【北京観察】台湾有事で中国は何を動員できるのか 16年ぶり「国防動員法」改正、データ・先進技術も法的枠組みに

米中の戦略的競争は両国関係を変化させただけでなく、台湾を双方の駆け引きと争奪の焦点にしている。台湾を念頭に置いた大規模な水陸両用作戦演習は、両岸の敵対感情を高め、台湾海峡をめぐる米中の対立を連鎖的にエスカレートさせる恐れがある。(写真/新華社)
米中の戦略的競争は両国関係を変化させただけでなく、台湾を双方の駆け引きと争奪の焦点にしている。台湾を念頭に置いた大規模な水陸両用作戦演習は、両岸の敵対感情を高め、台湾海峡をめぐる米中の対立を連鎖的にエスカレートさせる恐れがある。(写真/新華社)

中国の全国人民代表大会常務委員会は8月28日、改正「国防動員法」を可決した。同法が2010年に施行されて以来、16年ぶりとなる大幅な改正で、10月1日に施行される。

改正法は初めて「国防動員」を法律上明確に定義した。国家の主権、統一、領土保全、安全および発展の利益が脅かされた場合、国家が法に基づき必要な措置を講じ、平時から戦時への迅速な転換を保障し、経済・社会の力を国防力へと転換する活動を指す。同時に、先進技術の活用や新興分野の国防動員力も法的枠組みに盛り込まれた。

企業や研究機関、データから先端技術、新興産業まで、今後はより包括的な「平時に整備し、戦時に転換する」体制に組み込まれていく可能性がある。

中国の地方「国防動員弁公室」はすでに先行 日常的な緊急対応訓練の一部に

​現行の「国防動員法」は2010年7月に施行され、すでに16年が経過した。指導・管理体制や軍と地方の職務分担などの面では、軍改革後の実態との間にずれが生じていた。

2021年には、全国人民代表大会常務委員会が改革期間中、関連する法律規定の適用を暫定的に調整することを決定した。

組織面での調整はそれよりも早く進んでいる。2022年末から2023年にかけて、各省・市・県レベルで「国防動員弁公室」が相次いで設置され、その多くは従来の人民防空弁公室を母体として運営されている。当局は当時、これによって地方行政システムと軍事システムの間に、より恒常的な業務連携が形成されたと総括した。

河北省が今年7月7日、国防に関する警戒業務についての注意喚起メッセージを発信した。(田暢提供)
河北省が今年7月7日に配信した、国防に関する注意喚起のショートメッセージ。(写真/田暢提供)

重要な歴史的出来事や記念日になると、中国各地の国防動員弁公室はショートメッセージを送り、住民にその日が何の日であるかを知らせる。日本の終戦の日や台湾光復節などには防空警報が鳴らされることもあり、現場では担当者が資料を配布して啓発活動を行っている。

「国防動員の潜在力」から「経済・社会の力」へ 北京が広げる動員の射程

​これまで国防動員といえば、徴兵や物資の徴用、交通・輸送、医療救護といった従来型の項目が連想されやすかった。しかし改正法では、「経済・社会の力」を国防力へと転換することが、国防動員の概念に直接盛り込まれた。

ロシア・ウクライナ戦争で見られた長期の消耗戦、無人機の大量運用、衛星・通信システム、軍需産業の生産能力、エネルギー、輸送、そして民間テクノロジー企業による支援能力は、「一つの国家がどれだけの資源を動員できるのか」という問題を、改めて軍事力の重要な構成要素として浮かび上がらせた。

そのため、今回の改正で新たに盛り込まれた「国防動員における先進技術の活用を推進し、新興分野の国防動員力を発展させる」という規定の意味は、単にいくつかの新しい言葉を加えたことにとどまらない。科学技術と産業能力を、国家安全保障における動員の法的枠組みに組み込むものでもある。 (関連記事: 【北京観察】中国「民族団結促進法」7月施行へ 台湾にも及ぶ「域外適用」に懸念 関連記事をもっと読む

ただし、改正法は人工知能(AI)、無人機、ロボット、低軌道衛星といった具体的な産業について、動員方法を個別に列挙しているわけではない。

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