【花蓮洪水から1年⑥】なぜ3台のショベルカーは山中に残されたのか 上流に2億立方メートル超の土砂、消えない洪水リスク

登山や探検を楽しんでいた仲間たちが、緊急事態に遭った友人らを助けるうちに、やがて東台湾の民間救助隊「東捜」を結成した。(黄正賢さん提供)
登山や探検を楽しんでいた仲間たちが、緊急事態に遭った友人らを助けるうちに、やがて東台湾の民間救助隊「東捜」を結成した。(黄正賢さん提供)

馬太鞍渓(マタアン渓)の上流には、いまも2億立方メートルを超える不安定な土砂が残り、大雨が降るたびに下流の住民を不安にさせている。

実は、馬太鞍渓の上流には今も大型のショベルカー3台が残されている。もともとはせき止め湖に対処するために山に入ったもので、川床に沿って丸1日かけて進み、そこから少しずつせき止め湖の堤体へと近づいていった。

崩落現場で3台が土砂に埋まる

工事はその後、崩落に見舞われた。6台のショベルカーのうち3台が土砂に埋まり、残る3台は撤収が間に合わず、山中に置いたままになった。数日おきに人員が山に入り、エンジンをかけて給油や整備をしなければならない。山に残る3台は、次に工事が必要になる時を待っている。

周囲から「賢哥(賢兄さんの意)」と呼ばれる黄正賢(こう・せいけん)さんは、この経緯を、歩き慣れた山道の話でもするような口ぶりで語る。

黄さんは花蓮県玉里鎮でソバを主に育てる小規模農家であり、民間の山岳救助団体「中華民国山難救助協会東区捜索救助委員会」(通称「東捜」)の訓練責任者でもある。「農家はなかなか大変で、半年以上働いても、ソバの収穫を人手に頼む費用が、売り上げを上回ることもよくある」と笑う。

しかし、台湾東部で誰かが林道で行方不明になったり、峡谷に転落したり、川に流されて落差の大きい地形に取り残されたりすれば、黄さんは救助隊を指揮する立場として出動する。黄さんが率いるメンバーはロープで体を確保して降下し、要救助者を固定してから安全な場所まで引き上げる。

馬太鞍渓でせき止め湖ができると、黄さんは2つのルートの人員が上流に入れるよう調整し、その後は自らも崩落地帯に入って、ショベルカーの運転手や関係者の出入りを支えた。

馬太鞍渓上流の、長さ1キロに及ぶ崩落現場(黄正賢さん提供)
馬太鞍渓上流にある、長さ約1キロに及ぶ崩落現場。(黄正賢さん提供)

この民間救助隊には、特別な結成のきっかけがあったわけではない。黄さんによると、もともとは探検や沢登り、山歩きが好きな仲間の集まりだったが、行方不明者の家族や消防機関から次々と頼まれるうちに、アウトドアで培った技術を救助活動に生かすようになった。山岳遭難が起きるたびに訓練を重ねるうちに、山で救助を必要とする人々を導く存在になっていった。

1キロにわたる山肌の崩落 往復に8、9日

林業及自然保育署(林保署)の森林保護員は管轄区域と林道を熟知し、消防隊員は救助技術を持つ。実際に深山へ入る際には、どちらの力も欠かせない。近年は林保署の職員が東捜の訓練に参加し続けており、こうした協力関係を背景に、馬太鞍渓上流で異変が起きた際、黄さんは入山調整の中心的な役割を担った。 (関連記事: 【花蓮洪水から1年①】「シャベル超人」が去った後も災害は終わらない 砂塵と「警報疲れ」に直面する光復郷 | 関連記事をもっと読む )

せき止め湖の区域への最初の入山ルートは2つに分かれ、そのうち1つは光復林道と昔からの山道をたどるものだった。道は寸断され、斜面は崩れ、一部の区間は懸垂下降が必要で、最初の往復には8、9日かかると見込まれた。1回目の調査では、黄さんは外にとどまり2つのルートの調整に当たった。2回目、天候が比較的安定し、ルートも徐々に整えられてから、自ら上流に入った。

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