公益財団法人ユニジャパンが主催する第39回東京国際映画祭(TIFF)は9月29日、本年度の「黒澤明賞」の受賞者に呉美保(お・みぽ)監督とイラン出身のモハマド・ラスロフ監督の2名が決定したと発表した。
あわせて、人や社会、環境に配慮した作品を表彰する「エシカル・フィルム賞」の審査委員長に、実力派俳優の磯村勇斗氏が就任することも公表された。本年度の映画祭は、10月26日から11月4日までの10日間にわたって開催される。
呉美保監督とラスロフ監督が「黒澤明賞」受賞 創作姿勢を評価
黒澤明賞に選出された呉美保監督は、三重県出身で大阪芸術大学を卒業後、スクリプターを経て2006年に長編映画『酒井家のしあわせ』で監督デビューを果たした。
2014年の『そこのみにて光輝く』ではモントリオール世界映画祭で最優秀監督賞に輝き、国内外で60もの賞を受賞したほか、米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に選ばれた。
出産や育児を経て、2024年には9年ぶりとなる長編作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』で復帰し、最新作『ふつうの子ども』(2025年)も世界各地の映画祭で高い評価を得ている。
選考委員会は、社会の片隅に生きる人々を善悪で判断せず多面的に見つめ、近作において子どもたちをありのままに捉えた演出力を高く評価し、今後の活躍への期待を込めて授与を決定した。
ラスロフ監督の抵抗と人間描写を評価 関連上映も実施
同じく受賞したモハマド・ラスロフ監督は、イラン南部シーラーズ出身で、社会学を学んだ後に映画制作へ進出した。当局の過酷な検閲や禁固刑、製作禁止処分を受けながらも、ゲリラ的手法を駆使して体制内の人権抑圧や社会における個人の責任を描き続けてきた。
2020年の『悪は存在せず』でベルリン国際映画祭の最高賞である金熊賞を受賞し、秘密裏にイランを脱出して完成させた2024年の『聖なるイチジクの種』は第77回カンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を獲得、2025年にはドイツ代表としてアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。
選考委員会は、抑圧する側の人間も一人の市民であるというヒューマニズムの観点に立ち、数々の圧力に屈せず創作活動を継続してきた姿勢を称賛した。
なお、同賞の関連企画として「黒澤明の愛した映画」と題し、『サーカス』(1928年)、『姿三四郎 4Kデジタルリマスター版』(1943年)、『生きる 4Kデジタルリマスター版』(1952年)、『友だちのうちはどこ?』(1987年)の4作品も上映される。
磯村勇斗氏が「エシカル・フィルム賞」審査委員長に就任
一方、環境や貧困、差別といった社会課題への意識や多様性の理解促進を目的に、2023年に住友商事株式会社の協力で創設された「エシカル・フィルム賞」の審査委員長には、映画『月』で第47回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞し、地元静岡で「しずおか映画祭」を主催するなど地域文化活動にも尽力する俳優の磯村勇斗氏が就任する。
磯村氏はTIFFの現役大学生PRチーム「学生応援団」から選抜された3名とともに審査にあたる。今年度のノミネート作には『アマデオともうひとつの新世界』、『夢から覚めることはそうない』、『時と潮』の3作が選ばれており、11月2日には受賞作の授賞式および磯村氏が登壇するトークセッションが開催される予定となっている。
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編集:小田菜々香












































