山梨県知事、富士山「持続可能な管理」へ決意 弾丸登山96%減の成果と「富士トラム」構想を発表
山梨県の長崎知事は弾丸登山96%減の成果と伝統登山道復活による人流分散を報告し、環境保全と来訪者制限の切り札としてグリーン水素駆動の次世代交通「富士トラム」構想や富士山麓県有地の高品格な民間活用方針を発表した。(写真/FPCJ提供)
山梨県の長崎幸太郎知事は世界文化遺産「富士山」の持続可能な管理に関する記者会見を実施し、過度な混雑や環境負荷を克服するための具体的方策と今後の展望を語った。
長崎知事は2024年から導入した日本初の登山規制が強力に機能し、夜通し歩き続ける危険な弾丸登山を96.2%減少させるという劇的な成果を達成したと報告した。さらに過剰な来訪者数を抑制する根本解決策として、次世代交通システムである富士トラム構想や、山麓の県有地を民間に開放する新たな地域振興策を発表した。
登山規制で「弾丸登山」96.2%減少
長崎知事は冒頭、2013年に富士山がユネスコの世界文化遺産に登録された際、人が多すぎる、人工的な景観が目立つ、環境への負荷が大きいという3つの条件が宿題として課されたと言及した。これらを誠実に解決できなければ最悪の場合は登録抹消の恐れもある国際公約だとして強い危機感をあらわにした。
第一の宿題である人が多すぎる問題について、県は2024年に5合目へゲートを設置し、通行時間や人数の制限、安全対策費として通行料の徴収を開始した。
2025年にはゲート閉鎖を2時間前倒しし、通行料を2000円から4000円に引き上げるなど規制を強化した結果、夜間登山者は規制前の2023年の1万4469人から2025年には542人へと激減した。2025年には1144人の登山者に対して装備不足の指導を行い、増加傾向にあった全体の登山者数も約12万1000人に抑制した。
また、登山者9574人を対象としたアンケートでは95%が規制を支持しており、安全な登山環境を守る取り組みが評価されていると述べた。さらに、来訪者を分散させて体験の質を高めるため、県は2年かけて失われた歴史的ルートを調査しており、2026年には信仰の道や吉田口、精進口など4つの伝統的な山麓登山道を復活させると明かした。
閉山期の無謀登山に警鐘 富士トラム構想も提示
一方で、長崎知事は閉山期の無謀な登山に対して強い懸念を示した。厳冬期の富士山は強風や凍結により極めて過酷な環境であり、過去3年間で少なくとも12件の遭難救助事案が発生しているとして、自らの命を軽んじ、命がけで救助に向かう人々の命までも危険にさらす行為であり、強い憤りを覚えると断言した。
メディアを通じて読者にその危険性を強く発信してほしいと訴えるとともに、県として救助費用のあり方についても検討を進めていると明らかにした。
富士トラムは水素エネルギーを動力とし、道路の磁気マーカーや白線に沿ってゴムタイヤで走る軌道系交通システムであり、レール敷設やトンネル掘削などの大規模工事が不要なため環境負荷やコストを劇的に低減できる。
法律上は軌道とみなされるため一般車両の進入を規制でき、現在の自家用車やバスによる年間最大500万人の5合目への来訪者数を、定員管理が可能な年間約230万人にコントロールして置き換えることが目的だと強調した。
リニア新駅との接続や県有地の民間開放も
さらに、東京からわずか25分で結ばれるリニア中央新幹線の新駅と富士山麓を結ぶハブ化を構想しており、山梨県全体における交通網の抜本的改革を目指す方針だ。
また、保全とは何も建てないことではなく、質の低いものを排除し質の高いものを招くことだと語り、富士山麓の県丸尾地区に広がる県有地約48.8ヘクタールを民間事業者に初めて開放すると発表した。
施設建設そのものが目的ではなく、訪れた人がゆったりと過ごせる上質な空間を創出し、滞在の拠点として地域全体に価値を波及させる考えだ。土地の活用にあたっては地域の将来像と豊かな自然環境との調和を絶対の前提とし、景観への配慮や環境影響評価を実施しながら進める。2026年7月からサウンディング型市場調査を開始し、同年12月から国内外を問わず意欲ある事業者を公募する予定である。
外国人登山者は過半数 世界遺産維持に自信
会見後半の質疑応答では、外国人登山者への対応や世界遺産の地位維持が焦点となった。知事は今年の予約状況に基づく登山者比率について、日本人が48%、外国人が52%でほぼ半々だと明かした。
昨年の調査結果による外国人登山者の国・地域別割合では、1位が台湾で29%、次いで中国が19%、アメリカが10%、フランスが3%と続き、シンガポール、マレーシア、ドイツ、タイ、カナダ、韓国、オーストラリアなどがそれぞれ1%から2%前後を占めていると説明した。
また、世界遺産登録の見直しや混雑による問題を懸念する質問に対しては、歴史的に関係者と協力してトイレやゴミ問題、大気汚染などを改善してきた実績を挙げ、環境問題は改善も管理も可能だと力説した。富士トラムによる人数制限がさらなる切り札になり、世界文化遺産としてのステータスの保全と富士山の環境管理は十分両立できると自信を表明した。
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