愛知・名古屋アジア競技大会の野球会場で、台湾を応援する観客への対応を巡り議論が広がっている。
9月25日のチャイニーズ・タイペイ―中国戦では、「Taiwan」と書かれたタオルを掲げた台湾の観客が現場スタッフから制止された。翌26日のチャイニーズ・タイペイ―日本戦では、会場入口に中華民国国旗と旭日旗を例示し、「上記の旗は持ち込めません」とする案内が掲示された。
27日のチャイニーズ・タイペイ―中国の3位決定戦では、同様の掲示は見当たらなかった。大会組織委員会は28日、旭日旗を持ち込み禁止の対象としたことについて「現場の誤った認識」だったとして謝罪した。一方、この発表では中華民国国旗には言及せず、「Taiwan」タオルへの対応についても撤回や謝罪は示していない。
一連の対応を受け、X(旧Twitter)では、大会規則の適用や「Taiwan」という表記をどこまで政治的なものとして扱うのかを巡り、疑問や批判の声が上がっている。
25日、「Taiwan」タオルを掲げた台湾ファンを制止
最初に問題となったのは25日に行われた野球のチャイニーズ・タイペイ―中国戦だった。台湾はこの試合で中国を9―1で下した。
試合後半、台湾側の観客席で「Taiwan」の文字が入った応援タオルを掲げていた台湾人観客に対し、現場スタッフが掲示を控えるよう求めた。
中央通信社によると、日本語を話す女性観客がスタッフに対し、台湾人観客は「Taiwan」を政治的主張だとは考えていないと説明した上で、制限する規定があるのであれば明確に示すよう求めた。
これに対し、スタッフ側は大会規定に基づき、タオルが政治的な主張に当たると判断されているとの説明を繰り返したという。
周囲の台湾ファンからは「Team Taiwan」と声を上げる動きも起きた。スタッフは、騒ぎが続けば安全な大会運営に影響するとして退場を求める可能性にも言及したが、最終的に観客が退場を求められる事態にはならなかった。
組織委「NOC名以外の表示を控えてもらった」
大会組織委員会はその後、現場スタッフが「Taiwan」と書かれたタオルの掲示を控えるよう求めたことを認めた。
組織委の報道課は28日、J-CASTニュースの取材に対し、「現場の係員が、参加するNOC名以外の国名・地域名を記載した応援タオルの掲示を控えていただくようお願いしたものと聞いております」と説明した。
理由については、「他のお客さまとのトラブルを避け、全てのお客様に安心してご観戦いただけるよう、掲示を控えていただくようお願いしたものと聞いております」としている。
大会公式サイトでは、会場内の主な禁止行為として「参加していない国の国旗を掲げること」や、1メートル×2メートル以上の旗、横断幕などを掲げることを挙げている。
また、中央通信社によると、大会規定では政治的、思想的、宗教的な主義・主張や、公共の秩序、道徳に反する内容の物品を持ち込むことも禁止されている。
一方、一般観客向けに公表されている主な禁止行為には、「Taiwan」という文字を記した応援グッズそのものを禁止すると明記した項目は確認できない。
Xでは、中国国旗が会場内で掲げられる一方、「Taiwan」と記されたタオルが制止されたことを挙げ、大会運営の公平性を疑問視する声も出ている。
26日は中華民国国旗と旭日旗を「持ち込み禁止」と掲示
翌26日のチャイニーズ・タイペイ―日本戦では、岡崎中央総合公園野球場の入口に、中華民国国旗と旭日旗の画像を並べ、「上記の旗は持ち込めません」と日本語、英語、繁体字中国語で案内する掲示が設置された。
27日のチャイニーズ・タイペイ―中国の3位決定戦では、同様の掲示は見当たらなかった。
大会組織委員会は28日、26日の掲示について公式サイトで謝罪した。
ただし、組織委が誤りを認めたのは旭日旗についてだった。
組織委は、旭日旗について「持ち込み禁止の対象ではなく、現場の誤った認識により掲示した」と説明。「観客の皆様に不快な思いを抱かせる結果となったことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪し、全競技会場への周知を徹底するとした。
一方、中華民国国旗を持ち込み禁止とした判断について、同日の発表では言及していない。
また、「Taiwan」タオルへの対応については、大会側が「他のお客さまとのトラブルを避けるため」と掲示を控えるよう求めた理由を説明しているものの、対応自体を撤回したり謝罪したりはしていない。
中華民国国旗を巡る動画もXで拡散 撮影日時は不明
一連の議論が続く中、28日には、中華民国国旗を振ろうとした観客がスタッフから注意を受けたとする別の動画もX上で拡散した。
湯浅忠雄氏は、アジア大会を見学した韓国人の友人から許可を得て公開した動画だと説明し、スタッフが台湾人観客に中華民国国旗を振らないよう注意している場面だとしている。
ただ、投稿では動画の撮影日時や競技、会場は明らかにされておらず、映像からも確認できない。
北村晴男参院議員「何故そうした認識が生まれたのか」
組織委が旭日旗を巡る掲示を「現場の誤った認識」と説明したことについて、Xでは、その判断に至った経緯を問う声も出た。
日本保守党の北村晴男参院議員は、組織委の説明に疑問を呈し、大会運営を批判した。
北村氏は別の投稿でも「この運営は日本人として本当に恥ずかしい」「愛知県はいつから中国になったのか?」と批判し、中国側との関係にも疑念を示した。ただ、これを裏付ける公的な情報は確認されていない。
古山よしはる氏は、台湾が「Chinese Taipei」の名称で国際スポーツ大会に参加する取り決めには理解を示しつつ、「Taiwan」の表示まで政治的主張として扱うことや、大会運営の公平性に疑問を呈した。
古山氏は投稿で、中国や北朝鮮の国旗は掲げられていたとした上で、「Taiwan」の表示が制止されたとして、大会運営の公平性にも疑問を示した。
元産経新聞社会部記者でフリーライターの三枝玄太郎氏も、「友好国である台湾までも敵に回してしまった。」と投稿し、大会側の対応を批判した。
神戸市議が文科相に要望書 「必要以上の拡大解釈」を問題視
SNS上での議論は、日本政府への働きかけにも広がった。
神戸市議会の上畠寛弘氏は27日、関芳弘文部科学相に「台湾への尊重及び台湾の人々の尊厳への配慮を求める要望書」を提出したことを明らかにした。
上畠氏は、アジア・オリンピック評議会(OCA)が名称や旗などに関する規則を定めていることには理解を示しつつ、「その運用によって必要な範囲を超えて台湾の人々の尊厳やアイデンティティを傷つけ、台湾への思いそのものが否定されたと受け止められるような対応が行われることがあってはなりません。」と要望書で訴えた。
要望書では、大会で台湾の選手や関係者、観客に対して行われた対応について事実関係を確認することや、大会規則の趣旨と適用範囲を検証することを要求。必要以上の拡大解釈によって台湾の人々による正当な応援や表現まで一律に制限しないよう、大会組織委員会やOCAに働きかけることなどを日本政府に求めている。
「政治的表現」と「応援表現」 線引きはどこに
今回の一連の問題の背景には、台湾が国際スポーツ大会で「チャイニーズ・タイペイ」の名称や旗を使って参加する枠組みと、政治的な主張を競技会場から排除するための大会規則がある。
組織委は「Taiwan」タオルについて、NOC名以外の国名・地域名を記載した応援タオルに当たり、他の観客とのトラブルを避けるため掲示を控えるよう求めたと説明している。
また、26日の掲示については、旭日旗を禁止対象とした現場判断が誤りだったことを認めた一方、中華民国国旗については28日の公式発表で説明していない。
一般向けに公表された禁止事項には、「Taiwan」という文字を記した応援グッズを一律に禁止するとの記載は確認できない。「Taiwan」の表示や中華民国国旗をどのような基準で扱うのかについて、大会側は現時点で具体的な線引きを示していない。