TSMC熊本第2工場で「工事停止」　重機撤去の背景にAI需要シフトか

熊本県菊陽町で建設が進む台湾積体電路製造（TSMC）の熊本第2工場は、今年10月に契約締結と着工を完了し、2027年12月の量産開始を予定していた。工場はAIなど高度アプリケーション向けの6ナノメートル製造に特化する計画だった。しかし、『日経アジア（Nikkei Asia）』の報道によれば、同工場の建設工事が最近になって突如停止し、大型建設機材がほぼ撤去されたという。複数のサプライヤーも工事停止の通知を受け取ったことを確認している。

『日経アジア』が最新の現場映像と比較したところ、第2工場は11月時点で重機が多数並び工事が活発に進んでいたものの、12月初めには明らかに作業が停止し、多くの機材が撤収されていた。サプライチェーン関係者も「工事は確かに止まっている」と認めたうえで、これは設計変更に対応するための措置であり、資金面の問題ではないと強調している。

報道によれば、AI半導体市場が急速に過熱する中、6ナノ・7ナノの製造プロセスでは需要の変化に必ずしも対応しきれなくなっているという。NVIDIAのBlackwellシリーズやAppleのAシリーズなど、主要製品がより先端プロセスへ移行している点が背景にある。

第2工場の調整に加え、TSMCは熊本第1工場の設備増設も当面見合わせている。同工場では40ナノ、28ナノ、さらに先進的な16ナノおよび12ナノの半導体が生産され、産業用、車載用、消費者向け電子機器に供給されている。『日経』は以前、第1工場では少なくとも2026年までは設備増強を行わないと報じていたが、今回さらにTSMCが複数のサプライヤーに対し、「2026年は通年で新規設備が不要」と通知したと伝えている。成熟プロセスの需要減速と、AI分野で先端プロセスへの需要が一段とシフトしている新たな潮流が浮かび上がる形となった。

熊本第2工場の工事停止について、TSMCは肯定も否定もせず、「日本でのプロジェクトは継続して進行する。市場の噂や憶測についてはコメントしない」と述べるにとどめた。

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編集：梅木奈実