国民民主党の玉木雄一郎代表は30日、日本記者クラブで記者会見を開き、今月6日の臨時党大会で代表3期目を迎えたことを受けて、今後の党運営や10月5日開会の臨時国会に臨む基本方針を表明した。
玉木代表はこの任期を「政権準備期間」と明確に位置づけ、2028年7月の参議院選挙で野党第一党を目指す方針を掲げた。国会において与党が衆議院で多数を占める一方、参議院では過半数を割り込んでいる現状を踏まえ、参議院で25議席を有する国民民主党として「対決より解決」を基本理念に据え、与野党を問わず政策本位で建設的な合意形成を主導していく姿勢を鮮明にした。
「政権準備期間」掲げ組織拡大へ 2028年参院選で野党第一党目指す
会見冒頭、玉木代表は2020年9月に衆参15名で立ち上げた同党が丸6年を迎えたことに言及した。現在では国会議員53名、地方自治体議員390名を擁するまでに拡大した歩みを振り返りつつ、結党時に立憲民主党へ合流しなかった理由を説明した。
原発ゼロや平和安全法制違憲論といった安全保障・エネルギー政策の基本方針において、政権を担う政党として現実的な路線を維持する必要があった点、また世界的に広がる他者攻撃や分断の政治スタイルを排し、対立から止揚(アウフヘーベン)し、合意形成を目指す政治スタイルを確立したかった点を挙げた。
今後は2027年春の統一地方選で地方議員を700人に倍増させる計画「ロード・トゥ・セブンハンドレッド」を推進し、全国で足腰の強い組織を構築して国政での影響力を高めていく意欲を示した。
外交安全保障に関しては、先日訪問したウクライナ情勢について詳細に報告した。超党派の日ウクライナ友好議連の一員としてポーランド経由の夜行列車でキーウに入り、滞在中に8回の空襲警報が鳴り響き、戦死した兵士の葬列を目の当たりにするなど、戦争の過酷さを直接体感したと述べた。
戦況については、時速500キロから600キロで飛行するジェットドローンがロシア軍の主流兵器となり、迎撃率が従来の9割以上から6割近くに低下している窮状を伝えた。その上で、防衛装備移転三原則などの制約がある日本としても、ドローン関連の技術協力や、ロシアと連携する北朝鮮に対抗するための実戦データの共有など、最前線との実効的な防衛協力が不可欠であると強調した。
また、高市政権の対露外交を批判し、択捉島へのプーチン大統領上陸に対する毅然とした措置の欠如や学生派遣の動きを挙げ、「中国に厳しくロシアに甘い外交はあり得ない」と述べ、力による現状変更を許さない日本の揺るぎない支援姿勢を明確に示すべきだと説いた。
食料品の消費税減税に反対 「インフレ調整」で手取り増を訴え
臨時国会の主要論点となる飲食料品の消費税減税については、「筋の悪い政策であり、やめた方がよい」と反対の姿勢を明言した。2年限定の減税のためにレジ改修費1100億円や給付事務費6000億円、農家・外食支援など莫大な関連支出が伴う制度の複雑さを指摘し、物価高対策としての実効性に疑問を呈した。
最大の懸念として、2029年4月に税率が1%から8%へ一気に7ポイント引き上げられる大幅増税を挙げた。政府が導入を検討する給付付き税額控除の対象所得基準が極めて不透明であり、年収300万円を超える現役世代・中間層への支援策が欠落したまま大増税に直面すると警告した。
その代替案として、急を要する物価高対策であるならば、1人あたり年間3万6000円相当の負担軽減額をデジタル給付を活用して速やかに支給すべきだと提言した。また、過去最高を更新し続ける税収の上振れを背景に、インフレや賃上げに合わせて所得税や住民税の基礎控除を引き上げる「インフレ調整」を導入し、手取りを増やすべきだと主張した。
衆議院の議員定数削減をめぐっては、削減自体に反対はしないとしつつも、自民党と日本維新の会が主導する比例代表中心の45議席削減案は、野党側の議席のみを削る「変形されたゲリマンダー」になりかねないと懸念を表明した。定数削減は選挙制度改革と一体で、人口減少などの客観的な根拠に基づいて丁寧な合意形成を図るべきだと訴えた。
現在、衆院議長のもとの超党派協議会において、次期総選挙に向けた中選挙区連記制などの抜本改革と、早期解散に備えた現行制度の手直しという2つのトラックを同時に走らせる合意が進みつつあることを紹介し、拙速な単独処理を牽制した。
連立参加には慎重姿勢 2028年参院選を「天王山」に
政局運営や他党との関係については、中道勢力の分立や民主改革の会の動きなど、年末にかけて政界再編の新たな動きが生じる可能性に言及し、「終わりの始まりのような状況」との認識を示した。
昨年末に高市首相と年収の壁引き上げで合意した経緯を振り返りつつも、総選挙を経て争点化された消費税減税など基本政策で隔たりがある以上、連立政権への参画を議論する段階にはないと言明した。衆議院で与党が多数を握る現状では交渉力に限界があることを認め、2028年参院選を天王山と位置づけて全資源を投入し、野党第一党となってキャスティングボートを握り直す戦略を提示した。
さらに重点分野として、現役世代の負担を抑制する社会保障制度改革や、政府が分野を細かく指定する補助金行政の失敗を回避した上でのエネルギー自給、デジタル赤字対策、生命科学や再生医療を中心とする健康長寿(ロンジェビティ)への集中投資を提言した。
質疑応答では、2025年秋に首班指名を受ける機会があったのではないかとの問いに対し、立憲民主党幹事長からの打診に触れつつも、安全保障やエネルギー政策で一致しないまま野党が結集しても政権は崩壊を免れなかったと振り返った。憲法改正や安保問題をタブー視して野党が自ら分裂を繰り返す構造的課題を打破することが不可欠だと強調した。
党の発信力が玉木代表や榛葉賀津也幹事長に集中しているとの指摘に対しては、証券・運用会社出身の原田秀一参院議員による国債NISA提案などを例に挙げ、専門性を持つ多様な若手議員の前面登用を進めて無党派層の支持を獲得していく考えを示した。
北方領土問題については、ウクライナ要人との間でもロシアによる不法占拠地域としての共通認識を確認したことを明かし、かつての二島先行返還論は現実的ではなく、四島の帰属問題を明らかにして平和条約を結ぶという「四島返還論」の原点に立ち返るべきだと述べた。
定数削減の具体案としては、人口100万人あたり定数3の中選挙区連記制を全国120選挙区に配置して総定数を360人に削減する党独自の試算を示し、地方の声を国政に反映させるための憲法改正を含めた丁寧な議論を呼びかけた。