《日経》が重大分析「福建派」壊滅で習近平氏の軍中枢が一夜で崩落 台湾向け司令系統にも断裂

中国共産党総書記・中央軍事委員会主席の習近平氏が2024年12月、マカオの新行政長官就任式に出席し、人民解放軍マカオ駐留部隊を閲兵した際の様子。(AP通信)
中国共産党総書記・中央軍事委員会主席の習近平氏が2024年12月、マカオの新行政長官就任式に出席し、人民解放軍マカオ駐留部隊を閲兵した際の様子。(AP通信)
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中国共産党第20期四中全会を目前に、中南海を揺さぶる軍の大規模粛清が水面下で引き起こされた。習近平氏が最も信頼する軍内派閥の一つとされ、対台湾戦略を主導してきた「福建派」の中核が10月18日に事実上“全滅”。中央軍事委員会(CMC)現職副主席の何衛東(か・えいとう)氏を含む上将9人が相次いで失脚した。文化大革命以来で最も激しいとされる高層粛清は、習氏の人事支配“神話”に亀裂を入れただけでなく、対台布陣の中枢たる指揮チェーンを一気に断ち切り、緊張が続く台湾海峡に前例のない不確実性をもたらした。

ネット流行語の「そして、後は何もない」が、今回の福建派の状況を端的に示す。習氏の強い引き立てで「習家軍」の拠点と目されてきた福建派は、国防部の一枚の告知で一掃に近い打撃を受けた。先週金曜、中国国防部が控えめに公表した短い発表では、汚職を理由に人民解放軍の高級将校9人の党籍・軍籍剥奪を通告。いずれも解放軍最高位の上将だった。

日経アジアは、この粛清名簿の重みは「政治的地震」に匹敵すると指摘。習体制下の軍腐敗の根深さを露わにすると同時に、権力固めと対台戦略の実行を担う指揮中枢を直撃したと分析する。突発的な求心力の崩落は、世界の軍事・政治分析コミュニティの強い関心を呼んだ。

「文革以来初」:現職の軍委副主席が在任中に失脚

名簿で最も高位かつ象徴的なのは何衛東氏だ。中共中央政治局委員を兼ね、CMC副主席として張又侠氏に次ぐ軍序列2位の「制服組」の頂点にいた。長らく公の場に姿を見せず所在が不明視されてきたが、今回の粛清で失脚が確定した。

2025年3月5日、時任中央軍事委員會副主席何衛東出席全國人民代表大會。(美聯社)
2025年3月5日、当時の中央軍事委員会副主席・何衛東が全国人民代表大会に出席。(AP)

何氏の失脚は極めて異例で、1966〜76年の文化大革命以来、在任中に整肃を受けた初の軍委副主席となる。直近の類例は1967年に遡る。当時の軍委副主席・賀龍氏は南昌起義の主力を率いた創始元帥として知られたが、権力闘争の渦中で迫害・収監され、2年後に非業の死を遂げた。

1972年、15歳の何氏は解放軍に入隊。当時の中国は激しい政争下にあり、前年には毛沢東氏の後継と目された軍委副主席・林彪氏が失脚、ソ連への逃走途上でモンゴルに墜落して死亡した。少年兵だった何氏が半世紀後、林彪氏に相当する権力の座—軍委副主席—に上り詰め、さらに文化大革命期の賀龍氏になぞらえるかのように頂点で粛清される結末を迎えるとは、当時想像し得なかっただろう。

何氏に続く要人は、元CMC委員で政治工作部主任の苗華氏。加えて、元東部戦区司令員の林向陽氏も粛清対象となった。3氏は解放軍における「福建派」の“鉄の三角”を構成してきたが、今回そろって排除された。台湾有事を視野に描かれた司令系統の中核が一夜にして空洞化した影響は、今後の軍運用と地域の安全保障見通しに重い影を落とす。 (関連記事: トランプ氏の強硬策が壁に直面 最新データが示す「中国製」依存、来週の交渉で習近平氏の一手に期待 関連記事をもっと読む

龍興の地の近衛が崩れる

「福建派」ないし「閩江新軍」とは、福建に深い縁を持つ将官群を指す。福建は台湾海峡の前線であると同時に、習氏の政治経歴で極めて重要な舞台でもある。1985〜2002年にかけて習氏は福建で17年勤務し、厦門副市長から福建省長まで上り詰めた。この間、厦門に駐屯し台海正面を担った第31集団軍(現改編)との関係を深め、前南京軍区隷下の同部隊は習氏の“人材プール”となった。頂点に立った後は、第31集団軍出身・在籍経験者の将官が次々と抜擢され、何衛東・苗華・林向陽の各氏はその代表格だった。 

中国解放軍前中央軍委副主席苗華。(美聯社)
中国人民解放軍の前中央軍委副主席・苗華。(AP)
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