東アジア最大規模のプライドパレードとされる第24回「台湾LGBT+プライド(台湾同志遊行)」が10月31日(土)、台北市で開かれる。今年は、例年とは異なる政治・社会情勢の中で開催を迎える。4週間前には台北市内のゲイバーに対する警察の捜索が国内外で批判を呼び、パレードへの参加を表明している蔣万安市長は、約1カ月後に迫った2026年統一地方選挙で再選を目指している。
台湾は2019年5月、アジアで初めて同性婚を法制化し、台北で開かれるプライドパレードは域内外から多くの人が集まるイベントとなった。主催者によると、2024年には18万人以上が参加し、雨が降り続いた2025年も15万人近くが集まった。
今年のテーマは「互いの声に耳を傾けること」 2003年に始まったパレードは、台湾彩虹公民行動協会が主催している。今年のテーマは、台湾語による「聲做伙聽,路做伙行(Our Voices, Our Journey)」で、おおむね「互いの声を聞き、共に道を歩む」という意味だ。
台湾の中央通信社によると、主催者は、互いの声に耳を傾けることが、アイデンティティーのラベルによって生まれる固定観念や誤解を乗り越える出発点になると説明している。
また、障害のある人やHIVとともに生きる人、先住民族、移住労働者、新住民など、社会的に弱い立場に置かれた人々とも連帯し、ともに歩むことを訴えている。
こうしたメッセージの背景には、性的少数者を巡る社会の変化への懸念もある。
同性婚の法制化から7年となる中、主催者は行政院の2026年ジェンダー平等に関する調査を引用し、「同性カップルにも法律上結婚する権利を認めるべきだ」とする意見への賛同が前年から6.3ポイント低下したと指摘した。
また、手術を要件とせず戸籍上の性別変更を認めることへの支持も、40.6%から26.8%に低下したとしている。
主催者はこうした変化を、世界的に広がる多様性、公平性、包摂性(DEI)を巡る反発とも関連づけている。
約15万人が参加した2025年の台湾LGBT+プライドで、雨の中を行進する教会関係者のグループ。(顔麟宇撮影)
ルートと時間、参加者が知っておきたいこと パレードは台北101にほど近い台北市政府前の広場を出発し、同じ場所に戻る。
台北の「レインボー・カルチャー・フェスティバル」を運営するTAIWANIZEが公開したガイドによると、スケジュールは次の通り。
広場でレインボーマーケットが開場(18時まで)12時: 各隊列の集合開始13時: パレード出発14時5分: ステージイベント終了18時40分: 例年通り、パレードは2つのルートに分かれる。北ルートは敦化南路や忠孝東路など繁華街を通り、南ルートは光復南路や信義路を進む。いずれも所要時間は2~3時間ほどだ。
特に混雑が予想される捷運(MRT)の市政府駅や台北101/世貿駅を避け、国父紀念館駅、永春駅、信義安和駅を利用するよう呼びかけている。
また、参加者の中には家族や勤務先にカミングアウトしていない人もいるため、近距離で写真を撮る際には本人の同意を得るよう求めている。主催者は直前の変更について、台湾LGBT+プライドの公式サイト で確認するよう呼びかけている。
台北各地で1週間にわたるプライドイベント パレードは、より幅広い「プライド・ウィーク」の中心イベントでもある。主催者は20のパートナー団体のイベントをまとめ、プライド月間のカレンダーを作成した。
台北国際レインボー・カルチャー・フェスティバル: 10月27日~11月1日、台北のゲイ・ナイトライフの中心地として知られる西門町の西門紅楼北側広場で開催。入場無料。台湾トランスジェンダー・プライド: 10月30日、二二八和平紀念公園で開催。18時30分からステージプログラム、19時30分から行進。有料パーティー: 成人限定のイベントも複数あり、10月30日~11月1日には新北市の展示会場「New Taipei Industrial Exhibition Center」で「X Formosa Rainbow Music Festival」が開かれる。プライドイベントは台北だけにとどまらない。台中では11月14日、高雄では12月5日にパレードが予定されている。
祝祭に影を落としたゲイバー捜索 今年のパレードを巡る議論に影響を与えているのが、会場からほど近い場所で起きたゲイバー捜索だ。
10月3日、台北市警察局萬華分局の警察官が、西門町で14年間営業してきた男性向けBDSMバー「Commander D」を捜索した。
警察は、裸体や風紀を乱す行為などに関する通報を受けて裁判所から捜索令状を取得し、現場にいた51人を警察署に連行して事情を聴いたほか、店の責任者を逮捕した。
ネット上で拡散した動画には、警察官が車いすを利用する客に対し、「障害者はここでどうやって性行為をするのか」といった趣旨の発言をする様子が映っていた。
英字紙タイペイ・タイムズによると、台北市警察局の林炎田局長は、捜索時の不適切な言動などを理由に、陳勇華・萬華分局長を含む警察官6人を処分した。
一方、警察側は捜索そのものについては裁判所の令状に基づく適法なものだったとの立場を示し、この店を巡って今年、風紀を乱す行為などについて複数の通報が寄せられていたと説明している。
蔣万安市長は10月5日、警察官による不適切な言動について謝罪し、警察の対応を検証する考えを示した。
10月5日、ゲイバー捜索を巡り、関係した警察官への処分を発表する台北市警察局の林炎田局長(中央)。(中央社) 台湾メディアによると、ロイター通信は、性的少数者への法的保護や比較的自由な社会環境で知られる台湾で、これほど大規模な警察の捜索が行われるのは珍しいと報じた。
劉世芳・内政部長(内相)はその後、パレードは通常の集会に関する規則に基づいて行われるとしたうえで、あらゆる性的指向が尊重されるべきだとの考えを示した。
2026年統一地方選でパレードが持つ意味 パレードは、11月28日に行われる市長・県知事・地方議員の統一地方選挙の約4週間前にあたる。
主催者は「レインボー市民」に対し、性的少数者やジェンダー平等に関する政策を支持する候補者に投票するよう呼びかけている。
野党・国民党の蔣市長は2025年のプライドにも参加しており、10月7日には今年も参加する意向を表明した。
台湾メディアETtodayによると、主催者は10月13日の声明で、パレードへの参加はゲイバー捜索を帳消しにする「免罪符ではない」と表明した。
そのうえで、捜索を巡る市の検証について、指揮系統や法的根拠、警察官の言動などを含む6つの質問を提示し、10月19日までに公の場で回答するよう求めた。
再選を目指す蔣万安市長が10月27日、台北市内湖区の夜市で選挙活動を行った。(陳品佑撮影) 蔣市長と、与党・民進党の台北市長候補、沈伯洋氏による初のテレビ討論会が、パレード出発の約2時間前となる10月31日正午から予定されている。
討論会はTVBSと三立テレビが共同で主催し、午後2時まで行われる予定で、その直後にパレードが出発する。
沈氏もゲイバー捜索を巡る問題を取り上げて市側の対応を批判し、「台北の多様性と包摂性は、プライドパレードの日だけ見えればよいものではない」と訴えている。
10月27日の台北市長選の候補者番号抽選後、自身の番号「3」を示す与党・民進党候補の沈伯洋氏。(中央社) 台北市長選を巡る世論調査では、調査機関によって結果にばらつきがみられる。
台北市信民両岸研究協会が10月20日に公表した調査では、沈氏の支持率が50.3%、蔣氏が33.3%だった。
一方、その後公表された調査では差が縮まり、聯合報が10月28日に公表した調査では沈氏45%、蔣氏41%で、差は調査の誤差範囲内だった。ETtodayが27日に公表した調査では、逆に蔣氏48.6%、沈氏41.1%となっている。
主催者は政治家に対し、一般の参加者として行進するよう求めている。また、候補者番号を記した旗やベスト、選挙用の配布物などをパレードで使用しないよう定めている。