米中首脳会談、10年前と変わった力関係 台頭する中国、米国の「一方的優位」は終わったのか 2017年の米中首脳会談2日目、フロリダ州マール・ア・ラーゴを散策するトランプ氏と習近平氏(AP)
中国の 習近平 国家主席がワシントンを訪問し、ドナルド・トランプ米大統領と間もなく 首脳会談を行う。習氏の 今回の交渉姿勢は、約10年前に米国で初めて会談した際とは完全に異なっている。2017年にマール・ア・ラーゴ(Mar-a-Lago、フロリダ州)で米中首脳会談が行なわれた当時、中国は多くの分野で米国に遅れをとっており、トランプ氏が仕掛ける技術戦、貿易戦の影響を極めて受けやすい状態にあった。しかし現在、習氏が率いるのは、極めて大きな転換を遂げた国家だ。
米CNNの報道 によると、世界第2位の経済大国となった中国は、今や技術大国としても台頭している。国内の情報技術(IT)人材が中国の人工知能(AI)モデルの開発を急速に推し進め、一部のシリコンバレー企業に肉薄する水準に達している。さらに、北京の民間宇宙企業は、再利用型ロケットの打ち上げと回収に成功し、米宇宙開発大手スペースX(SpaceX)に挑む姿勢を見せている。株式市場においても、過去1年間でエネルギー、AI、ロボティクスから半導体メモリー に至るまで、有望視される新興ユニコーン企業が次々と誕生し、話題を集めている。
中国、レアアースを切り札にする可能性 中国の巨大な製造業サプライチェーンは、2025年に1兆2000億米ドルの貿易黒字を創出した。その要因の一部は、同国の電気自動車(EV)、ソーラーパネル、半導体に対する市場の強い 需要だ。また、中国が一部の輸出サプライチェーン、とりわけレアアース(希土類)を掌握していることは、トランプ氏の「米国第一主義」に基づく貿易摩擦に直面する中国指導部に、独自のけん制力と自信をもたらしている。
2017年にマール・ア・ラーゴで行なわれた 米中首脳会談でのトランプ氏と習氏 。(AP通信)
こうした変化により、中国政府には以前とは異なる心理状態が生まれ、米国が一方的に中国へ要求や脅しを突きつけることができた時代はすでに終わった。復旦大学国際問題研究院の呉心伯院長 は、現在の中国は9年前よりも自信を深めており、さらに重要なのは、今日の中国が既に「米国をけん制する有効な手段」を見出している点だと指摘する。米国政府はより対等かつ相手を尊重する姿勢で中国に接する必要があり、両国関係はますます互恵的なものにならざるを得ないとの認識を示した。
ただ今回の3日間の訪米日程で、 習氏が取り組むべき課題は山積している。同氏は中国の減速する経済に新たな活力を注入し、5月に北京において米中間で合意した「建設的な戦略的安定」という目標を維持することで、自国の発展が阻害されないよう努めるとみられる。しかし、世界的な影響力と技術力の高まりを背景に、習氏はワシントン(米政府)に対して新たな現実も突きつけるだろう。すなわち、中国政府は米国との安定した関係を望んでいるものの、中国の台頭は米国との安定した関係に依存しないという現実だ。
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また、中国共産党機関紙、人民日報の署名記事の中で、中国の謝鋒 駐米大使は、台湾問題と人権問題が中国にとって「レッドライン(越えてはならない一線)」だと強調した。中国の主権、安全保障、発展の利益は侵害されてはならず、台湾問題、民主主義と人権、政治体制と発展の道筋、そして発展の権利という4つのレッドラインへの挑戦は断じて許されないとした。
中国の謝鋒駐米大使 は米中首脳会談を前に人民日報に寄稿し、台湾問題が両国間で越えてはならない「レッドライン」の一つだと改めて強調した。(公式サイトより)
今日、中国政府の自信の源泉となっているのは、貿易の多角化を実現し、米国市場への依存度を大幅に引き下げ、同時に技術的に自立する能力を構築したことにほかならない。海外メディアの目には、これらはすべてトランプ氏の1期目における強力な圧力によって加速されたものと映っている。中国は国家の力を総動員し、ロボティクス、AI、バイオテクノロジー、航空・宇宙、新エネルギー、半導体などの分野へ巨額の資金と政治的期待を注ぎ込み、関連技術を工業生産ラインへと応用している。
内需の低迷と若年層の失業率問題 前述のように多くの肯定的な見方が存在する一方で、この経済成長の果実は決して均等に分配されてはいない。中国の若年層失業率は直近で過去最高水準に達しており、フードデリバリーや配車アプリなどの「ギグ・エコノミー」に生計を依存する数億人の労働者が、マクロ経済全体における最大のリスク要因となっている。さらに個人消費は依然として低迷し、地方政府が債務圧力に直面しているほか、不動産市場の危機も引き続き拡大している。
習氏の今回の外遊では、AIのリスクに関する世界的な議論にも直面することになる。トランプ氏はこれまでに、米政府は(AI開発において)中国を打ち負かすことに全力を注がねばならず、米国は安全保障上の問題を理由に開発の歩みを遅らせるべきではないと公言した。清華大学戦略・安全保障研究センターの孫成昊上席研究員は、中国は経済および技術面での関係においてより高い予測可能性を求めており、台湾問題や技術規制などの敏感な議題が二国間関係を破壊するのを防ぐため、より確固たる政治的確約を得たいと考えていると指摘した。
米中両国の国旗。(AP通信)
実際のところ、中国側が米政府の新たな規制を過激すぎると判断した場合、2025年のあの深刻な対立と衝突を再び引き起こす可能性が高いということを、米中両国とも十分に理解している。 当時、米国が中国企業のブラックリスト追加を大幅に拡大する計画を立てた後、中国側は戦略的な要衝であるレアアースの輸出規制拡大で威嚇し、最終的に双方を休戦合意へと導いた。
元米国駐香港総領事でアジア・グループ・マネージング・パートナーのカート・トン(Kurt Tong)氏は、前述の貿易摩擦における休戦協定が延長される可能性は高いとみている。双方が「勝者なき互角」の状況にある中、ともに慎重な姿勢を崩さないとの見込みだ。同氏の見解によれば、経済分野において米中双方が拮抗したけん制力を有しているため、互いに自制を働かせ、多大な代償を伴う結果を回避しようとしている。そして現在のトランプ氏は、習氏を屈服させることが可能な対象としてではなく、対等な競争相手として見なしているという。
米調査機関、ピュー研究所( ピュー・リサーチ・センター)が7月に発表した世論調査結果によれば、対象となった36カ国のうち、過半数の国の人々が、米国よりも中国に対して肯定的でポジティブな見方を抱いていることが分かった。さらに、市民からの信頼度という点においても、習氏はトランプ氏をわずかながら上回った。米国が果たす世界的役割が変化するとともに、中国はソフトパワーを行使する能力も向上させている。多くの国において、ビジネス界で中国のAIモデルが活用され、中国ブランドのEVが登用されている。また、「ラブブ(Labubu)」のキャラクター人形や中国ドラマなどのトレンドが、中国への興味と観光ブームをけん引している。
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