【花蓮洪水から1年④】光復郷の未来を誰が決めるのか 200ヘクタール超の土地取得計画、「トップダウン」の復興に住民反発

2026-09-25 11:13
馬太鞍渓では現在、土砂の浚渫が崩落の速度にまったく追いついていない。地元からは、今後さらに土地を収用して土砂の仮置き場にするのではないかとの疑問の声が上がっている。(方儉撮影)
馬太鞍渓では現在、土砂の浚渫が崩落の速度にまったく追いついていない。地元からは、今後さらに土地を収用して土砂の仮置き場にするのではないかとの疑問の声が上がっている。(方儉撮影)

台湾・花蓮県の馬太鞍渓でせき止め湖が越流した災害から、まもなく1年を迎える。行政院(内閣に相当)の陳金徳政務委員が主宰する「災害復興調整会議」は8月、「一心・一林・二低地・双網」と名付けた復興ビジョンを打ち出し、141ヘクタールの植林による再生を進める方針を示した。しかし、地元住民からはすぐに反発が起きた。

経済部水利署による馬太鞍渓の河川整備と合わせると、収用が必要な土地は200ヘクタールに上る。「川に土地を返す(還地於河)」政策を進めるかどうかも、いまだ決まっていない。これほど大規模な土地収用でありながら、中央と地方の間で十分な意思疎通が図られた形跡はなく、台湾人権促進会(台権会)などの市民団体は、政府の復興計画が「ブラックボックス」になっていると批判している。

2025年9月23日、馬太鞍渓のせき止め湖の越流に伴う土石流により、光復郷の住民19人が犠牲となった。国民党と民進党は、内政部が示した「2階以上への垂直避難」という基準をめぐって、現在も論争が続いている。卓栄泰行政院長(首相に相当)が被災地を訪れて最初に口にしたのも、「地方政府は検証する必要がある」という言葉だった。中央政府は災害後の最初の1週間、頼建信経済部次長(副大臣に相当)を現地に常駐させただけで、軍の動員が必要だと分かってから、ようやく季連成政務委員が陣頭指揮に乗り出した。

270億台湾ドルの特別予算、執行は3割に届かず 南岸の堤防を先行発注

災害復興を進めるため、行政院は2025年11月に270億台湾ドル(約1340億円)の特別予算を編成した。行政院公共工程委員会(工程会)のウェブサイトによると、2026年7月までの執行額は76億2300万台湾ドルで、執行率は29.82%にとどまる。このうち、光復郷の1万人余りの住民の安全に直結する馬太鞍渓南岸の「第2防衛線」の一体的な整備工事は、第1工区と第2工区を合わせて20億台湾ドル(約99億円)を超える堤防工事が、すでに急ピッチで発注された。第1工区は2027年の出水期前、第2工区は2026年末までの完成を目指している。

水利署が南岸の「第2防衛線」を急ぐ最大の理由は、馬太鞍渓上流のせき止め湖一帯に、なお2億4000万立方メートルの不安定な土砂が残っていることだ。それは光復郷の市街地の真上にぶら下がる「ダモクレスの剣」のようなものだ。水利署は「台風が2回続けて襲来すれば、河道にさらに10メートルの土砂が堆積する恐れがある。第2防衛線は、第1線の堤防を水が越えても、光復郷の市街地に再び浸水しないようにするためのものだ」と説明している。 (関連記事: 【花蓮洪水から1年①】「シャベル超人」が去った後も災害は終わらない 砂塵と「警報疲れ」に直面する光復郷 | 関連記事をもっと読む )

行政院の陳金徳政務委員が主宰する「災害復興調整会議」は8月、「一心・一林・二低地・双網」の復興ビジョンを打ち出した(資料写真、行政院公共工程委員会提供)
行政院の陳金徳政務委員が主宰する「災害復興調整会議」は8月、「一心・一林・二低地・双網」の復興ビジョンを打ち出した。(資料写真、行政院公共工程委員会提供)

ただ、馬太鞍渓の整備が左右するのは、南岸の光復郷に暮らす1万人超の住民の生命と財産だけではない。北岸にある鳳林環境保護科技園区(22ヘクタール)と鳳林エコ・レクリエーション園区(48ヘクタール)の今後の企業誘致や開発にも影響する。せき止め湖の越流後、馬太鞍渓の川床はすでに両岸より高い「天井川」になっている。水利署は現段階では南岸の光復など人口密集地で堤防の新設・補強を進めているだけで、北岸の堤防を一部撤去して洪水と土砂を受け止める遊砂地を確保するのか、さらには「川に土地を返す」政策を進めるのかについては、いまだ結論が出ていない。

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