米国の中間選挙まで残り1カ月余りとなり、選挙戦を戦う政治家にとってメディアへの露出が重要となる時期に、ホワイトハウスと報道界の対立が激化している。トランプ米大統領(Donald Trump)が3つの報道機関のホワイトハウスへの立ち入りを禁止し、米CNNを大統領同行のテレビ・プール取材から外したことを受け、米国の5大テレビネットワークは21日、異例の共同行動として、大統領活動のテレビ・プール取材を全面的に停止した。
同時に、長期取材証を取り消されたCNN、MS NOW、政治ニュースサイト『Politico』は、ワシントンD.C.の連邦地方裁判所に提訴し、トランプ政権による措置が米憲法修正第1条で保障された報道の自由と、修正第5条が定める適正な法的手続きを侵害していると訴えた。
今回の報道界とホワイトハウスの正面衝突は、トランプ氏が18日、CNN、MS NOW、『Politico』による政権報道を公然と批判し、3社を「フェイクニュース」と非難した上で、その記者らのホワイトハウスへの立ち入りを禁止すると発表したことに端を発する。
翌19日朝、3社のホワイトハウス担当記者はホワイトハウス敷地への入場を拒まれ、長期取材証も取り上げられた。
本来、テレビ・プールの持ち回り制度に基づき21日に各大手テレビネットワークを代表してトランプ氏に同行し、ニューヨークで開かれる国連総会を取材する予定だったCNNの記者は、20日にホワイトハウスが発表した正式な日程通知から外された。
米5大テレビネットワークが共同声明
ホワイトハウス記者団のプール取材制度は長年、記者、写真記者、テレビカメラマン、技術スタッフなどで構成され、スペースが限られる場面や大統領に同行する際に、全メディアを代表して現場に入り、取材内容を共有する仕組みとして運用されてきた。また、大統領同行取材にかかる多額の費用を各社で分担する役割も担っている。
ホワイトハウスがCNNをテレビ・プール取材から外したことを受け、同プールを構成する5つのテレビネットワーク——トランプ氏を一貫して支持してきたFOXニュース(Fox News)に加え、ABCニュース、CBSニュース、NBCニュース、そしてCNN——は足並みをそろえ、大統領の日程を対象とするプール撮影を全面的に停止すると発表した。
「本日をもって、テレビ・プールは、大統領のプール取材対象に指定された行事を取材しない」
ボートン氏は、この決定について、ホワイトハウスがCNNに割り当てられたプール取材の役割を果たすことを認めなかったためだと説明。各テレビネットワークはCNNに代わるプール担当を置かないと明言した。一方、連邦議会やその他の要人の日程などに関するプール取材は、従来通り継続するという。
5大テレビネットワークはその後、共同声明を発表した。
「政府に関する正確かつ独立した情報を国民が得られることは、重大な公共の利益に関わる。いかなる政権も、報道内容が気に入らないという理由だけで報道機関に制限を課すべきではない」
ホワイトハウスを30年にわたり取材してきた『ニューヨーク・タイムズ』のピーター・ベイカー(Peter Baker)記者は、自身の取材生活の中で、大手テレビネットワークのカメラマンが大統領に同行せず、日々の公務や日程を記録しない事態は初めてだと指摘した。
『ニューヨーク・タイムズ』と『ワシントン・ポスト』も写真使用を一時停止
プール取材停止の影響は、21日午後には早くも表れた。
トランプ氏がこの日、ホワイトハウス南芝生に新設されたヘリポートの供用開始を記念する式典に出席した際、主要テレビ局はいずれも取材要員を派遣せず、CNN、FOXニュース、C-SPANなども生中継を行わなかった。
ホワイトハウスは公式サイトとYouTubeチャンネルで独自にライブ配信したものの、現場の音声は騒音で不明瞭となり、トランプ氏の発言をほとんど聞き取れない状態だった。
テレビ局だけでなく、一部の新聞社も連帯の動きに加わった。
『ワシントン・ポスト』と『ニューヨーク・タイムズ』はともに、米東部時間21日深夜まで、ホワイトハウスの写真プールが撮影したトランプ氏の活動写真について、掲載や配信を一時停止すると発表し、取材から排除された同業者への連帯を行動で示した。
保守系テレビ局「リアル・アメリカズ・ボイス(Real America's Voice)」など一部の報道機関は引き続きトランプ氏に同行してニューヨーク入りしたものの、その報道力や映像配信の規模では、主要テレビネットワークを代替するには至らなかった。
ホワイトハウスがCNNに対する立ち入り禁止措置を取る一方、政権内では対応の違いもみられた。
メラニア夫人(Melania Trump)の事務所はCNN記者1人の取材を承認し、22日に国連総会で行われるメラニア夫人の公開日程について取材を認めた。
CNNなど3社が提訴、一時差し止めを申請 トランプ氏「裁判官は私に不利な判断をするだろう」
被告にはトランプ氏のほか、スージー・ワイルズ(Susie Wiles)大統領首席補佐官、スティーブン・チャン(Steven Cheung)ホワイトハウス広報部長、ショーン・M・カラン(Sean M. Curran)シークレットサービス長官が名を連ねている。
原告側代理人を務める著名な憲法訴訟弁護士、セオドア・J・ブートロス・ジュニア(Theodore J. Boutrous Jr.)氏は、訴状と声明で、ホワイトハウスの禁止措置について「憲法修正第1条への直接的な攻撃であり、適正な法的手続きへの公然たる侵害でもある」と主張した。
ブートロス氏は、トランプ大統領が自身の気に入らない報道への懲罰として今回の措置を取り、政府を監視する報道機関を威嚇する意図を公然と示していると指摘した。
原告側は緊急の一時差し止め命令(TRO)を申請し、ホワイトハウスに対して記者らの長期取材証を直ちに回復するよう命じることを裁判所に求めた。
本件は無作為の事件配当により、ティモシー・J・ケリー(Timothy J. Kelly)連邦地方裁判所判事が担当することとなり、米東部時間23日午後に審理が開かれる予定だ。
ケリー判事はトランプ氏が第1次政権時代に指名した人物だが、2018年にトランプ政権がCNN記者ジム・アコスタ(Jim Acosta)氏の取材証を取り消した際には、CNN側が求めた一時差し止め命令を認め、取材証を一時的に回復するよう命じた経緯がある。
メディア側による今回の提訴を受け、トランプ氏は21日、担当するケリー判事を批判する投稿を行った。
トランプ氏は、メディア側が「自分たちにとって非常に都合の良い判事を引き当てた」と皮肉り、ケリー判事がおそらく自身に不利な判断を下すだろうとの見方を示した上で、政権側は上訴を続ける構えだと表明した。
「ホワイトハウスが仕掛けているのは報道の自由への攻撃ではない——私は報道の自由を大切にしている。ホワイトハウスが仕掛けているのは『フェイクニュース』への攻撃だ。フェイクニュースはすでに癌のように、我々が愛するアメリカ合衆国の中で広がっている……これはすでに国家安全保障を脅かしており、直ちに止めなければならない」
ホワイトハウスは同日、取材資格は「特権であって権利ではない」との見解を示した。
一方、JD・バンス(JD Vance)副大統領は、対象となった報道機関が「極左のプロパガンダ(far-left propaganda)」を行っていると批判した。
「これは報道機関を禁止しているのではない。政治的な宣伝活動を行うのであれば、特別な取材アクセスは与えないということだ。共和党政権のホワイトハウスが、なぜあなた方に特別待遇を与えなければならないのか」
これに対し、コロンビア大学ナイト第一修正案研究所(Knight First Amendment Institute)など言論の自由を擁護する団体は、法廷で報道機関側を支持する姿勢を表明した。
ホワイトハウス記者協会(WHCA)の会長でFOXニュース記者のジャッキー・ハインリッチ(Jacqui Heinrich)氏も声明を発表し、ホワイトハウスに今回の措置を撤回するよう求めた。
ハインリッチ氏は「政府当局者が満足するかどうかにかかわらず、米国民は自由で独立した報道機関を通じて、権力を持つ者を監視できなければならない」と強調した。