『孫子』は冒頭でこう説く。「兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからず」
台湾国防部の「2026年版(民国115年)中共軍事力報告書」が、2027年度(同116年度)の予算書とともに立法院(国会に相当)に提出された。これを受け、政府系シンクタンクの研究者が報告書の内容を基に、中国軍は武力による台湾侵攻能力を強化するため、「統合上陸作戦の転換を今後数年の重点に据えている」などとして、関連計画が2030年から35年にかけて順次完成する可能性があるとの見通しを示した。
筆者は、張競博士から提供を受けた「115年中共軍事力報告書―0831公開版」を詳しく読み込み、インターネット上で入手した「113年(2024年)版」の公開版とも比較した。しかし、中国軍の水陸両用上陸部隊の戦力整備や戦備態勢に関する詳細な情報は、そこからは読み取れなかった。それにもかかわらず、膨大な水陸両用作戦能力の整備時期を2030~35年と見積もる根拠はどこにあるのか。筆者は疑問を抱いた。
筆者が中国の軍事動向に関心を持ち、研究の基礎を築くようになったきっかけは、幼少期から自ら視聴していた台湾軍の「莒光」教育番組で、中国軍がかつて台湾の離島に対して実施した水陸両用上陸作戦の映像や報道に触れたことだった。大学に進んでからは人民解放軍の水陸両用上陸作戦に関する文献を数多く読み、頭の中には長年、中国軍の水陸両用上陸作戦と組織の大まかな見取り図が描かれてきた。そこで大学で学んだ研究手法を用い、「中国軍は2030年に台湾に侵攻できるのか。水陸両用戦力にはあと何が足りないのか」を考えてみたい。
まず、中国軍は近年、対台湾統合作戦能力の強化を続けており、とりわけ水陸両用作戦は、その対台湾侵攻能力の発展を測る重要な指標となっている。台湾国防部が先ごろ公表した「115年中共軍事力報告書」は、中国軍の統合上陸能力の整備、訓練、作戦支援を重要な観察項目に位置づけ、現段階では中国軍の統合上陸作戦能力はなお不十分だと指摘している。一方、外部からは「2030~35年に関連計画が順次完成する可能性がある」との判断も出ている。
だが、この大まかな判断は、いわゆる「関連計画」が具体的にどの水陸両用上陸計画を指すのかを説明していない。むしろ、その研究手法そのものをさらに検証する必要がある。
中国軍の水陸両用上陸戦力が形成されるまでには、「各装備の調達→各部隊の編成→各軍種・兵種の戦力整備→各部隊の訓練→統合訓練→戦備態勢の確立→渡洋輸送→第1梯隊の上陸→後続梯隊の投入→戦場兵站→戦損からの回復→継続作戦→作戦縦深の確保」という大まかな段階を一通り踏む必要がある。そのうえで、それぞれを個別に、かつ総合的に判断しなければならない。
つまり、能力は装備だけで決まるのではない。戦力整備、さらには戦備態勢の構築にこそある。水陸両用戦力の形成を見極めるには、体系的かつ長期的な観察が欠かせない。
筆者が現時点で中国軍の能力はなお不十分だと判断するのも、公開されている完全な情報が極めて限られているためである。加えて、水陸両用上陸作戦は中国軍の「対台湾統合作戦」の一部にすぎない。中国軍の水陸両用上陸用輸送手段や関連文献に立ち返れば、上陸作戦は海軍、空軍、ロケット軍などの作戦戦力の掩護の下で実施され、正規部隊だけでなく地方部隊も加わり、軍、武装警察、民兵など幅広い戦力が関与するとされている。
1.完全な水陸両用戦力には長期の戦力整備と戦備が必要 中国軍は1949年の古寧頭戦役、1958年の八二三砲戦、さらに20世紀末に外国軍が実施した幾つかの上陸作戦から、水陸両用上陸作戦は単に部隊を海の向こうへ送り届ければ完了するものではないことを学んだ。
分散して渡洋した上陸兵力を上陸後にどう集中させるか、陸海空の火力支援を継続できるか、後続の上陸部隊が支援できるか、指揮と兵站が追随できるか、いかに効果的に封鎖するか――。こうした問題はいずれも、台湾の離島への作戦の成否を左右する。
もちろん、初期の中国軍は大型で近代的な揚陸艦艇が極めて不足しており、従来型の地方民間船や漁船などを利用して水陸両用上陸作戦を行うほかなかった。
2010年代に入ると、中国は満載排水量2万トンを超え、外観上は米海軍のサンアントニオ級と同様にステルス性を意識した設計を持つドック型揚陸艦を相次いで建造するようになった。さらに2010年代末には、満載排水量4万トンを超える075型強襲揚陸艦を開発した。
こうした1万トン級以上の大型揚陸艦は、中国軍の水陸両用上陸作戦を単一の上陸から、統合的かつ立体的な上陸作戦へと発展させつつある。
近年の実際の水陸両用上陸演習や統合演習には、071型や075型の揚陸艦が一部参加している。また、福建省の東山島や大埕湾、広東省の南澳島、汕頭、汕尾付近の海域では、大型の戦車揚陸艦と水陸両用戦車による実弾射撃訓練が行われ、その間、無人機やヘリコプター、海空軍の航空戦力、海軍艦艇などが火力支援、戦場監視、警戒などの任務に当たっている。
したがって、いま中国軍の対台湾作戦能力を論じる際、水陸両用作戦を単なる「揚陸艦艇の数」、あるいは人員や兵器装備を運ぶ輸送手段の数として理解してはならない。
言い換えれば、中国軍が数十年にわたり直面してきた課題は、「上陸できるか」から「渡洋作戦を統合作戦にできるか」へと移りつつある。
近年、「水橋」型上陸用バージや戦車揚陸艇(LCT)、多地点上陸が登場したからといって、2030年や35年には台湾本島への上陸作戦を完遂できる能力が備わると直ちに結論づけることはできない。鍵となるのは、「演習で特定の能力を示せること」と「敵の火力下でその能力を継続して維持できること」の間には、なお隔たりがあるという点だ。(附表1―1:1949年金門と2025年水陸両用演習の比較)
現代の水陸両用作戦における第1の大きな変化は、上陸部隊がもはや従来型の揚陸艦艇で海岸に直接突入することだけに依存しなくなった点にある。
空中強襲、ヘリコプターによる垂直機動、無人機による偵察、電子戦、長距離火力、海上からの火力支援、情報システムが、上陸前から上陸中にかけて役割を果たす。
つまり、中国軍が本当に対台湾統合上陸能力を形成するには、「輸送手段」だけでなく、海上輸送、空中強襲、海上・航空火力支援、軍種横断の指揮・通信、電子戦・サイバー戦、戦場情報と目標指示、渡洋兵站、上陸後の継続補給という少なくとも8つの能力を整備しなければならない。
これらは異なる軍種・兵種や支援システムに分散しており、中国軍が築こうとしているのが、軍種・兵種を横断した統合水陸両用作戦能力であることを示している。
したがって、中国軍の水陸両用戦力の全体像をつかむうえでまず押さえるべきなのは、上陸そのものは一つの事象にすぎず、継続して作戦を遂行できて初めて「能力」といえるという点だ。
昨年末、中国軍東部戦区が台湾に対して実施した「正義使命―2025」では、東部戦区が派遣したのは071型ドック型揚陸艦1隻で、南部戦区海軍の075型強襲揚陸艦1隻がこれに協同した。
このように1、2隻の揚陸艦がそれぞれ1回の渡洋を遂行し、昨年には民間のRo-Ro船(ロールオン・ロールオフ船)の一群が1回の積み降ろしを遂行できたとしても、こうした単発の活動は、完全な水陸両用作戦能力と直ちに同一視することはできない。(附表1―2:中国軍の水陸両用作戦能力の変遷)
附表1―1:1949年の金門と2025年の水陸両用演習の比較/附表1―2:中国軍の水陸両用作戦能力の変遷(陸文浩氏提供)
2.揚陸手段の不足を急ピッチで補う中国海軍 中国軍は2010年代から、正規の水陸両用揚陸艦艇の数的制約を克服する方法を模索してきた。
2万トン余りの071型ドック型揚陸艦から4万トン余りの075型強襲揚陸艦まで複数隻をそろえ、さらに満載排水量5万トン余りとされる076型強襲揚陸艦の1番艦「四川」が2024年12月に進水した。全通甲板を備え、無人機の電磁カタパルトによる発艦能力を持ち、固定翼機やヘリコプター、水陸両用装備を搭載できる。
076型強襲揚陸艦は2025年11月に初の海上公試を実施して以来、新たな発展上の意味を持つ。ただ、単に「強襲揚陸艦が1隻増えた」と理解すべきではない。むしろ、中国軍が大型水陸両用プラットフォームと無人機などの航空戦力を組み合わせる可能性を、さらに模索していることを示している。
したがって、仮に076型強襲揚陸艦が今年就役したとしても、1番艦は同型の試験艦として、海軍の水陸両用上陸作戦と各軍種・兵種、各種兵器・装備との協同に関するさまざまな形態の訓練を担う必要がある。
その中には、複数種類の無人偵察機や無人攻撃機を水陸両用上陸作戦で指揮・運用する任務も含まれる可能性がある。
電磁カタパルトを備えた076型が量産に移行できるかどうかは、改良型の登場を待って見極める必要がある。2030~35年の間に同型艦で一つの揚陸艦群を形成できるかについても、なお時間をかけて観察する必要がある。
台湾国防部が公表した内容や、近年中国軍が大型強襲揚陸艦、ヘリコプター、無人機、民間Ro-Ro船、特殊な揚陸用プラットフォーム、衛星、電子戦、兵站、医療などを段階的に拡充してきた一連の動きを見ると、水陸両用作戦における各種の主要な不足を明らかに補いつつある。
その発展方向は、従来型の揚陸艦隊から脱し、多元的で近代的な立体上陸作戦へと向かっている。ただし、完全な作戦遂行能力がいつ形成されるかについては、部隊の編成、訓練、統合訓練、戦備態勢を引き続き点検する必要がある。
国防部の「115年中共軍事力報告書」の公開内容には、直20(Z-20)ヘリコプターの改良、無人輸送ヘリ、空挺歩兵戦闘車、新型輸送車両、076型強襲揚陸艦、自己昇降式上陸用バージ、「水橋」型上陸用舟艇、衛星通信、北斗衛星測位システム、電子戦、サイバー作戦、戦場医療などが挙げられている。
これらはそれぞれ「人員・重装備の輸送」「通信」「測位」「情報」「電子対抗」「医療後送」といった異なる能力に対応する。
ここで読者に注意を促したいのは、「調達計画に入った」ことは「作戦能力が形成された」ことを意味しないという点だ。同様に「装備がそろった」ことは「部隊が使いこなせる」ことを意味しない。まして、「部隊が使いこなせる」ことを「大規模な継続作戦能力を備えた」ことと同一視することはできない。(附表2:近年の水陸両用戦力の主要装備と戦力整備の動向)
附表2:近年の水陸両用戦力の主要装備と戦力整備の動向(陸文浩氏提供)
3.第1梯隊の上陸は第一歩にすぎない 水陸両用上陸作戦を観察する際に陥りがちな誤りは、「第1梯隊の上陸成功」を水陸両用作戦の完了と見なすことだ。実際には、第1梯隊の渡洋、輸送、着上陸は、水陸両用上陸作戦の始まりにすぎない。
海を渡った水陸両用上陸攻撃部隊が海岸に到達した後、第1梯隊が携行する物資には限りがある。まず直面するのは、自らの弾薬や防護、燃料、食料、医療などの兵站補給、通信と指揮、重装備の交換・補充といった問題だ。
このため、水陸両用上陸作戦では少なくとも3つの梯隊が形成される。基本的な考え方は、第1梯隊が橋頭堡と突破口を確保し、第2梯隊が突破の成果を拡大して戦闘兵力と重装備を補充し、第3梯隊がより大規模な兵力、戦略物資、兵站を提供するというものだ。
その後は「戦場補給―戦損補充―後方支援」の3つの循環に入り、上陸部隊が内陸の作戦縦深へと進撃する力を高める。
水陸両用作戦の研究で、陸・海の水陸両用、あるいは陸・海・空を使った各種の上陸輸送手段を数えるだけでは不十分なのは、このためである。
過去の外国の上陸作戦では、人員の死傷の多寡が各国軍の重視する項目の一つだった。中国は前世紀、幾つかの対外戦争や支援作戦において、兵器装備が劣る中、人海戦術を採用することで戦略的勝利を得た。そのため前世紀にはすでに、中国軍の各軍種・兵種が、西側諸国が陸海空の戦場で無人機をどのように支援任務に用いているかを観察し始めた。
中国軍の各種無人機は2022年8月以降、台湾周辺空域での活動回数と範囲を次第に増やしている。また、台湾周辺に常時展開する中国艦艇との統合訓練や、周辺の海空目標に関する情報伝達任務も行っている。
こうした方式が、中国軍の水陸両用作戦艦隊に海空目標の情報を提供する可能性も排除できない。
ただ不可解なのは、中国軍の揚陸艦が台湾の南東や東方海域で上陸用舟艇や水陸両用戦車を発進させたという情報が、これまで一切ないことだ。せいぜい艦載ヘリ数機による発着艦や空中編隊訓練にとどまっている。
依然として、揚陸艦による遠洋渡洋訓練や、駆逐艦、フリゲートと編隊を組んだ遠洋訓練任務の段階にあるように見える。
むしろ、揚陸艦から上陸用舟艇や水陸両用戦車を発進させる訓練は、ほとんどが中国沿岸部の海域で行われている。
近年、中国当局が公開した水陸両用上陸演習では、無人機による偵察に加え、ロボット犬やロボット狼を投入し、水陸両用上陸作戦や市街戦を支援させる動きも始まっている。目的は、戦闘での人的損耗を減らすことにある。
最近、一部のメディアや海外の研究者は、中国でAIやロボット関連技術が急速に進歩する中、5~10年後には人型ロボットが戦場で実用性を持つようになると予測している。
将来、中国がロボットやロボット犬などを効果的に運用できるようになれば、水陸両用上陸作戦の最初の3波の攻勢で自軍の人的損耗を抑え、相手の防御態勢を消耗させることができるだろう。(附表3:統合上陸作戦の兵力投入と梯隊構成の分析)
附表3:統合上陸作戦における兵力投入と梯隊構成の分析(陸文浩氏提供)
4.水陸両用作戦の最大の難所は「上陸成功の後」にある 水陸両用上陸作戦の第1梯隊が橋頭堡の確保に成功しても、上陸作戦はそれで完了するわけではない。むしろ、そこから最も兵站を消耗する段階に入る。
このため攻撃側は、人員の補充、弾薬・燃料・物資の補給、車両の整備と各種工兵支援、負傷者の後送と医療救護、通信と指揮の確保を、上陸後も継続しなければならない。いずれか一つでも長時間機能しなくなれば、部隊の戦闘力は低下しかねない。
ところが、この10年、福建省の東山島や広東省の南澳島、汕頭などで、中国の大規模な三軍統合作戦や上陸作戦の演習を目にする機会は少なくなった。
代わりに観察されるのは、中国軍が統合作戦に含まれる各種の訓練科目を分解して実施している姿だ。これは、新型の水陸両用揚陸艦艇や軍事装備、技術の向上に伴って生まれた、新たな戦術・戦法への対応のようにも見える。
しかし、新型の1万トン級以上の揚陸艦は、なお遠洋渡洋訓練の段階にとどまっている。
以前と比べれば台湾海峡を出て台湾東部の海域に入るようにはなったが、台湾沿岸から24カイリ外で上陸用舟艇や水陸両用戦車を発進させる作業は行っていない。
これは、渡洋作戦の困難さは部隊の上陸によって終わるものではないと、中国軍自身も認識している可能性を示す。
だからこそ、各種の水陸両用作戦用装備を開発、配備した後、他の兵種、さらには他の軍種と協同して訓練することが最も重要になる。
近年の中国軍の水陸両用上陸関連演習を見ると、1日や2日の演習であれば、渡洋と着上陸を試すことができる。閩南(福建省南部)や粤北(広東省北部)の一帯では、少数の兵力がこの2つを実施している。
逆に、数日以上にわたる連続演習であれば、兵站を観察することが可能になる。
例えば中国は昨年、民間のRo-Ro貨物船数隻を北から南へ台湾対岸の海域を航行させ、粤北地域で国防動員の下で行われる積み降ろし任務に参加させた。
筆者は、こうした動きが、今年10月1日から施行される改正「国防動員法」の下で、今後さらに進む可能性があるとみる。同法では民間資源の扱いを「徴用」から「徴収」にまで拡大し、戦時や戦備期間に中国軍が実権を持って指揮・運用しやすくなる。
言い換えれば、真の上陸作戦能力とは、橋頭堡の突破を作戦縦深への進撃へと転化させる力である。
第1梯隊が上陸に成功し、第2梯隊も続いたとしても、部隊が橋頭堡にとどまるだけなら、作戦を完遂したことにはならない。
筆者は近年、中国軍が「橋頭堡の突破→補給基地の設置→重装備の継続投入→空地統合作戦→指揮系統の前進→兵站拠点の構築→戦損からの回復→作戦縦深の拡大」という一連の流れを通した完全な水陸両用上陸演習を実施したのを見たことがない。あるいは、筆者の情報把握能力が足りないだけかもしれない。
結局のところ、水陸両用作戦の終着点は、船が海岸に到達することではない。上陸兵力が敵の継続的な反撃の下でも戦闘力を維持できるかどうかにある。
さらに筆者が関心を持つのは、水陸両用上陸作戦における中国軍の各種戦損からの回復能力と、その速度がどの程度なのかという点だ。それこそが、完全な水陸両用戦力が形成されたかどうかを見極めるうえで重要になる。
ただ、それは同時に最も検証を要する部分でもある。装備は艦船や車両、航空機の生産によって急速に増やすことができるが、本当に難しいのは、高度な対抗環境の下でも機能する渡洋兵站体系を構築することだからだ。(附表4:水陸両用作戦の「上陸後」の継続作戦能力チェック表)
附表4:水陸両用作戦の「上陸後」における継続作戦能力の検証(陸文浩氏提供)
5.2035年は「観察の目安」であって「完成日」ではない 台湾国防部の2026年版「115年中共軍事力報告書」が示す情報からは、中国軍が統合上陸能力を強化していることが分かる。
兵器調達、軍事訓練、支援能力に関する記述は、過去よりも統合上陸能力に重点を置くようになっており、現段階の中国軍の統合上陸能力はなお不十分だと明確に指摘している。これが第1段階の判断だ。
第2段階は、中国軍が今後数年でこれらの戦力整備項目をさらに完成させるかどうかである。そして最後が、これらの能力がいつ完全な対台湾作戦遂行能力へと転化するかだ。
この最後の点については、装備の項目だけで判断することはできない。「調達」と「作戦能力」の間には、能力の形成に要する長い時間が存在することを理解する必要がある。
いま公開の議論で示されている2030~35年という期間を、「中国軍による多くの水陸両用戦力整備が統合上陸能力の向上に役立つ」と理解するのであれば、それは一般の軍事ファンでも理解できることだ。
しかし、「中国軍が統合上陸能力を強化し、2030~35年に台湾侵攻の戦力整備を完了する」と理解するのであれば、求められる証拠の水準ははるかに高くなる。
076型艦隊はいつ一定の規模を形成するのか。それに対応する航空戦力はいつ形成されるのか。水陸両用部隊は必要な改編を終えたのか。部隊訓練は高強度の統合作戦の水準に達したのか。海軍、陸軍、空軍およびその他の支援戦力は、成熟した指揮系統を形成したのか。
民間船舶は本当に信頼できる動員体制を構築したのか。岸壁を使わない揚陸能力は、台湾周辺の海象条件の下で長時間使用できるのか。港湾が破壊された後も後続梯隊の投入を維持できるのか。渡洋兵站は持続できるのか。高強度の火力と電子妨害を受けた後に回復できるのか。第2、第3梯隊を連続して投入できるのか。作戦縦深を確保できるのか――。
これらの問題が一つ一つ検証されなければ、次の「中共軍事力報告書」が出た際に、再び時期を後ろへずらして見積もることになる可能性がある。
結局のところ、公開版の「中共軍事力報告書」そのものが、情報のすべてではない。
したがって、公開報告の数段落の記述だけから完全な時期予測モデルを組み立てることには、極めて慎重であるべきだ。
「公開資料→情報分析(情報判断)→能力評価→能力形成モデル→時期予測」と、段階を分けて検討する必要がある。こうした集計と分析を経て形成される資料は、間違いなく一大事業となるだろう。(附表5:2030~35年の能力形成の指標と検証)
附表5:2030~35年の能力形成に関する指標と検証(陸文浩氏提供)