《日経》が重大分析「福建派」壊滅で習近平氏の軍中枢が一夜で崩落 台湾向け司令系統にも断裂

2025-10-23 17:47
中国共産党総書記・中央軍事委員会主席の習近平氏が2024年12月、マカオの新行政長官就任式に出席し、人民解放軍マカオ駐留部隊を閲兵した際の様子。(AP通信)
中国共産党総書記・中央軍事委員会主席の習近平氏が2024年12月、マカオの新行政長官就任式に出席し、人民解放軍マカオ駐留部隊を閲兵した際の様子。(AP通信)
目次

中国共産党第20期四中全会を目前に、中南海を揺さぶる軍の大規模粛清が水面下で引き起こされた。習近平氏が最も信頼する軍内派閥の一つとされ、対台湾戦略を主導してきた「福建派」の中核が10月18日に事実上“全滅”。中央軍事委員会(CMC)現職副主席の何衛東(か・えいとう)氏を含む上将9人が相次いで失脚した。文化大革命以来で最も激しいとされる高層粛清は、習氏の人事支配“神話”に亀裂を入れただけでなく、対台布陣の中枢たる指揮チェーンを一気に断ち切り、緊張が続く台湾海峡に前例のない不確実性をもたらした。

ネット流行語の「そして、後は何もない」が、今回の福建派の状況を端的に示す。習氏の強い引き立てで「習家軍」の拠点と目されてきた福建派は、国防部の一枚の告知で一掃に近い打撃を受けた。先週金曜、中国国防部が控えめに公表した短い発表では、汚職を理由に人民解放軍の高級将校9人の党籍・軍籍剥奪を通告。いずれも解放軍最高位の上将だった。

日経アジアは、この粛清名簿の重みは「政治的地震」に匹敵すると指摘。習体制下の軍腐敗の根深さを露わにすると同時に、権力固めと対台戦略の実行を担う指揮中枢を直撃したと分析する。突発的な求心力の崩落は、世界の軍事・政治分析コミュニティの強い関心を呼んだ。

「文革以来初」:現職の軍委副主席が在任中に失脚

名簿で最も高位かつ象徴的なのは何衛東氏だ。中共中央政治局委員を兼ね、CMC副主席として張又侠氏に次ぐ軍序列2位の「制服組」の頂点にいた。長らく公の場に姿を見せず所在が不明視されてきたが、今回の粛清で失脚が確定した。

2025年3月5日、時任中央軍事委員會副主席何衛東出席全國人民代表大會。(美聯社)
2025年3月5日、当時の中央軍事委員会副主席・何衛東が全国人民代表大会に出席。(AP)

何氏の失脚は極めて異例で、1966〜76年の文化大革命以来、在任中に整肃を受けた初の軍委副主席となる。直近の類例は1967年に遡る。当時の軍委副主席・賀龍氏は南昌起義の主力を率いた創始元帥として知られたが、権力闘争の渦中で迫害・収監され、2年後に非業の死を遂げた。

1972年、15歳の何氏は解放軍に入隊。当時の中国は激しい政争下にあり、前年には毛沢東氏の後継と目された軍委副主席・林彪氏が失脚、ソ連への逃走途上でモンゴルに墜落して死亡した。少年兵だった何氏が半世紀後、林彪氏に相当する権力の座—軍委副主席—に上り詰め、さらに文化大革命期の賀龍氏になぞらえるかのように頂点で粛清される結末を迎えるとは、当時想像し得なかっただろう。

何氏に続く要人は、元CMC委員で政治工作部主任の苗華氏。加えて、元東部戦区司令員の林向陽氏も粛清対象となった。3氏は解放軍における「福建派」の“鉄の三角”を構成してきたが、今回そろって排除された。台湾有事を視野に描かれた司令系統の中核が一夜にして空洞化した影響は、今後の軍運用と地域の安全保障見通しに重い影を落とす。 (関連記事: トランプ氏の強硬策が壁に直面 最新データが示す「中国製」依存、来週の交渉で習近平氏の一手に期待 関連記事をもっと読む

龍興の地の近衛が崩れる

「福建派」ないし「閩江新軍」とは、福建に深い縁を持つ将官群を指す。福建は台湾海峡の前線であると同時に、習氏の政治経歴で極めて重要な舞台でもある。1985〜2002年にかけて習氏は福建で17年勤務し、厦門副市長から福建省長まで上り詰めた。この間、厦門に駐屯し台海正面を担った第31集団軍(現改編)との関係を深め、前南京軍区隷下の同部隊は習氏の“人材プール”となった。頂点に立った後は、第31集団軍出身・在籍経験者の将官が次々と抜擢され、何衛東・苗華・林向陽の各氏はその代表格だった。 

中国解放軍前中央軍委副主席苗華。(美聯社)
中国人民解放軍の前中央軍委副主席・苗華。(AP)
最新ニュース
トランプ氏の強硬策が壁に直面 最新データが示す「中国製」依存、来週の交渉で習近平氏の一手に期待
トランプ氏、同盟国に「約1兆ドル拠出」を要求 李在明氏は拒否、高市早苗氏は板挟み 英研究者が提言「日韓で連携し、米国にノーを」
【新新聞】知られざる太子グループ カンボジアの銀行・空港・航空まで投資拡大、テマセク連携の報道も
内部暴露》台湾・盧秀燕台中市長に批判集中 国民党の最有力総統候補が不満噴出し反撃
台湾、24年ぶりの新台湾ドル紙幣を全面刷新 100元から2000元まで5種類を再設計へ 政治人物の肖像は消えるのか?中銀総裁が正式発表
独自》北京、台湾光復節を中国の祝日に? 国民党の動きをテコに「両岸共同休日」構想で統一ムード演出か
台湾・花蓮光復せき止め湖決壊 「越流は致命的な誤解」と李鴻源氏 撤退の遅れを悔やみ、選挙年の思惑で復旧が迷走
SMBC日本シリーズ2025開幕へ 阪神とソフトバンクが日本一を懸け激突 25日福岡で第1戦
台湾・花蓮光復「せき止め湖災害」から1カ月 「再建」へ移行も住民に広がる「集団的ためらい」 経済停滞と「心の堰き止め湖」
TSMC、第3四半期で過去最高益を更新 AI需要がけん引し2ナノ量産へカウントダウン
新首相・高市氏、給付金配布と同時に労働時間上限緩和検討 学者「0.1%だけが過労死まで働きたい」
高市政権・松本洋平文科相「南京大虐殺」発言巡り波紋 松本洋平文科相に歴史認識めぐる疑念、高市政権に新たな試練
高市早苗政権下で日台関係は一段と深化するか 台湾・林佳龍外交部長「自信と期待を持っている」
陸文浩の視点:海強操演が終了、頼清徳氏が視察 共軍は特定目標を狙う合同作戦に踏み切るのか?
トランプ大統領、ゼレンスキー非難後にプーチンとの会談見送り、ウクライナ戦争で対立深化
高市早苗内閣を解析》女性の低い割合の論争を気にせず、人事論理を「信頼の輪、保守的価値観」で守る 木原稔、小泉進次郎、片山さつきに注目が集まる
ルーヴル美術館でウジェニーのティアラが盗まれ損傷!1354個のダイヤモンドが散乱、ナポレオン3世の愛の秘密が隠された王冠の行方
北京観察》中国共産党4中全会開幕 「第15次5カ年計画」と人事刷新 習近平氏の次の一歩は?
中国、GDP成長率が1年ぶり低水準 内需冷え込み、輸出依存の厳しい状況 専門家が警鐘
トランプ政権の「秘密外交」が破綻 米中貿易交渉、感情的対立で出口見えず
7年遅れの改革、アフターピルの長い解禁の道! 日本政府が購入制限を撤廃、親の同意不要、年齢制限も撤廃
日本初の女性首相・高市早苗氏を支える「ファーストジェントルマン」山本拓氏 電撃婚・離婚・再婚を経た「政界ラブストーリー」
ガラスの天井を打ち破った高市早苗氏、日本初の女性首相に 「鉄の女」が直面する経済と外交の試練
天気予報》「雨はいつ止む?」台北・新北で記録的降雨 今週末も北東モンスーンで雨続く見込み 気象局が「この日から晴れ」と発表
台湾民意基金会世論調査》韓国瑜の発言が賴清德を上回る支持率 「中華民国なくして台湾なし」51%が賛同
高市早苗新首相の最大の課題は「戦時統治」の試練 80年の平和を経た日本は備えがあるのか?
台湾民意基金会世論調査》賴清德総統の支持率35%、不支持53% 黄揚明氏「中間層が離反、2028年大統領選は勝算なし」
論評:半導体の山は動くのか 台湾の「護国神山」TSMCが米国移転危機 関税交渉の裏で揺れる産業界
日本初の女性首相×女性財務相誕生 市場は「高市相場」に沸騰、専門家の評価は分かれる
政治ドラマの幕開け 高市早苗新首相、人事の狙いは「封じ込め」か「橋渡し」か?
ヴァンス氏、死神の旅路を免れる? 米海兵隊の砲弾が高速道路上空で爆発、破片が副大統領の護衛車両を直撃
「高輪地区まつり with TAKANAWA GATEWAY 」が10月26日に過去最大規模で開催へ 70ブース・盆踊り・未来体験が一日展開
「牛たんの檸檬」海外初進出!台北に海外1号店オープン 日本の「厚切り牛たん文化」が台湾上陸
「ガラスの天井」を破った高市早苗氏 女権の旗手か、自民党の傀儡か 上野千鶴子が「期待しない」と語る理由
独占》米国、国民党関係者と「鄭麗文現象」をめぐり意見交換を開始 彼女は「国民党の蔡英文」か、それとも「台湾版トランプ」か
「台湾光復節」とは何か 「祖国への復帰」か「占領の始まり」か、揺れる主権の記憶
なぜ「台湾地位未定論」で「台湾光復」ではないのか 台大・張登及教授が語る、戦後東アジア秩序に残った「欠口」
李忠謙コラム:トランプがノーベル平和賞を逃して幸い ガザ停戦は幻想、ゼレンスキー再び屈辱
歴史的瞬間 日本初の女性首相・高市早苗氏が第104代首相に就任 自民・維新連立で新政権発足
一本の電話で政局が動いた 高市早苗×吉村洋文 「自維連立」誕生の舞台裏
舞台裏》高市早苗氏が初の女性首相就任、維新と連立で始動 林佳龍氏と極秘会談も、対台湾は「安倍路線」継承か?
「自公連立」ついに終焉 自民×維新が「閣外協力」で新時代へ 高市政権誕生の舞台裏
天気予報》「いつ晴れるの?」台湾で豪雨続く 台風24号(フンシェン)の外縁循環が北東季節風と合流、北台湾で豪雨続く 光復節まで不安定
「高市取引」で株価史上最高4万9千円突破 なぜ庶民の生活は豊かにならないのか?
なぜ鄭麗文氏は郝龍斌氏を破ったのか? 游盈隆氏が「世論調査」で読み解く国民党の「歴史的転換点」