赤澤亮正経済産業大臣は記者会見において、我が国の成長戦略に関する基本方針を明らかにし、自民党が長年掲げてきた「中小企業を一社も潰さない」とする手厚い保護政策を根本から見直す考えを表明した。
赤澤大臣は、人口急増期とは異なり急速な人口減少局面にある現在、雇用の維持だけを目的に過度な優遇措置を続けることは企業の成長意欲を削ぎ、資本主義的ではないと指摘。
今後は手厚い支援を段階的に縮小する一方、本気で成長を目指す企業に対してAI導入などを伴走型で強力に支援していく方針を示した。
AI活用による中小企業の成長と人材育成を重視
産業や雇用環境の変化について赤澤大臣は、経産省の推計として2040年に東京圏(1都3県)で約200万人の余剰人員が生じる見通しに言及した。これはAIの急速な普及に伴い、大企業において情報収集や処理を担うホワイトカラー層の業務が代替されるためであると説明。
解雇が困難で高コストな人員を抱える大企業に対し、中小企業は無駄な人件費を抑えつつAIを活用することで飛躍的な生産性向上(リープフロッグ)を実現し、大企業を追い抜く好機が到来していると強調した。
これに伴い、教育体制についても従来の総合大学主導から、高専や工業高校、工学部などAIを実務に実装できる人材育成への重点シフトが必要だと訴えた。
フィジカルAIやロボット開発を成長戦略の柱に
さらに日本が世界で勝機を見出す分野として、超高齢社会と災害大国という特性を生かした「ビッグデータ×AI」、とりわけ「フィジカルAI」とロボットの社会実装を挙げた。
瓦礫からの生存者救出や高線量下で稼働するヘビ型ロボットの開発などを例示し、現場データを持つ強みを生かすことで国富を生み出せると述べた。
また、半導体やAIの素材・製造装置分野において日本がチョークポイントを握っている強みを維持しつつ、スタートアップ政策の抜本的見直しや、生活水準に見合っていない最低賃金制度の是正を進めることで設備投資を促し、2040年には目標とされる1000兆円を上回るGDP1200兆円の達成を目指すと意気込みを語った。
対外協力やエネルギー政策、対米投資にも言及
質疑応答において赤澤大臣は、多岐にわたる対外政策やエネルギー戦略についても言及した。インドネシアやインドとの連携では、海洋安全保障や新幹線事業、エネルギー備蓄構想「パワーアジア」を通じた協力を推進する考えを示した。
ロシア向け規制強化とサハリン2の権益維持を巡っては、ウクライナ侵略を非難しつつも同盟国・同志国の了解のもとで権益を確保することが日本の国益に資すると説明した。
また、AI開発の減速論に対しては米中両国の合意がなければ実効性を欠くと指摘し、規制で縛るのではなく世界で最も開発しやすい環境整備を優先すると答えた。
対米5500億ドル(約87兆円)の戦略投資が国内投資を圧迫するとの懸念に対しては、半導体や電力・次世代革新炉(SMR)分野への投資は米国の関税削減と連動しており、日本の年間250兆円の国内投資目標と十分に両立可能であると強調した。
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