一般財団法人東京マラソン財団は2026年10月19日、第5回の節目を迎えた「東京レガシーハーフマラソン2026」のパラアスリートレースレポートを発表した。
大会は秋晴れの下、午前8時にパラアスリートT53/T54(車いす)レースがスタート。スタート時の気温は20.1度、湿度は48.0%だった。
車いす男子・鈴木朋樹が大会5連覇 42分28秒で後続に2分以上の大差
車いす男子では、鈴木朋樹選手(トヨタ自動車)が自身の持つ大会記録42分19秒に迫る42分28秒の好タイムをマークし、大会5連覇を達成した。
鈴木選手はスタートから終始先頭に立ってレースをけん引し、約9キロ過ぎから後続を引き離して2分以上の大差をつけた。
鈴木選手は「すごく楽しかった。コース反対側を走るランナーからの声援が途切れないのは東京レガシーハーフマラソンならではです。温かい大会だなと感じながら走れました」と笑顔で振り返り、「目標とした大会記録更新はできなかったが、今年トライしていることがはまってきている印象もあり、満足した走りができました。今後のマラソンレースに活かし、ロサンゼルス2028パラリンピック出場につなげていきたい」と手応えを口にした。
2位には岸澤宏樹選手(日立ソリューションズ)が44分47秒で入り、3位には洞ノ上浩太選手(LINEヤフー)が45分53秒で続いた。
岸澤選手は「もう少し勝負したかったですが、去年よりは確実にタイムも上がり、鈴木選手と競り合えた距離も伸びました。最近、鈴木選手と一緒に練習する機会が増えたことが成長につながっています。ついていきながら自分の強みであるトップスピードをもっと磨いていきたい」と話した。
車いす女子・土田和歌子が2年ぶり3回目の優勝 昨年の悔しさを晴らす
車いす女子では、土田和歌子選手(ウィルレイズ)が52分59秒で2年ぶり3回目の優勝を果たした。
序盤から単独走となった土田選手は「昨年はフィニッシュ前で追い抜かれて2位に終わりました。悔しさもあり、自分の競技を改めて見つめなおしました。1年間強化してきて、今ある力を発揮してチャレンジしたいと臨んだレースでしたが、課題としているスタートや上り坂などに、いい兆候を感じました」と語った。
さらに、「沿道の皆さんが本当に温かかった。苦しい局面で名前を呼ばれるとやっぱり選手は後押しされるんだなと、改めて実感できたレースになりました」と感謝を表した。
視覚障がい男子・大石航翼が自己ベストを約1分半更新 初優勝を達成
午前8時5分には、エリート選手や一般ランナーと同時にパラアスリートT11/T12(視覚障がい)レースがスタートした。スタート時の天候は晴れ、気温20.1度、湿度48.4%だった。
視覚障がい男子では、大石航翼選手(アシックス)が自己ベストを約1分半更新する1時間12分53秒で初優勝を飾った。
大石選手は昨年も自己記録を2分以上更新しており、「目標にしていた73分切りをクリアできて、すごく良かった」と充実感をにじませた。
好記録の背景として「今年1月から所属先が変わり、練習量が増えたこと」を挙げ、「今回は順位よりタイムに目標を置いていましたが、優勝は貴重な体験。この結果を冬のマラソンレースにつなげ、ロサンゼルス2028パラリンピックに出場できるようにこれからもしっかりトレーニングを積んでいきたいです」と意気込みを示した。
2位には勝丸真至選手(AC・KITA)が1時間24分29秒、3位には高橋勇市選手(日本ブラインドマラソン協会)が1時間42分31秒で続いた。
視覚障がい女子・道下美里が3度目の頂点 急きょ変更のガイドと好走
視覚障がい女子では、2年ぶりの出場となった道下美里選手(三井住友海上)が1時間28分27秒で3回目の優勝を果たした。
道下選手は今回、予定していたガイドランナーのアクシデントにより、急きょペアを組んだ中村伸太朗ガイド(順天堂大)と初めてのレースに臨み、「混雑のなか、うまくガイドしてくれて、いいレースができました」と述べた。
中村ガイドも「最初は緊張しましたが、後半はコースも空いてきて二人のテンポも合い、リラックスして走れたのが結果につながりました」と語った。
道下選手は2023年の本大会で、当時のT12クラス世界記録(1時間24分48秒)を樹立している。
今大会については「4分15秒ペースで刻んでいく設定でした。ラストはビルドアップもでき、次につながるレースになりました」と、冬のマラソンに向けた調整の成果を語った。
後輩の活躍についても「ロサンゼルス2028パラリンピックのスタートラインに一緒に立てるように、後輩たちと一緒に強くなっていけたら」と言葉に力を込めた。
女子2位には、前半で一時首位に立つ積極的な走りを見せ、1時間30分11秒の自己新記録をマークした和木茉奈海選手(IMV)が入った。
和木選手は「スピードは元々あるのですが、後半失速することが多かったです。最近、150分ジョグなど距離を踏む練習を多く取り入れたことで、自己新につながったと思います。まだまだ経験が浅く、メンタル面の課題にも向き合いながら、ロサンゼルス2028パラリンピック出場を目指して、これからも頑張っていきたいです」と振り返った。
3位には西村千香選手(日本ブラインドマラソン協会)が1時間37分14秒で入った。
副島正純レースディレクターが総括 パラスポーツの裾野拡大へ
副島正純車いすレースディレクターは大会を総括し、「気象条件もよく、大きなトラブルもなく、レースが終了してよかった」とコメントした。
各部門については「車いす男子は大会記録更新を期待していたので少し足りなかったのは残念でしたが、鈴木選手の強さを感じるレースでした。車いす女子は土田選手が1人で帰ってくるレースになった中で、ベテランらしい強さを感じました。視覚障がいクラス男子の大石選手は初優勝が今後への大きなモチベーションになったのではないでしょうか。女子の道下選手は急なガイドの変更は大変なことだと思いますが、安定した走りができていて、技術の高さを感じました」と評価した。
今大会では、知的障がいや下肢障がいのある選手など、多彩なパラアスリートが完走を果たした。
副島ディレクターは「今後もパラスポーツの裾野を広げていきたいと思っています」と述べ、今後のさらなる挑戦を呼びかけた。