【花蓮洪水から1年⑤】なぜ再耕作は進まないのか 「重度被災地」指定に揺れる光復郷、農地と生計の行方

2026-09-26 11:13
馬太鞍渓の越流後、大量の土砂が農地に堆積し、光復郷の農家は再耕作の見通しが立たない厳しい状況に置かれている。(方儉撮影)
馬太鞍渓の越流後、大量の土砂が農地に堆積し、光復郷の農家は再耕作の見通しが立たない厳しい状況に置かれている。(方儉撮影)

2009年、台風8号(モーラコット、台湾では「八八水害」と呼ばれる)で高雄の小林村が集落ごと壊滅した際、当時の馬英九政権は仏教慈善団体の慈済や鴻海(ホンハイ)精密工業など民間の力を借り、高雄にある台湾糖業(台糖)の月眉農場に被災者を集団移転させた。

その16年後に起きた馬太鞍渓の越流災害で、民進党政権は高規格堤防と「第2防衛線」の整備を進め、光復郷の1万人を超える住民について、集団移転ではなく治水によって安全を確保する道を選んだ。しかし、土砂に埋もれた被災地の農地770ヘクタールは、災害から1年たっても再耕作は遅々として進んでいない。

農業部(日本の農林水産省に相当)花蓮区農業改良場(花蓮農改場)がこれまでに転作を支援した農地は、6ヘクタール足らずにとどまる。同じ被災地の復興でありながら、花蓮・光復ではなぜ1年がたっても、自分たちの「永齢農場」が見えてこないのか。(永齢農場は、鴻海グループの永齢社会福利慈善事業基金会が台糖月眉農場内に設けた有機農業園区で、モーラコット台風の被災者に就業機会を提供し、有機農業による生活再建を支援した。)

小林村には永齢農場、光復の農家には「上に報告します」だけ

2026年5月、台湾民衆党の立法院党団(国会議員団)が光復の被災地を訪れ、復興の状況を視察した。協議会の場では、住民から「現地の支援拠点に何度も陳情に行ったが、『上に報告します』と言われただけで、その後は何の音沙汰もない」との声が上がった。

「農地再生」計画を待ち続けていた農家もいたが、工事の担当部門は、泥が50センチ以上積もった「重度被災地」を、そのまま「植林」や「記念公園」に充てる方針を示した。農家からは「こんな政策は、農地の耕作放棄を宣告するのと同じだ。農民は何世代にもわたって暮らしを支えてきた土地を手放さざるを得なくなる」と訴える声が出た。

「人災の後に、政府からさらに追い打ちをかけられたようなものだ。もともとは何とか持ちこたえていたのに、今はもう息をする力も残っていない。土地を売るしか道はない。これでは私たちを死に追いやるのと同じではないか」

土砂に埋もれた農地770ヘクタールの被害は、高雄・小林村の集落消滅と同列には論じられないかもしれない。それでも、農家の生計を支える農地の再生に農政当局がこの1年どう取り組んできたかを見ると、花蓮農改場は光復の複数の農地に実証田を設け、泥の堆積の程度に応じて段階的に土壌を改善したうえで、緑肥をまき、冬作を植え付けた。

2026年3月には光復で「再耕作実証説明会」を開き、災害復興調整会議の執行秘書を務める陳金徳政務委員が、農家の育てた大根を手に写真に収まり、「希望と春が見えた!」と語った。 (関連記事: 【花蓮洪水から1年①】「シャベル超人」が去った後も災害は終わらない 砂塵と「警報疲れ」に直面する光復郷 | 関連記事をもっと読む )

立法院経済委員会は2026年5月4日、花蓮県光復郷を訪れ「馬太鞍渓せき止め湖災害の復旧・復興事業」を視察した。花蓮県政府の各部局が説明にあたり、復旧は交通、治水、農業、被災者の生活支援など多方面にわたるため、中央と地方の協力が欠かせないと訴えた(花蓮県政府提供)
立法院経済委員会は5月4日、花蓮県光復郷を訪れ、「馬太鞍渓せき止め湖災害の復旧・復興事業」を視察した。花蓮県政府の各部局は、復旧・復興には交通、治水、農業、被災者の生活再建など多方面にわたる取り組みが必要で、中央政府と地方政府の連携が欠かせないと説明した。(花蓮県政府提供)

農業部農糧署は当時、2026年の第1期作で畑作物約68ヘクタールの再耕作が可能になると見込み、今後は実証事業の成果を広げるとともに、農機サービスを組み合わせて再耕作面積を段階的に拡大し、被災農地に活気を取り戻すとしていた。花蓮農改場も「馬太鞍渓被災地農業生産環境再建プロジェクト」を立ち上げ、2年で300ヘクタールを目標に、農家の早期再耕作を後押しするとしていた。

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