台湾の林佳龍外交部長(外相)の就任から間もなく2年半を迎える。立法院(国会)の外交・国防委員会は28日午前、林氏を招いて業務報告を受け、午後には2027年度予算案について質疑を行う予定だ。これに向けて外交部は27日、21ページ、1万字近くに及ぶ書面報告を提出し、最近の外交成果を詳しく説明した。
米台の「共生パートナー」関係の推進、「台湾モデル」による欧州のデリスキング(リスク低減)と戦略的自律の支援、日台の「包括的パートナーシップ」の推進などを挙げ、今後は経済安全保障分野の協力を一段と強化し、民主主義陣営のサプライチェーン・パートナー連合を構築するとしている。
今年3月の業務報告と比べると、外交部は当時、米台関係を「着実に前進」と位置づけ、安全保障協力の深化、経済・貿易での共生パートナー関係の拡大、米議会の超党派による強い台湾支持、国際参加への米国の継続的な支持、多分野での協力・交流や地方レベルの交流の成果を挙げていた。
日台関係は「緊密で友好的」と表現し、日本政府が台湾海峡の平和と安定の重要性を繰り返し公に表明していること、日台の要人往来が頻繁で交流が極めて緊密であることを指摘。台湾・欧州関係は「新機軸が続く」とし、台湾高官の相次ぐ訪欧、欧州要人の訪台の記録更新、文化外交、ウクライナ支援協力などを挙げていた。
米台は「共生パートナー」 台湾外交部「米中首脳会談後も米国の対台姿勢に変化なし」 最新の書面報告によると、米台の「共生パートナー」(Symbiotic Partners)関係とは、米台関係を「ステークホルダー(利害関係者)」から「シェアホルダー(利益を共有するパートナー)」へと引き上げることを指す。
安全保障、経済・貿易、ハイテクの各分野にわたり、米台協力が双方の共通利益にかなうだけでなく、互いに支え合い、共に成長できるようにするという。
外交部は米台の意思疎通と協力を引き続き深め、「米国の中の台湾」にとどまらず「米国と共に歩む台湾」へ、かつての「台湾が米国に進出する」関係から、「台湾と米国が共に発展し、共に責任を負い、共に利益を生み出す」共生パートナー関係へ発展させるとしている。
外交部は、今年の米中首脳会談(トランプ大統領と習近平国家主席の会談)後も、米側が対台政策を堅持し、台湾に対する立場に変更はないと改めて表明したとして、米台間の強固な相互信頼を示すものだと強調した。
中国の軍事的拡張や台湾への圧力に対し、米台は協力を続け、地域の安全と台湾海峡の平和・安定を共に守るべきだとした。
外交部によると、第119議会ではすでに100件を超える台湾関連法案が提出され、頼清徳総統の就任以来、米議会から計22団、61人の上下両院議員が訪台し、超党派の強固な支持を示している。
林氏は今月、台湾の「駐フェニックス弁事処(台北経済文化弁事処)」の開所式に出席し、台湾企業への約束を果たすとともに、半導体を軸にサプライチェーンの対米進出を後押ししている。
外交部は、外交は国交や政治関係にとどまらず、産業、科学技術、投資、人材、地方政府、市民社会を結びつけ、台湾の国際的影響力を共に高めるものだとし、技術・人材・資金・市場の4要素を統合して米国や地域のパートナーとの協力を深め、第三国での米台協力の余地も広げるとしている。
台湾外交部は、今年の米中首脳会談後も、米側が対台政策を堅持し、台湾に対する立場に変更はないと改めて表明したとしている。(資料写真/AP通信)
「台湾モデル」で欧州のデリスキングと戦略的自律を支援 「台湾モデル」による欧州のデリスキングと戦略的自律の支援について、書面報告は、台湾・欧州関係は台湾外交の重要な柱であり、近年は高官レベルの交流がますます緊密になっていると指摘した。
外交部は台湾・欧州関係を積極的に深め、欧州が進める戦略的自律と再工業化のニーズに前向きに応え、共有する価値観と相互信頼を土台に、高官の相互訪問や「台湾モデル」などを通じて戦略対話と実質的な協力を進めているとした。
今年9月には蕭美琴副総統が招きを受けてイタリアを訪問し、林氏も就任以来、8回にわたり欧州を訪れている。
書面報告によると、2年余りにわたる取り組みを経て、「台湾モデル」は台湾・欧州間の経済・科学技術協力として着実に形になりつつある。
「中東欧半導体レジリエンス計画」や「栄邦計画」を通じ、台湾積体電路製造(TSMC)のドイツ投資、グローバルウェーハズのイタリア進出、鴻海精密工業(フォックスコン)のフランスでの先端パッケージング事業、ポーランドでの「TEEMAテクノロジーパーク」の設立、チェコでの「先端チップ設計研究センター(ACDRC)」の設立、スロバキアとの半導体協力、リトアニアとのレーザー分野での協力などを組み合わせ、台湾のハイテク産業のエコシステムを欧州の産業の中核に持ち込んでいるという。
外交部はさらに、欧州議会が今年「EU・中国の政治関係に関する勧告」報告書を採択し、台湾海峡の平和と安定を支持するとともに、武力や威圧による現状変更に強く反対したことを紹介した。
欧州対外行動庁(EEAS)も、国連総会第2758号決議は台湾に言及しておらず、台湾を国際体制から排除する根拠として曲解されるべきではないと繰り返し明らかにしているとした。
蕭美琴副総統(右から2人目)は9月、招きを受けてイタリアを訪問し、第2回「ヴェントテーネ欧州自由・民主主義フォーラム」で演説した。(資料写真/林佳龍氏のフェイスブックより)
日台「包括的パートナーシップ」を推進 高市内閣の閣僚等25人中17人に訪台歴 日台の「包括的パートナーシップ」(Comprehensive Partnership)の推進について、外交部は、台湾と日本は民主主義の価値を共有し、インド太平洋の安全保障を共に守り、「非レッド・サプライチェーン」(中国への過度な依存を避けた供給網)と経済安全保障のレジリエンスを共に構築する「利益を共有するパートナー」だと説明した。
日台の包括的パートナーシップを引き続き深め、双方が長年積み重ねてきた相互信頼と支え合いの深い絆を実質的な協力の成果に変え、互いに助け合い高め合う「善の循環」を生み出すとしている。
台湾と日本はともに第1列島線に位置し、価値観を共有するとともに、地域の平和にも共通の関心を持つと指摘。今年の日本の『外交青書』と『防衛白書』はいずれも台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて強調している。
台湾外交部はその上で、日台双方が安全保障協力を深め、台湾海峡の平和維持に取り組むべきだとの考えを示した。
外交部によると、現在の高市内閣では、閣僚等25人のうち17人に訪台経験がある。また、立法院の前会期から現在までに、日本の国会議員の訪台は計23団、延べ75人超に上る。
今年7月の熊本地震では、台湾政府が500万台湾元を寄付し、民間の義援金口座には3億台湾元が寄せられ、苦難の時に支え合う日台の深い友情を示したとした。
外交部は、日台はAI、半導体、航空宇宙、エネルギー、サイバーセキュリティー、社会のレジリエンス、経済安全保障などの分野で協力を深めることができるとし、TSMCの熊本への投資成果も生かして双方の産業の補完関係を強め、信頼できる強靱な「非レッド・サプライチェーン」を構築すると強調した。
高市早苗首相(写真)は、自民党総裁に選出される前にも台湾を訪問したことがある。(資料写真/AP通信)
中国の「ハイブリッド戦」を列挙 越境弾圧に「2P1R」戦略で対応 国際情勢と外交上の課題について、報告は、地政学的競争と経済・貿易摩擦が激しさを増し、世界の経済・貿易秩序とサプライチェーンの再編が加速するなど、国際情勢は不確実性に満ちていると指摘した。
権威主義の拡大が続き、国境を越えた政治的威嚇や弾圧も増える中、安全保障上のリスクは海運、エネルギー、科学技術、投資などの分野を通じて連鎖的に波及しており、経済安全保障が各国の外交政策の重要な核心となっているとした。
外交部はまた、中国が軍事的威嚇、外交的圧力、経済的威圧、法律戦、グレーゾーンでの威圧・攪乱行動、情報操作といったハイブリッド戦の手段を使い続け、台湾の国際的な活動空間を狭めていると列挙した。
今年7月に施行されたいわゆる「民族団結進歩促進法」については、国内法を通じて政治的圧力を国外にまで及ぼし、世界各国の人々に政治的な威嚇や思想統制を加えて萎縮効果を生み出し、中国の拡張的な行動に各国が沈黙するよう仕向けるとともに、台湾や他国の人々に対する越境弾圧をさらに広げようとしていると批判した。
越境弾圧への対応では、各在外公館に緊急対応計画の更新を求め、「予防・保護・対応」(2P1R)を戦略として、市民の識別能力の向上、被害者への緊急支援、国際協力の仕組みを強化するとともに、国際的なパートナーと防衛ネットワークを構築し、国民の安全と人権を守るとしている。
台湾外交部は、中国が国内法を通じて政治的圧力を国外にまで及ぼそうとしていると指摘している。写真はイメージで、本文の個別事例とは関係ありません。(資料写真/AP通信)
次の段階は6つの重点 日米欧・インド太平洋のパートナーとの関係を深化 次の段階の外交の重点について、書面報告は、「栄邦計画」を引き続き推進し、国交国やパートナー国との長期的な協力の仕組みを深め、新たに切り開くと説明した。
また、国交国の支援、価値観を共有する国々の支持、台湾の専門能力を組み合わせ、国連システムや世界保健機関(WHO)、その他の重要な国際機関や地域の多国間の枠組みへの参加を目指す。人材交流を深め、官民の参加を広げることで、台湾の国際協力の総合力を高めるとしている。
外交部は、世界的なサプライチェーンの再編と経済安全保障の課題に対し、信頼、レジリエンス、安全を核とした新たな経済協力モデルを推進し、日米欧やインド太平洋のパートナーとの協力関係を深めて、民主主義陣営のサプライチェーンと「非レッド・サプライチェーン」における台湾の重要な地位を強化するとした。
米台関係では協力の具体化を引き続き調整・促進し、米政府・議会・民間の台湾支持層とのネットワークを強化する。
台湾・欧州関係では官民の協力を進め、半導体、AI、情報通信などの分野で産業の結びつきを深める。
日台関係では、2025年の大阪・関西万博への参加経験を生かし、横浜市で開かれる2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)にも積極的に参加するとしている。
外交部は、複雑に変化する国際情勢の中で、「総合外交」の理念に基づいて国の資源を統合し、国際社会の台湾への支持を長期的で安定した具体的な協力の成果へと転換するとともに、台湾の専門性と能力で国際的なパートナーのニーズに応え、世界と共に繁栄、安全、レジリエンスを生み出していくとした。
また、立法院に対しても、外交部と外交チーム全体への支持を引き続き呼びかけ、国家主権を守り、国際空間を広げ、国民の権益を保障し、台湾のより安定した強靱な未来を切り開くとしている。