「アルセーヌ・ルパンの再来か」ルーヴル美術館で“7分間の完全犯罪” ナポレオン皇后の宝飾が奪われる マクロン大統領「歴史への攻撃」と非難

2025-10-20 17:19
2025年10月19日、強盗事件を受けて封鎖されたルーヴル美術館の入口。フランス警察が現場検証と証拠収集を進めた。(AP通信)
2025年10月19日、強盗事件を受けて封鎖されたルーヴル美術館の入口。フランス警察が現場検証と証拠収集を進めた。(AP通信)
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フランスの怪盗小説『アルセーヌ・ルパン』や映画『オーシャンズ11』を思わせる事件が、19日午前9時30分(パリ時間)、ルーヴル美術館で発生した。世界屈指の名館は開館から約30分後、プロの窃盗団に短時間で侵入され、フランス王室の宝飾品を所蔵する「ガレリー・アポロン」が標的となった。犯行グループは、来館者の目の前でナポレオン時代の“無価(むか)”の国宝を奪い、そのまま逃走。フランス全土に衝撃と怒りが広がった。

仏紙『ル・モンド』は、1911年の「モナ・リザ」盗難以来、同館で最も深刻かつ大胆な犯行だと指摘。相次ぐ美術館盗難を受け、同国の文化財保護体制の脆弱さが露呈したと報じた。エマニュエル・マクロン氏は「わたしたちの歴史への攻撃」と非難し、世界規模での国宝奪還作戦に乗り出した。

7分で完遂 「引っ越し用リフト」が突破口

犯行は、精密さ・迅速さ・大胆さのいずれもが際立ち、仏警察や内務当局を驚かせた。グループは市内でおなじみの高層階向け家具搬送用トラック式電動リフトを、美術館南側のセーヌ河岸(フランソワ・ミッテラン河岸)に横付け。館内の来館者が増え始める時間帯、覆面の2人がリフトで2階の「ガレリー・アポロン」窓へ堂々と接近した。目撃証言では、窓を破って侵入するまで「30秒もかからなかった」という。

2025年10月19日、フランス警察がパリのルーブル美術館強盗事件で盗賊たちが使用したリフトを調査中。(AP通信)
2025年10月19日、強盗事件を受けて封鎖されたルーヴル美術館の入口。フランス警察が現場検証と証拠収集を進めた。(AP通信)
2025年10月19日、フランス警察がパリのルーブル美術館強盗事件で盗賊たちが使用したリフトを調査中。(AP通信)
2025年10月19日、強盗事件を受けて封鎖されたルーヴル美術館の入口。フランス警察が現場検証と証拠収集を進めた。(AP通信)

窃盗犯は携帯式グラインダーなどの電動工具で、けたたましい警報を無視して防弾ガラス製の厳重な展示ケース2基を切断し、宝飾品を一掃。窓の破壊から退去まで所要はわずか7分だった。下りて地上に戻ると、重機を操る仲間2人と合流し、パリの交通の流れに紛れて姿を消した。ローラン・ヌネズ内相(元パリ警視庁長官)は仏国際放送で「重大な強盗事件だ。動きは極めて迅速……彼らはプロだ」と述べた。

犯行グループは逃走前にリフトの籠を焼却し、証拠隠滅も図った。現場はパリ警視庁本部から直線で約800メートルという至近距離だった。

失われた帝国の栄光:ナポレオンの愛、ウジェニーのティアラ

今回、窃盗団が狙ったのはフランス帝政の象徴だった。フランス文化省とルーヴル美術館の発表によれば、歴史的価値の極めて高い宝飾品セットが二組、計八点奪われた。

マリー=ルイーズ皇后のエメラルド&ダイヤモンド・セット:
フランス第一帝政の皇帝ナポレオン・ボナパルトが、第二夫人マリー=ルイーズ皇后に贈ったネックレスとイヤリング。時代の転換点を物語る“愛の証”とされる。

マリー=アメリー王妃とオルタンス王妃のサファイア・セット:
ネックレス1点、ティアラ1点、イヤリング1対。7月王政のルイ・フィリップ1世の王妃マリー=アメリーに帰属する品々。

ウジェニー皇后のコレクション:
200点を超える真珠と約2000個のダイヤを散りばめた豪奢なティアラ、さらにダイヤモンド・ブローチ。

混乱の最中、とりわけ劇的だったのは、犯行グループが逃走時にウジェニー皇后の王冠(Crown of Empress Eugénie)を現場近くに遺棄した点だ。

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