【SEMICON Taiwan 2026】Merck、薄膜事業トップを台湾へ ハイン氏「台湾のR&D投資は増やす」
SEMICON Taiwan 2026でメルクは、半導体産業の「統合ソリューションパートナー」への転換を進める戦略を示した。左から、グローバル戦略顧客管理・ビジネスエクセレンス運営担当シニアバイスプレジデント兼台湾メルクグループ会長の李俊隆(リー・ジュンロン)氏、メルクグループ取締役会(経営執行委員会)メンバー兼エレクトロニクス・ビジネスCEOのベンジャミン・ハイン(Benjamin Hein、賀天銘)氏、エレクトロニクス・ビジネス薄膜事業部門責任者兼エグゼクティブ・バイスプレジデントのビン・ハン(Bin
世界の先端半導体製造の重心がアジアに集中する中、材料大手も技術・意思決定人材を顧客に近い場所へ移す動きを加速させている。ドイツのメルク(Merck KGaA、フランクフルト証券取引所:MRK)のメルクグループ取締役会(経営執行委員会)メンバー兼エレクトロニクス・ビジネスCEO、ベンジャミン・ハイン(Benjamin Hein、中国語名:賀天銘)氏は3日、メルクが従来欧米に配置していた一部の職務や人員を段階的にアジアへ移していると明らかにした。その一環として、エレクトロニクス・ビジネスで薄膜事業部門を統括するエグゼクティブ・バイスプレジデント、ビン・ハン(Bing Han、中国語名:韓冰)氏が、来月、米カリフォルニアから台湾へ転居する予定だという。技術開発、顧客検証、意思決定までの距離を縮める狙いがある。
ハイン氏は、今回の組織再編が研究開発リソースの縮小を意味するものではないと強調した。「台湾におけるイノベーションと研究開発への投資は、増えることはあっても減ることはないと考えてほしい」。こうした布陣は、メルクのグローバルな電子材料事業における台湾の役割が、生産・供給拠点から、研究開発、技術的な意思決定、戦略顧客との協業拠点へとさらに広がりつつあることを示している。
薄膜事業トップが来月、カリフォルニアから台湾へ転居
メルクは同日、「SEMICON Taiwan 2026」の会場で記者会見を開き、ハイン氏、ハン氏、グローバル戦略顧客管理・ビジネスエクセレンス運営担当シニアバイスプレジデントで台湾メルクグループ会長を兼ねる李俊隆(リー・ジュンロン)氏が出席した。
ハイン氏は今年5月1日にエレクトロニクス・ビジネスCEOに就任して以降、新たな組織再編を進めている。李俊隆氏は7月1日付でグローバル職務を兼任し、大手の戦略顧客をめぐる事業部門横断の統合を担っている。
ハン氏は、現在は米カリフォルニアに居住しており、これまで台湾を50回以上訪れてきたが、来月には正式に台湾へ転居すると述べた。ハイン氏は、この人事は一人の幹部の勤務地変更にとどまるものではなく、メルクが技術力と意思決定機能を顧客により近い場所へ移そうとする取り組みだと説明した。
ハイン氏が組織改革を推進 顧客との距離を縮め、スピードと協業を強化
ハイン氏は、今回の組織再編は主に3つの原則に基づいていると説明した。第一は、顧客を中心に据えることだ。世界で最先端の半導体製造を手がけられる企業の数は限られており、材料メーカーが先端プロセスの開発に関わるには、仕様を受け取ってから製品を納入するだけでは不十分で、より早い段階から顧客とともにプロセス上の課題解決に取り組む必要があるという。
第二の原則はスピードの向上だ。ハイン氏は、半導体は一つの国に閉じた産業ではなく、グローバルな分業体制と国境を越えたサプライチェーンを持ち、独自のサイクルで動く産業だと述べた。サプライヤーは顧客のニーズに応えるだけでなく、そのニーズを実際に導入可能な材料、装置、プロセスソリューションへと迅速に転換する必要があるという。
第三は社内協業の強化だ。メルクは近年、薄膜材料、特殊ガス、パターニング、平坦化、材料デリバリー、計測・検査など多岐にわたる能力を蓄積してきた。しかし、これらの技術が異なる事業部門に分散したままでは、全体としての効果を十分に発揮しにくい。このため、部門間の垣根をさらに取り払う必要があるという。
ハイン氏は、メルクが取引する先端半導体顧客が最も重視する2つの指標は、歩留まりと市場投入までのスピードだと述べた。チップアーキテクチャーが複雑化するほど、サプライヤーが異なる技術を迅速に統合できるかどうかが、顧客の検証スケジュールや量産の進捗に直接影響するという。
管理階層を簡素化し、社内会議の時間を顧客へ
意思決定を迅速化するため、メルクはエレクトロニクス・ビジネスの管理階層の簡素化にも着手している。ハイン氏は、管理階層が増えれば通常は社内会議も増えるが、会社としては、その時間を社内調整ではなく、顧客とともに価値を生み出すことに充てたいと述べた。
組織の簡素化は効率を高め、チームが顧客ニーズにより迅速に対応できるようになると同氏は説明した。一方、メルクは規模の大きな企業であるため、改革を進める際には、改革の幅と組織が受け止められる範囲との間でバランスを取る必要があるという。同氏は再編後のチームに自信を示し、会社の戦略を継続的に実行できる「ファイブスター・チーム」だと表現した。
ハイン氏はまた、管理階層の簡素化はイノベーションへの投資削減を意味するものではないと強調した。むしろメルクは、技術開発や外部との協業をさらに強化し、意思決定を担える人材を、主要顧客や半導体製造の集積地の近くにより多く配置していく方針だという。
李俊隆氏がグローバル大手顧客を統括 事業部門単位から横断統合へ
技術部門の責任者をアジアへ移すのに加え、メルクは大手の戦略顧客に対する管理体制も見直している。李俊隆氏は、重要な半導体顧客とメルクとの取引は、通常、単一の製品や事業部門にとどまらず、薄膜材料、特殊ガス、パターニング、平坦化、材料デリバリー、計測・検査など複数の領域にまたがっていると説明した。
李俊隆氏は、メルクがすべての顧客を同じモデルでカバーすることはできないとしたうえで、複数の事業部門にまたがる取引を持つ大手の戦略顧客については、自身のチームが一元的に管理し、顧客側がメルク社内の異なる部門間を自ら調整する必要がないようにすると述べた。
ハイン氏はさらに、顧客は同じ会社でありながら事業部門によって品質水準が異なることを受け入れないほか、大口顧客も製品ごとに異なる複数の契約へ対応することを望んでいないと指摘した。このためメルクは、品質基準を統一し、契約やサービス窓口を簡素化することで、部門横断の協業を一つの統合チームに近い形へと変えていきたい考えだ。
台湾、製造拠点から技術・顧客協業の中心へ
メルクは最近、台湾で5億ユーロ規模の半導体材料投資を完了し、薄膜材料、特殊ガス、フォーミュレーション材料などの現地生産能力を拡充した。しかし、今回の組織再編は、メルクの台湾での事業展開がもはや製造規模の拡大だけにとどまらず、研究開発、技術的な意思決定、戦略顧客管理の機能も台湾へ移し始めていることを示している。
ハン氏が来月台湾へ転居し、李俊隆氏がグローバル戦略顧客管理の職務を担うことで、メルクは材料開発、顧客ニーズ、社内の意思決定を、先端プロセスの生産現場により近い場所へと移そうとしている。
半導体のイノベーションのスピードが加速する中、材料メーカーが国境や部門をまたぐ意思決定プロセスをどれだけ短縮できるかも、先端プロセスのビジネスチャンスを獲得するうえで、新たな競争上の要件となる。
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