市早苗首相、日朝首脳会談を北朝鮮に打診 拉致被害者救出へ「あらゆる手段を採る」

2025-11-04 12:27
2025年10月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領と日本の高市早苗首相が、北朝鮮による拉致被害者家族と面会した。(写真/AP通信)
2025年10月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領と日本の高市早苗首相が、北朝鮮による拉致被害者家族と面会した。(写真/AP通信)
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日本の高市早苗首相は11月3日、東京で開かれた「北朝鮮による拉致被害者の即時帰国を求める全国集会」に出席し、北朝鮮側に「日朝首脳会談」の開催を打診したことを明らかにした。会場には「拉致被害者家族会」のメンバーや数百人の支援者が集まり、白髪交じりの家族たちを前に、高市氏は「国民の命と国家主権に関わるこの問題を終わらせるため、あらゆる手段を尽くす」と強調した。

日本メディアは、小泉純一郎元首相が2004年に平壌を訪問して以来、日朝の最高指導者による対話は21年間途絶えていると指摘。今回、高市首相が自ら「オリーブの枝」を差し出したことで、長年凍結していた日朝関係が“融氷”に向かう可能性があると報じた。一方で、北朝鮮の公式メディアはすでに高市氏を「右翼保守層の代弁者」と位置付けており、この“タカ派首相”の賭けが歴史的和解の第一歩となるか注目が集まっている。

「私の世代でこの問題を解決する」高市首相が決意表明

「今もなお被害者が帰国できていない現実に、心からお詫び申し上げます。政府は改めてこの問題に真剣に取り組みます」高市首相は演説の冒頭、家族会に深く頭を下げた。これは1970年代以降、拉致問題において日本政府が目立った進展を得られなかったことへの率直な反省でもあった。続けて高市氏は強い意志を示した。「拉致問題の解決には、日本が主体的に行動することが何よりも重要です。私は自ら最前線に立ち、状況に応じて果敢に行動し、必ず具体的な成果につなげます」

日刊紙によると、高市氏が言う「具体的成果」とはただ一つ――北朝鮮に拉致された日本人全員の生存帰国である。彼女は演説の中でこうも語った。「もし拉致問題が解決すれば、それは我が国にとってのみならず、北朝鮮と国際社会全体にとっても大きな利益となります。家族の皆さまがご健在のうちにこの問題を解決することこそ、日朝双方が平和と繁栄の未来を描くために欠かせません」

【背景解説】北朝鮮による日本人拉致問題とは

1970年代から1980年代にかけて、北朝鮮の工作員が日本国内や欧州で複数の日本人を拉致したとされる事件。日本政府はこれを「国家犯罪」と位置づけている。

2002年、小泉純一郎首相が歴史的に平壌を訪問した際、当時の北朝鮮指導者・金正日(現指導者・金正恩の父)は初めて拉致の事実を認め、5人の被害者を帰国させた。しかし、「横田めぐみ」さんをはじめとする他の被害者については「死亡した」と主張し、提示した「死亡証明書」などの証拠には数々の矛盾があると日本側は指摘。いまだ多くの被害者が北朝鮮に拘束されている可能性があるとみられている。

2002年9月17日、日本首相小泉純一郎と北朝鮮最高指導者金正日が平壌で会談(美聯社)
2002年9月17日、日本の小泉純一郎首相が平壌で北朝鮮の金正日総書記と会談した。(写真/AP通信)

日本政府が公式に認定する拉致被害者は17人だが、行方不明者を含めればその数は数百人規模に上る可能性もある。拉致問題は単なる人権問題にとどまらず、日本の国家主権と国民感情に深く関わる外交上最大の懸案の一つとなっている。

米国の「全面支持」と北朝鮮の「右翼」レッテル

高市首相が「日朝首脳会談」や「人質救出」を打ち出した背景には、周到な外交戦略があるとみられている。先月には訪日したドナルド・トランプ米大統領と会談し、拉致被害者家族との面会を特別に調整。高市氏は演説で「トランプ大統領は家族が抱える、愛する者と再会できない悲しみを深く理解してくださった」と述べ、日本政府の発表でもトランプ氏が「日本の拉致問題を全面的に支持する」と表明したことが明らかにされている。

2025年10月28日、米国大統領トランプと日本首相高市早苗が北朝鮮に拉致された人質の被害者家族と会見。(美聯社)
2025年10月28日、アメリカのドナルド・トランプ大統領と日本の高市早苗首相が、北朝鮮による拉致被害者家族と面会した。(写真/AP通信)

また、高市氏はASEAN首脳会議やAPECなど多国間外交の場でも各国首脳に拉致問題への理解と協力を求め続けており、「私たちの声が国際社会を動かし、最終的には北朝鮮をも動かすことを願っています」と訴えた。

一方、北朝鮮の党機関紙『労働新聞』は高市氏の首相就任に際し、彼女を「右翼保守層の代表」として警戒。過去の発言を引用し、「政治家として登場した当初から右翼的言動を繰り返し、“強硬保守派”と呼ばれてきた」「軍国主義の象徴である靖国神社参拝を正当化する人物」と非難した。さらに同紙は「日本政治の右傾化はもはや不可避であり、より危険な道を進むことになる」と警告。高市氏が目指す拉致問題解決や日朝関係の雪解けには、依然として大きなハードルが立ちはだかっている。

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