中国のミサイル戦力が「量」で圧倒 陸自「三つ星」退役の小川清史氏「日本は『打たれるだけ』では生き残れない」日本と台湾は同じ戦場に

令和3年版『防衛白書』で示された、中国ミサイルの射程図。(画像/防衛省公式サイトより)
令和3年版『防衛白書』で示された、中国ミサイルの射程図。(画像/防衛省公式サイトより)

高市早苗首相による「台湾有事」発言は、中国の強い反発を招いた。中国空母「遼寧」の艦載機が訓練中に日本の自衛隊機へレーダー照射を行ったほか、中露による共同演習も相次ぎ、中国の軍事的脅威が一段と際立つ形となっている。

陸上自衛隊の退役陸将である小川清史氏は、中国が保有するミサイルの数量と配備密度は「圧倒的な優位」にあり、日本は長年にわたり「一方的に攻撃を受けるだけで、十分な反撃ができない」という危険な立場に置かれてきたと指摘する。

小川清史氏は、日本と台湾はいずれも戦略転換を急ぐ必要があると述べ、日台双方の安全保障はもはや隣国同士の地域問題ではなく、「同じ戦線に立たされた生存の問題」だとの認識を示している。

小川氏は現在、日本安全保障戦略研究所(SSRI)の上席研究員を務めている。12月9日には、台湾淡江大学日本政経研究修士課程の蔡錫勲氏の招きにより、「台湾と日本:敵基地攻撃能力と反撃能力の評価」と題した英語によるオンライン講演を行った。

講演では、自作のスライドと『防衛白書』のデータを用い、中国による台湾侵攻の想定パターン、台湾の縦深防衛、日本の反撃能力整備の現状、さらに日米台と中国の軍事力の差について説明した。

12月9日、日本安全保障戦略研究所(SSRI)上席研究員小川清史以《台湾と日本:敵基地攻撃能力と反撃能力の評価》之題发表英文视讯演说。。(王秋燕摄)
12月9日、日本安全保障戦略研究所(SSRI)上席研究員の小川清史氏が「日本と台湾、敵基地攻撃能力と反撃能力の評価」をテーマに英語でオンライン講演。(写真/王秋燕撮影)

中国の台湾攻撃パターン 「演習」から「制圧型の開戦」へ

小川氏はまず、中国当局の対台湾軍事行動は、すでに三段階のモデルを形成していると指摘した。第一段階では演習を名目に海空戦力を前進させ、第二段階でミサイル攻撃とサイバー攻撃によって台湾の指揮系統や防空拠点を麻痺させ、第三段階で海空の優位を背景に上陸作戦を実行するという流れである。

第一段階では、大規模演習を通じて艦隊や戦闘機を前進させると同時に、認知戦によって台湾内部の混乱を誘発し、海軍艦艇で外部からの支援部隊の接近を阻止する。第二段階で実戦に移行すると、弾道ミサイルや巡航ミサイル、戦略支援部隊によるサイバー攻撃が短時間に集中して行われる。目的は台湾軍の全面的な破壊ではなく、反撃能力と統合作戦能力を迅速に低下させる点にある。

第三段階の狙いは、短期間で「戦局は決した」とする既成事実を作り出すことだ。小川氏は、このモデルは単なる想定ではないと強調する。2022年の米国下院議長ナンシー・ペロシ氏の訪台後に実施された封鎖型軍事演習や、2024年の賴清德氏就任後に行われた「聯合利剣」演習は、いずれも同じ手法を現実の海空域で繰り返し演練してきた例だと指摘した。

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日本・陸上自衛隊「三つ星」退役将官 小川清史氏 プロフィール

台湾の新戦略 上陸を防ぐかではなく「72時間を耐えられるか」

中国の「制圧型」作戦に直面する中で、台湾の防衛戦略はここ数年、大きな転換点を迎えていると小川氏は指摘する。

2023年の国防報告書に盛り込まれた「防衛固守・重層抑止」に加え、新たに明示された「縦深防衛」という概念は、台湾がこれまでの「海岸で決戦する」という発想から、より現実的な「時間を稼ぐ戦略」へと軸足を移したことを象徴している。

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