ゼレンスキー氏はなぜ35歳の「ドローン戦争の立役者」を解任したのか 軍改革と権力闘争の舞台裏

2023年4月、当時ウクライナのデジタル変革担当相を務めていたミハイロ・フェドロフ氏はAP通信のインタビューに応じ、無人機(ドローン)、電子戦、衛星通信などのテクノロジーがロシアを打ち破る鍵になると指摘した。(写真/AP通信提供)
2023年4月、当時ウクライナのデジタル変革担当相を務めていたミハイロ・フェドロフ氏はAP通信のインタビューに応じ、無人機(ドローン)、電子戦、衛星通信などのテクノロジーがロシアを打ち破る鍵になると指摘した。(写真/AP通信提供)

ロシアによるウクライナ侵攻が大規模な消耗戦へと移り、長大な前線が「人命をすりつぶす戦場」と化すなか、ドローンを駆使した新たな戦術は、戦争のあり方を大きく変えてきた。

米国のドナルド・トランプ大統領はかつてホワイトハウスで、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を公然と非難し、「感謝が足りない」「交渉に使えるカードを持っていない」と迫った。だが、ウクライナが生み出したドローン戦術は、侵略を受ける側にも戦局を動かす余地があることを示し、西側諸国に新たな可能性を印象づけた。

その戦略を主導した人物の一人が、ミハイロ・フェドロフ前国防相である。デジタル技術と行政改革を駆使してきた経歴から、台湾メディアでは、オードリー・タン(唐鳳)元デジタル発展相になぞらえ、「ウクライナのオードリー・タン」と呼ばれることもあった。

ところが、ドローン戦略が戦局を左右する重要性を増すなか、ゼレンスキー氏はフェドロフ氏を国防相から解任した。この決定は西側諸国の関心を集め、ウクライナ国内では抗議活動も起きた。キーウの政権中枢では、軍事戦略、調達改革、政治的影響力を巡る対立が改めて表面化している。

ゼレンスキー氏はなぜ、ドローン戦略の立役者を政権から外したのか。フェドロフ氏は何を巡って軍や政権中枢と衝突したのか。そして、再び国防分野の要職に戻る可能性はあるのだろうか。

35歳の国防相が進めた「ドローン大戦略」

当時35歳だったフェドロフ氏は、ゼレンスキー政権でデジタル転換相や副首相を歴任した若手改革派だ。

ロシアによる侵攻開始後には、実業家のイーロン・マスク氏に対し、「あなたが火星への移住を準備している間に、ロシアはウクライナを占領しようとしている」とSNSで訴えた。その後、マスク氏率いるスペースXは、ウクライナ向けに衛星通信サービス「スターリンク」の提供を開始した。

フェドロフ氏はまた、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)に働きかけ、ロシアでの製品販売やロシア国営メディア関連アプリの配信停止を求めた。さらに、ハッカーらによる「ウクライナIT軍」の組織化を進め、ロシア政府のウェブサイトなどを標的とするサイバー作戦を展開した。

SNS、巨大テクノロジー企業、デジタル行政を組み合わせた一連の手法は、「テクノロジーによって侵略者に対抗する」というウクライナの姿勢を象徴するものとなった。こうした手腕から、台湾メディアではフェドロフ氏を「ウクライナのオードリー・タン」と呼ぶ声が上がった。

東部前線で戦闘が長期化すると、砲弾をはじめとする従来型弾薬の不足が、ウクライナ軍にとって深刻な問題となった。 (関連記事: 【単独インタビュー】ロシア後方を狙うウクライナのドローン戦略 エネルギーと兵站を攻撃し交渉圧力に 関連記事をもっと読む

2026年1月、フェドロフ氏は国防相に就任し、技術革新とドローン戦略を一段と推進した。報道によれば、ウクライナのドローン年間生産能力は1000万機規模に拡大し、前線における精密攻撃の約85%をドローンが担うようになったという。目標を無力化するための平均コストは、約850ドルに抑えられたとされる。

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