日本初の女性首相となった自民党総裁・高市早苗氏が21日、国会での首相指名選挙を経て正式に就任した。就任発表を受け、東京株式市場ではいわゆる「高市相場(Takaichi trade)」が展開し、日経平均株価は一時的に過去最高値を更新した。
片山さつき氏が日本初の女性財務相に
財政面では「ハト派」とされる高市氏は、政界上層部における男女格差の是正を掲げ、片山さつき氏を財務大臣に起用。日本史上初の「女性首相×女性財務相」体制が実現した。だが、専門家や金融市場の反応は一様ではない。
学界の見方「女性2人では北欧型とは言えない」
立命館大学の大塚陽子教授(福祉政策・ジェンダー研究)は、「閣僚に女性が2人というのは、正直、驚くほど少ない」と指摘。「高市氏は『北欧型の女性主導内閣』を掲げてきたが、実態は象徴的な意味に留まる可能性が高い」と語る。
また、「女性首相の誕生で日本のジェンダーギャップ指数は多少改善するかもしれないが、実質的な構造変化は見られない」と分析した。

金融界の見方「高市相場は試される」
UBS証券日本の安達誠道エコノミストは、高市政権の課題として「物価高対策、補正予算、外交優先事項、そして維新の会との協定に基づく議員定数削減」を挙げた。
安達氏は「市場は財政政策の規模と赤字拡大への影響を注視している。財政出動が過大であれば日本資産の売り圧力が強まり、逆に慎重すぎれば『高市相場』が反転しかねない」と警鐘を鳴らす。
さらに、来週予定されるトランプ米大統領との会談では「防衛費増額や円安への懸念が焦点となる」と述べ、「高市氏が米国との関係を維持しつつ、国内の支持をどう確保するかが試金石になる」との見方を示した。

「高市経済学」は「アベノミクス2.0」か
シティグループ東京の高島修チーフFXストラテジストは、「高市氏は安倍晋三元首相の後継を自任しており、経済政策は『アベノミクス』の延長線上にある」と指摘。市場では「サナエノミクス」=「アベノミクス 2.0」との期待も広がるが、高島氏は「10年前と今では経済環境が全く異なる」と強調。「当時はデフレと円高、現在はインフレと円安。高市氏が日銀に圧力をかければ、さらなる円安と物価上昇で支持を失うリスクがある」と述べた。
「高市相場は続く」も慎重論あり
福岡フィナンシャルグループの佐々木徹チーフストラテジストは、「高市相場はまだ続く。日経平均は上昇基調、円は引き続き下落方向だ」との強気姿勢を示す。
一方で、「片山財務相は本来、積極財政には慎重だが、高市内閣の一員として自らの意見を強く押し出すことはないだろう」と述べ、「為替介入の効果にも懐疑的だ」と指摘した。
維新との連立が政策に与える影響
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「日本維新の会は『小さく効率的な政府』を掲げる政党であり、積極財政と金融緩和を重視する高市氏の政策とは一線を画す」と解説。
「維新との協力は、高市政権の政策バランスを中庸に保つ働きをするだろう。前政権よりやや積極的な財政運営になる可能性はあるが、過度にはならない。維新は日銀の独立性を尊重しており、金融政策への政治介入のリスクは低い」と述べた。
市場の冷静な見通し「リフレ色は薄い」
野村證券の松沢中チーフマクロストラテジストも、「最近の発言を見る限り、高市氏のリフレ政策志向は当初の市場予想ほど強くない」と分析。「片山財務相の起用がそれを裏付けている」と指摘した。「投資家が高市氏の姿勢をより慎重と受け止めれば、株式市場は一時的に勢いを失い、円が反発する可能性もある」との見方を示した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 政治ドラマの幕開け 高市早苗新首相、人事の狙いは「封じ込め」か「橋渡し」か? | 関連記事をもっと読む )
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