イスラエル総選挙、ネタニヤフ首相の進退焦点 連立協議難航で再選挙の可能性も 防衛大・江崎教授が分析
イスラエル総選挙、反ネタニヤフ新党リードも連立難航で再選挙の公算=防衛大・江崎教授。(写真/日本記者クラブ提供)
イスラエルで10月27日に投開票される第26期クネセト(国会、定数120)総選挙について、防衛大学校の江崎智絵教授(中東国際関係・イスラエル・パレスチナ問題)は22日、日本記者クラブで会見を開き、事前の世論調査で優勢とされる反ネタニヤフ陣営、与党陣営の双方が過半数を確保できず、選挙後の連立協議は極めて難航して早期の再選挙に追い込まれる可能性が高いとの見通しを示した。
2023年10月のハマス奇襲(10.7事件)やガザ地区および対イラン戦の勃発以降で初となる今回の総選挙は、通算19年近く首相の座にあるベンヤミン・ネタニヤフ氏への全面的な信任投票となる。
与野党とも過半数届かず、連立政権樹立に暗雲
直近の情勢調査によると、元イスラエル軍参謀総長のガディ・アイゼンコット氏が率いる中道新党「ヤシャール」が24議席前後を獲得して第1党をうかがう展開となっている。これに対し、ネタニヤフ首相率いる右派与党「リクード」は21議席予想と苦戦を強いられている。
しかし、ヤシャールを中心とする反ネタニヤフ陣営全体でも55議席前後にとどまる見込みで、政権樹立に必要な過半数の61議席には届かない。一方の与党側も、超正統派への徴兵免除法案をめぐって宗教政党が閣僚を引き上げた経緯から議席基盤が弱体化しており、双方が拮抗したまま膠着状態に陥っている。
江崎教授は、ネタニヤフ氏が選挙戦において「右派かパレスチナか」という単純化されたメッセージを打ち出していると分析した。対立候補のアイゼンコット氏を「アラブ系政党と手を組みかねない左派」と印象づけて有権者の恐怖心を煽り、伝統的支持基盤であるミズラヒーム(中東系ユダヤ人層)のアイデンティティを再生産・結束させる戦術を徹底しているという。
その上で、自らの失政とされる10.7事件の責任やパレスチナ問題の根本的解決から国民の目をそらし、西岸やガザを実質支配し続ける「一国家としての現実」を固定化させる保身の狙いがあると指摘した。
兵役免除問題で対立、再選挙の可能性も
一方、国内の世論調査では「社会的結束」への満足度が過去最低水準に落ち込んでおり、国民の分断は深刻化している。とりわけ10.7事件以降、予備役動員など重い軍事的・経済的負担を強いられている世俗層の間で、兵役を免除されている超正統派に対する不公平感が極めて高まっている。
しかし、アイゼンコット新党が「全市民への兵役義務」を掲げる一方で、超正統派宗教政党は免除の継続を譲らないため、政策的な隔たりから両者が手を組む余地は極めて乏しい。
さらに、世俗派右派政党「イスラエル・我が家」を率いるリーバーマン元国防相が宗教政党との連立入りを拒絶していることも、連立協議の大きな障壁となっている。
江崎教授は、アラブ系政党の連立参加が現実的でない中、反ネタニヤフ陣営が過半数に達する道筋は極めて限定的であると説明。刑事訴追や逮捕状の危機に直面するネタニヤフ氏側による徹底した妨害工作も予想され、最終的に組閣パズルが成立せず、2019年以降に繰り返されたような短期での国会解散・再選挙に突入する公算が大きいと結論づけた。
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