日米の円買い協調介入は「重大な誤り」 アイケングリーン氏、ドルへの信認低下を警告

2026-10-26 15:21
日本を訪問したスコット・ベッセント米財務長官。(AP通信)
日本を訪問したスコット・ベッセント米財務長官。(AP通信)

今年8月、円相場が約40年ぶりの安値水準に沈む中、米財務省は異例の市場介入に踏み切り、円を下支えした。しかし、国際通貨体制の権威、米カリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン特任教授の目に、この「米国の円救済」行動は米ドルを深く傷つける失策だったと映っている。

アイケングリーン氏は台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』のインターネット番組『下班国際線』の単独インタビューに応じ、「あの2度の介入は重大な誤りだったと考えている」と断言した。

アイケングリーン氏は8月の円安進行について、日本銀行がインフレに直面しながらも利上げを先送りしたこと、さらに日本の首相が大規模な予算措置や追加支出を含む極めて急進的かつ高リスクな財政政策を打ち出したことが背景にあると分析。「中央銀行のインフレ対応の遅れが重なり、通貨の脆弱性を招いた」と指摘した。

通常であれば、日本は保有する潤沢なドル建て外貨準備を活用し、ドル売り円買い介入を行うことができる。しかし、スコット・ベッセント米財務長官は「このアイデアを全く好まなかった」とアイケングリーン氏は語る。当時、米国債市場はすでに強いストレスに晒され、金利が上昇局面にあったためだ。米国債の最大の海外保有国である日本が米国債を売り立てれば、供給増によって債券価格はさらに下落し、利回りが急騰する恐れがあった。

訪日した米財務長官のスコット・ベッセント氏、日本の高市早苗首相と会談(AP通信)
訪日し、高市早苗首相と会談したスコット・ベッセント米財務長官。(AP通信)

米財務長官の策、いずれも不発に

これに対し、ベッセント氏が二つの代替策を講じたとアイケングリーン氏は指摘する。第一の策はレポ取引の活用だ。日本側が米国債を売却する代わりに、米側に国債を担保として差し出してドル現金を調達し、円高進行後に買い戻すという仕組みだ。第二の策は、米国が保有するユーロを売却し、日本の代わりに円を吸収するというものだった。海外メディアの報道によると、このレポ取引は事実上、米連邦準備制度理事会(FRB)の既存ツールであるFIMAレポ・ファシリティーを通じて実行されたという。

しかし、結果として「この二つの策は機能しなかった」とアイケングリーン氏は斬り捨てる。第一に、円相場の顕著な上昇が見られなかった点。第二に、米国債市場に対して極めて悪質なシグナルを送ってしまった点だ。これは日本や同様の立場にある国々に対し、「多額のドル準備を保有していても、米財務省の意向次第でそれを動かすことはできない」と宣告したに等しいと述べた。

アイケングリーン氏は、これが「各国のドル準備には想定したほどの流動性も価値もない」ことを意味すると指摘。今後、外国の中央銀行によるドル評価に影響を及ぼし、「ドルの魅力は低下したと見なされるだろう」と警鐘を鳴らした。同様に多額のドル建て資産を保有する台湾にとっても、決して看過できないシグナルとなる。 (関連記事: 日銀利上げでも円安進行 植田総裁、追加利上げの明確な道筋示さず158円視野 | 関連記事をもっと読む )

番組『下班国際線』のインタビューに応じる経済史の権威、バリー・アイケングリーン氏(蔡親傑撮影)
アイケングリーン氏の目には、この「米国の円救済」行動はドルに致命傷を与える失策として映っている。(蔡親傑撮影)

FRBの利上げ、くすぶる独立性への懸念

ドル基軸体制のもう一つの綻びはFRBにある。番組司会者の路怡珍氏が、ケビン・ウォルシュ新議長率いるFRBが全会一致で利上げを決定し、ドナルド・トランプ米大統領が求める利下げに応じなかったにもかかわらず、なぜ依然として独立性に疑念が持たれているのかと問うと、アイケングリーン氏は次のように答えた。今回の利上げは、政策が委員会によって決定されるという事実を再認識させるものであり、「ウォルシュ氏がいかなる代償を払ってでも利下げに傾注すると表明したところで、単独では実現不可能だということだ」。

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