「世界は三重の危機」民主主義後退、AI格差、地政学対立 台湾の法学者が唐奨フォーラムで警鐘
23日、唐奨法治賞フォーラムであいさつする台北政経学院・講座教授の葉俊栄氏。(撮影/李忠謙)
国立台湾大学法律学院(法学部)は23日、台湾で創設された国際的学術賞、唐奨(タン賞)「法治賞」受賞者が出席するフォーラムを開催した。司会を務めた台北政経学院の葉俊栄講座教授は開会のあいさつで、世界は現在「民主主義のポストモダン的窮地と課題(postmodern predicaments and challenges of democracy)」に直面していると指摘した。葉氏は、過去数十年にわたり台湾、韓国、米国、欧州各国で民主主義制度が著しい進歩を遂げた一方、世界は現在、地政学的対立、民主主義の後退、そして技術的繁栄の裏にある社会や世代間の不平等という三重の危機に同時に見舞われていると強調した。
民主主義の後退、各国が直面する憲政の危機
葉氏は、台湾、韓国、米国および多くの欧州諸国では既に、大統領や総統の直接選挙、住民投票など、多様な形で市民が政治に参加する成熟した仕組みが確立されているが、戦争が日常の経済活動や社会・文化交流を深刻に阻害していると分析した。さらに深刻な危機として、世界中の多くの国が「民主主義の後退」という窮地に陥っている状況を挙げた。
ポーランドやハンガリー、さらにはイスラエルでも民主主義後退の兆候が表れているほか、韓国では戒厳令や緊急権限の乱用といった事態が発生した。台湾において人権保護の先導者としての役割を果たしてきた憲法法廷(憲法裁判所)も現在、運用が限定され、機能不全に陥るという憲政の危機に直面している。葉氏は、この世界的な「民主主義の揺らぎ」の最大の震源地は米国だと明確に指摘。かつて世界から称賛された民主主義の模範国において、適正な手続き、権力分立、人権保障など憲政を支える中核的な基盤が、現在厳しい試練の時を迎えているとの見方を示した。
AIブームが社会の格差を拡大
政治的側面に加え、葉氏は技術発展が社会正義に与える影響についても言及した。同氏によれば、米国、欧州、台湾、韓国などの国々では、人工知能(AI)や半導体産業の飛躍的な進歩、そして計算能力の急速な向上による恩恵を受けている。しかし、経済構造やその背後にある社会的、政治的、経済的背景を少し検証すれば、一部が目覚ましい経済成長を遂げる半面、台湾でも生活を維持するために苦闘している多くの人々が存在することに気づくという。葉氏は、資本と産業構造が急激に二極化しており、AIや半導体産業の急速な振興が、結果として不平等を拡大させ、さらに若い世代に「世代間正義」を巡る深刻な危機をもたらしていると警告した。
最後に葉氏は、台湾は若い民主主義社会ではあるものの、徐々に成熟へと向かっており、深く反省し、問題を未然に察知できる社会だと強調。また、長年にわたり多くの法学者にインスピレーションを与えてきた唐奨「法治賞」受賞者であり、米エール大学教授のブルース・アッカーマン(Bruce Ackerman)氏に敬意を表すると同時に、世界中の思想家や実践者を集め、民主主義の窮状に対する前向きな解決策と将来への道筋を探る機会を設けた唐奨教育基金会に感謝の意を示した。
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