カンボジアの電信詐欺組織とされる「太子グループ」は、先週の米国制裁発表を機に、その事業実態が次第に明らかになってきた。『新新聞』は先週、同グループが台北101にゲーム会社「天旭国際科技」を設立していると最初に伝えたが、台湾での展開はこれにとどまらない。台北・信義区に拠点を置くゲーム会社「夢幻互娛」も太子グループと関係があるとされ、同グループがかつて出資した「カンボジア航空」は台湾向けチャーター便の運航にも関わっている。
太子グループ(Prince Group)は米当局により起訴され、台湾の9社が制裁リストに挙げられた。メディア報道では、トップの陳志氏がこれまで少なくとも10回、台湾を訪れていたという。度重なる入国について、警政署長の張榮興氏は19日、「主に2022年以前で、その後は入国を確認していない」と説明した。
台湾は太子グループの資金洗浄地、パラオ進出の踏み台
この間、同グループ傘下の大牛科技は電信詐欺への関与で起訴されたが、会社資金は凍結されなかった。台湾側メンバーの張剛耀氏は、約9億元を「博居」など9社を経由して自身の元大銀行の個人口座に移したとされ、資金フローは金融監督機関や法務部の十分な注意を引かなかった模様だ。
同グループは台湾で「台湾太子不動産」を通じて資金の正当化を図る一方、台湾を拠点にパラオへの投資を進めたとみられる。先週、米英は太子グループに関連する146の実体・個人へ包括的制裁を発表。対象には台湾人3名が含まれ、彼らはパラオでペーパーカンパニー「Grand Legend」の設立を支援し、パラオ華僑連合会副主席の王國丹(Rose Wang)氏と連携して、ジェレベラス島(Ngerbelas Island)の最長99年の土地契約を取得、ホテルやカジノの経営を試みたとされる。

新南向政策に関連する経済・貿易の領域でも、こうした人物が紛れ込む事例は少なくない。『鏡週刊』によれば、今年1月、外交部長の林佳龍氏が友好国パラオの大統領・惠恕仁の就任式に出席した際、我が国の特使団の昼食会に同席した台湾商人の黄紀彰氏が、パラオの公有地投資詐欺に関与し、約9,800万円を集めたことが判明。外交部は黄氏を「積極的に招待していない」と説明している。
オンラインゲームからネット調査、人材募集まで
上述の企業以外にも、太子グループは台湾で複数の事業に関与している。『Cheers雑誌』主催の「2025 TALENT, in Taiwan(台湾人材永続行動連盟)」には「夢幻互娛」が参加。同社は求人サイト上で、複数年にわたり「1111幸福企業」の金賞・銀賞を受賞したと強調し、ネット/モバイルゲームの発行・運営を主業と位置づける。チームは10年以上の業界経験を持ち、親会社のDream Interactive Era Holding Ltd.は太子グループの関係企業にあたる。 (関連記事: 台湾「17LIVE」社外取締役に太子グループ関係者 シンガポールを資金洗浄の“踏み台”と批判、当局イメージに打撃 | 関連記事をもっと読む )
Dream Interactive Era Holding Ltd.の公式説明では、個人投資家から資金を募り、オープン型またはクローズド型のファンドを組成。多数の小口資金を合算して具体的な投資に充て、投資先の事業運営による規模の経済を享受する仕組みを掲げる。
