米大統領トランプ氏の専用機「エアフォース・ワン」が26日午前、クアラルンプールに着陸した瞬間、世界の地政学と経済の命運を左右するアジアの「権力ゲーム」の幕が切って落とされた。これはトランプ氏にとって2期目に入ってから初の東アジア訪問であり、マレーシア、日本、韓国を縦断し、最終的に韓国の古都・慶州で習近平国家主席と「最終局面」を迎える。
トランプ氏は自らを「万能のディールメーカー」や「和平交渉人」として演出しているが、アジア各国は今、この予測不可能な米大統領が何を仕掛けるのかを、期待と恐れ、不安が入り混じった複雑な心情で注視している。
ニューヨーク・タイムズは、ドナルド・トランプ氏の今回のアジア歴訪について「外交訪問というよりも、むしろ一種の巡回型“ストレステスト”だ」と指摘した。東南アジアの熱帯から東北アジアの経済中枢に至るまで、各国政府はこの「関税の棒」を振るう人物の前で、どれほどの代償を払えば一時的な安定と貿易上の安寧を得られるのか、慎重に計算している。そして、この一連の布石はすべて、最終局面となる「トランプ・習近平首脳会談」に向けられている。世界で最も重要とされる交渉のテーブルで、各国の国益はすべて、取引材料となり得る。
前米国務省東アジア・太平洋担当次官補で、現在The Asia Groupのパートナーを務めるダニエル・クリテンブリンク氏は同紙の取材に対し、「私は本物の懸念と不安を聞いている。人々は米国の長期的な地域政策の行方を案じ、中国の対応をさらに憂慮している」と語った。そして、「もし同盟国が米国への信頼を失えば、彼らは自国の国益を計算し、米国を巻き込まない形で中国に対抗するバランス戦略を取り始めるだろう」と警告を発した。
クリテンブリンク氏の見立ては、今回のトランプ氏のアジア歴訪に暗い陰影を落としている。米中両大国の間で各国が綱渡りを強いられる中、これはまさに、全てのプレイヤーが腹の内を隠しながら挑む危うい博打といえる。
東南アジアの慎重な視線: 「平和の使者」と関税の傷
ドナルド・トランプ氏のアジア歴訪は、マレーシアの首都クアラルンプールを皮切りに始まる。トランプ氏はここで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席し、少なくとも10人の地域首脳と会談する予定である。ホワイトハウスが公表した日程によれば、トランプ氏はマレーシアとの貿易協定への署名を目指すほか、「和平の仲介者」を演じる形で、タイとカンボジアによる和平協定調印の立会人になる見通しだ。これは、トランプ氏がすでに自らの外交的成果として誇示してきた案件でもある。
ストレーツ・タイムズは、今回のASEAN首脳会議がトランプ氏にとって「ショーケース」であると同時に、アンワル・イブラヒム首相にとっても極めてリスクの高い政治的賭けになると指摘した。アンワル氏は就任以来、従来のマレーシア外交の抑制的な姿勢を転換し、地政学への強い関心を示してきた。とりわけ、パレスチナ問題やガザ戦争ではイスラム世界を代表する存在として国際舞台に立つことを目指しており、その政治的立ち位置が注目されている。

























































