台湾駐日経済文化代表処台湾文化センターが主催する「台湾文化センター 台湾映画上映会2026」の第8回上映作品として、映画『甘露水』が9月19日、東京・渋谷のユーロライブで上映され、共同監督を務めた林君昵(リン・ジュンニー)監督と黃邦銓(ホアン・バンチュエン)監督が上映後のトークイベントに登壇した。
台湾近代彫刻の先駆者・黄土水の国宝「甘露水」を追う
本作は、台湾美術史における伝説的な彫刻家・黄土水の代表作で、台湾の国宝に指定されている裸婦像「甘露水」を追った長編ドキュメンタリー映画だ。
黄土水は、台湾出身者として初めて東京美術学校に留学した近代彫刻の先駆者で、「甘露水」は1921年の第3回帝展に入選した。
1958年以降は行方不明となっていたものの、2021年に奇跡的に発見され、長年大切に保管してきた医師・張鴻標氏の遺族から国へ返還された。現在は台中市にある国立台湾美術館に収蔵され、2023年2月に国宝に指定されている。
映画では美しい16ミリフィルムを用い、黄土水の日本留学時代の足跡や、戦後に「甘露水」を所蔵していた台中の張家を訪ね、フィクションと現実を交差させながら時代の変遷を描き出している。
本作は2025年の金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞と最優秀オリジナル映画音楽賞にノミネートされ、2026年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の「Doc Fortnight」で北米プレミア上映された。
林君昵監督「黄土水へのオマージュ」 100年を超える旅を映像に
上映前、林監督は黄土水を「尊敬する大先輩」と評し、本作を大先輩へのオマージュと位置づけた上で、観客に「100年の時を超える旅」を楽しんでほしいと呼びかけた。
上映後には、会場に集まった黄土水の遺族や東京藝術大学関係者、出演者、スタッフへの感謝を伝えた。
林監督は、黄土水が青春時代を過ごし、創作意欲に満ちていた日本で本作を上映できた喜びを語るとともに、黄土水が「甘露水」制作の翌年にあたる1922年に残した文章「台湾に生まれて」に込められた情熱やメッセージを、映像で表現したかったと明かした。
16ミリフィルムを「彫刻」に 黃邦銓監督が映像表現の意図語る
黃監督は、黄土水がかつて道具を自作して石彫に取り組んでいたことに触れ、現在もその伝統が残る東京藝術大学で学ぶ若い芸術家たちの制作風景を撮影した背景を説明した。
また、フィルムに銀の粒子が付着し、光が当たることで映像が生まれるプロセスを彫刻になぞらえ、大理石の彫刻を「フィルムという彫刻」で描く対話の意味を込めて、16ミリフィルムを使用したと説明した。
両監督が語る台湾映画の魅力「多様な視点から自由に創作できる」
トークイベントの終盤、台湾映画の魅力について問われた黃監督は、さまざまなイデオロギーや視点を持つ人々が自由に創作できる包摂性を挙げた。
林監督も、複雑な歴史を経てきた台湾だからこそ多様な視点が存在し、それぞれの立場から物語を語ることができる点が強みだと語り、会場は温かい拍手に包まれた。
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編集:梅木奈実













































