【寄稿】中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日中台の情報戦、「認知戦」で先手を取ったのは誰か

防衛省統合幕僚監部が公開した、中国海軍の空母「遼寧」を近距離から航空撮影した監視映像。(防衛省統合幕僚監部提供)
防衛省統合幕僚監部が公開した、中国海軍の空母「遼寧」を近距離から航空撮影した監視映像。(防衛省統合幕僚監部提供)

7月末、中国の政府系シンクタンクや大学の研究者の見方がメディアで盛んに報じられた。中国が台湾を取り囲む大規模な「包囲演習」を前回実施してから半年がたつなか、下半期に再び大規模演習が行われる可能性は高くないというものだった。大規模演習はすでに効果が薄れ、コストも高いため、むしろコストが低く効果の大きい複合的な圧力を強める可能性があるとの見方だ。加えて、習近平国家主席は9月にワシントンでトランプ米大統領と会談する予定で、西側諸国と中国の関係も全体として安定し、管理可能な状態にあるとされていた。

しかし、分析には人民解放軍の視点や図上演習の想定も踏まえる必要がある。中国軍の関連文献を見ると、大規模演習には、上半期の各段階で各軍種が行った単独訓練や、海空合同訓練を含む複数軍種による統合作戦を総括し、さらには複数戦区による戦役レベルの統合作戦の経験と成果を高める意味がある。

ところが、それから3カ月もたたないうちに、中国軍は突然、空母を西太平洋での遠洋訓練に派遣すると発表した。これほど大規模な動きは、少なくとも当時の研究者の見立てには含まれていなかったようだ。

今回、中国軍の空母「遼寧」(艦番号16)を中心とする打撃群が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して西太平洋に入った際、台湾側の対外発表は、4月20日に「遼寧」が台湾海峡を南下した際の対応と比べても、日本より一歩遅れた印象があった。

10月15日、台湾国防部(国防省に相当)が日中、記者団に「遼寧」の編隊が西太平洋で訓練していることを確認した。一方、日本側は前日の14日に「遼寧」など4隻が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋へ進出し、石垣島南方の海域で艦載機の発着艦を行ったことを公表。15日にはさらに、艦載戦闘機やヘリコプターの発着艦を約10回確認し、艦隊が南シナ海方向へ航行したことを明らかにした。台湾メディアの一部では、台湾側の発表の遅れを印象づける形になったとの指摘も出た。

同日の台湾側の記者会見は説明が簡略で、「遼寧」の映像記録を示した前回と比べ、筆者には前回ほどの確信が感じられなかった。一方、日本側は今回、「遼寧」など中国艦艇の写真と監視した航跡図を公表している。

筆者は学生時代、恩師から「文章は図表に及ばない」と教えられたことを思い出す。ただ、図表の作成は文章以上に手間がかかるため、一般には多用されない。ある程度整った図であれば、軍事の基礎知識が少しでもある人なら一目で状況を把握できる。公式サイトに適時掲載すればよく、必ずしも記者会見を開く必要はない。 (関連記事: 【寄稿】「5月20日」前に中国空母「遼寧」が西太平洋へ 日米南西諸島演習への対抗か | 関連記事をもっと読む )

空母「遼寧」打撃群の遠洋訓練、「認知戦」で先手を取ったのは誰か

10月14日午前7時32分、中国人民解放軍海軍の微信(WeChat)公式アカウントは、「14日、中国人民解放軍海軍は空母『遼寧』の編隊を西太平洋の関連海域に派遣し、訓練を実施する。これは年度計画に基づく定例訓練で、部隊の実戦化訓練の水準を検証・向上させ、使命遂行能力を絶えず高めることを目的としており、関連する国際法と国際慣行に合致し、特定の国や目標を対象としたものではない」と発表した。

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