「中国崩壊論」はウォール街投資家によって覆される？ アメリカの資金がETFの秘められた経路を通じ、中国AI産業に流入中

米国連邦下院議長のマイク・ジョンソン氏が「共産中国の侵略行為を支える投資を断ち切るべきだ」と声を上げる中、ウォール街の資本はその警告を無視し、「資本は祖国を持たない」という状況が浮き彫りになった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると、アメリカの資金は中国の人工知能（AI）産業に大規模に投じられており、「政治家が危険を叫ぶ中、企業が投資を急ぐ」という奇妙なパラレルワールドが展開されている。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、アメリカの投資家はAI分野に関わる中国の大手テクノロジー企業に多額の資金を注いでおり、国会の警告する国家安全保障上のリスクを無視している。元々、中米間の地政学的問題で中国の未公開企業への投資が敬遠されていたが、DeepSeekが中国国内のAIモデルの驚異的な競争力を示し、追い越しの可能性があることがわかると、アメリカの投資家はAIモデルを開発する中国テクノロジー企業の株価を密かに押し上げ、特に中国のテクノロジーセクターを追跡するETF（上場投資信託）への資金投入を続けている。

野村証券の中国インターネット株リサーチ責任者である史家龍（シー・ジアロン）氏は、「中国市場は非常に大きく、今後は米国の投資家資金がさらに流入していくのを目にするだろう」と率直に語った。
​また『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、AI分野に関わる中国企業の上場株式について、米国の投資家が購入することに現時点で特段の制限はないと強調している。​

この「資本の祭典」を裏付けるデータも目を引く。香港とニューヨークの両市場に上場するアリババ（Alibaba）は、今年に入って株価が80％以上急騰し、約4年ぶりの高値を更新した。規制強化の逆風で一時は低迷していた同社だが、現在は今後3年間で530億ドルを投じ、AIインフラの整備に本格参入し、「汎用人工知能（AGI）」の実現を目指す方針を打ち出している。

同様の好調さはテンセントやバイドゥにも見られ、大規模言語モデル（LLM）の中核技術を握るこれらの企業も、株価上昇率はおおむね50％近くに達している。

ロンドンの投資会社Rufferは、投資ポートフォリオの規模が250億ドルで、その中には多くのアメリカ人投資家の資金が含まれている。Rufferの投資専門家であるジェンマ・ケアンズ＝スミス氏は、「中国はAI競争トラック内での重要プレイヤーだが、評価はアメリカの同業者と比べて大幅に『割引』されたものである。投資家がこれを無視すれば、良い機会を逃すリスクがある」と指摘する。 （関連記事： 日中関係が緊張する中、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が中国で1か月上映・1613万人動員　興収149.3億円のヒットに ｜ 関連記事をもっと読む ）

中国AIの発展に対して多くの個人投資家が涎を垂らす中、億万長者でヘッジファンドの大物であるデイビッド・テッパー氏も公に中国に強気になっている。先月の証券報告によれば、アリババは彼の会社Appaloosaの最大の上場持ち株となっており、70億ドルの公開株投資ポートフォリオの16％を占めている。これは「中国崩壊論」に対する最も直接的な反論、あるいは最も誠実な底値買いと言えるだろう。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、AI分野でアメリカが依然として優位を占めていることを指摘している。最も強力なAIモデルは米国企業の手にあり、中国は先進的なチップ製造では敵わないが、中国企業はAIを広範に応用し始めている。

ETFの熱狂：政治雷区を回避する近道

興味深いことに、未公開企業に対する直接投資の禁令を回避するため、アメリカ資本はより安全で目立たない通路を見つけた。それがETF（指数連動型投資信託）である。

世界最大の資産運用会社であるブラックロック（BlackRock）は、今年、中国テクノロジーセクターETFを追跡する資本の増加速度が米国内を上回ったことを指摘している。今年7月以降、ニューヨークを拠点とするKraneShares CSI中国インターネットETFの規模は14億ドル増加し、規模は90億ドルに迫っている。アメリカ上場のインベスコ（Invesco）中国テクノロジーETFの規模も倍増し、約30億ドルに達している。

シリコンバレーと上海の絡み合い：分裂と回流

過去数年間、厳格なパンデミック対策、テクノロジー規制の取り締まり、不動産バブルにより、世界中の資本は「中国からの逃避」という大きな問題に直面した。セコイア・キャピタル（Sequoia Capital）は中国事業を分割し、名前を変更せざるを得なかったが、これが米中技術の分離の歴史的注釈となっている。しかし、モルガン・スタンレー（Morgan Stanley）香港拠点のストラテジストである王瀅氏は、米国投資家の中国に対する関心が過去4年で最高点に達していることを指摘している。調査対象の投資家の90％が、中国のAI、ロボット、バイオテクノロジー分野へのさらなるエクスポージャーを増やしたいと答えている。

直接投資としての中国の新興企業へのベンチャーキャピタル（VC）融資額は依然として低調で、PitchBookのデータによれば、わずか8億3,000万ドルしかない。それは2022年の160億ドルを大きく下回っているが、一部のドル建てファンドがすでに試験段階に入っている。元セコイア・チャイナの投資家によって設立されたモノリス・マネジメント（Monolith Management）は最近、約3億ドルの資金調達を行った。老舗の啓明創投（Qiming Venture Partners）は新しいドル建てファンドを募集中である。

プリマベーラ・キャピタル（Primavera Capital）CEOのフレッド・フー氏は、「今は巨大な関心と好奇心があり、これは1年前には考えられなかったことだ」と感嘆している。

資本狂騒の頂点にあるダモクレスの剣

米国下院は先週、年次の「国家防衛権限法（NDAA）」を通過させたばかりだが、これはクリスマス前に正式に発効する予定である。この法案は、将来のトランプ政権により多くの権限を与え、高超音速兵器などの技術を禁投リストに追加することができ、投資家に「どのように中国AIの発展を支援しているか」という詳細を開示するよう求める。このことは、バイデン時代に始まった技術的抑制がトランプ2.0時代には緩和されず、むしろさらに強化される可能性があることを意味している。

10月にトランプ氏と習近平氏が貿易休戦の合意に達し、来年には両者が盛大な相互訪問を予定しているものの、「経済安全」を「国家安全」と見なすアメリカの鷹派は、競争相手に流れるドルを簡単には黙認しないだろう。上海のベンチャーキャピタル会社 Creekstone Ventures の創始パートナーである李一豪氏は、「中米以外のAI分野では、投資家は明らかに行く場所がない。しかし、未上場の投資に関しては、地政学が依然として部屋の中の象である」と述べた。

編集：佐野華美

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