AIデータセンターでは高帯域幅メモリー(HBM)が大量に採用されるだけでなく、DDRモジュールや低消費電力DRAM、高性能SSDの需要も同時に押し上げられている。一方、自動車やロボットなどのエッジ機器でも、より高い帯域幅と低消費電力が求められており、メモリーの生産能力をめぐってクラウドとエッジの双方で取り合いが起きている。
マイクロン・テクノロジー(Micron Technology、NASDAQ:MU)の社長兼最高技術・製品責任者(CTPO)、スコット・J・デボア(Scott J. DeBoer)氏は2日、「SEMICON Taiwan 2026」のマスターズ・フォーラムで、今後数年間にわたり世界のメモリー市場は「深刻な供給不足」の状態が続くとの見方を示し、効率改善だけで新たな生産能力の増強を代替することはできないと述べた。
デボア氏によると、メモリーはこれまで比較的単純で、時にはコモディティ(汎用品)として扱われる部品とみなされてきた。しかし、AIによってシステム設計のあり方が変わり、現在ではメモリーがAIシステムの規模、効率、最終的な性能を直接左右するようになっているという。「AIの拡張スピードは、メモリーのスピードによって決まる」と同氏は述べた。
HBMの帯域幅は「馬力」、容量は「燃料タンク」、放熱は「タイヤ」
デボア氏は、HBMの3つの重要な要素を自動車にたとえた。帯域幅はエンジンの馬力に相当し、容量は燃料タンク、放熱はタイヤのようなものだという。帯域幅を高めるには、演算を継続するためにより大きな容量も必要になる。帯域幅と容量の双方を確保しても、ロジックチップやDRAMダイ、積層構造から熱を逃がすことができなければ、システムは十分な性能を発揮できない。
デボア氏は、この1年で放熱が急速にHBMの帯域幅ロードマップを制約する要因になってきたと指摘した。顧客や用途によって熱源の分布が異なるため、メモリーダイや積層構造はシステムと一体で設計する必要があるという。下層のロジックチップから上部の冷却機構まで、いかに熱を伝えるかも、HBM4E、HBM5、HBM5E、その先の垂直積層製品の開発に影響する。
需要はHBMだけに集中しているわけではない。AIデータセンターでは、モデルやKVキャッシュ、異なるメモリー階層を支えるため、高密度DDR DIMMや低消費電力DRAMモジュールも必要となる。ここ数年、一時は成長性を疑問視されていたNANDも、高性能データセンター向けSSDの需要が急速に増えたことで、AIストレージアーキテクチャーの重要な一角となっている。このため、AIデータセンターを増強する際には、単一のメモリー製品だけでなく、HBM、DRAMモジュール、SSDの需要が同時に増える。
自動車やロボットも、もう一方からメモリー生産能力を争う
データセンターだけでなく、自動車やロボット、その他のエッジAI機器で求められるメモリースペックも高まっている。デボア氏は、エッジ側でも同様に帯域幅が求められる一方、消費電力の制約やコスト構造はデータセンターとは異なるため、メモリーメーカーは異なるアーキテクチャーや製品を開発し、それに対応する生産能力を配分する必要があると指摘した。データセンターの需要によってすでにDRAM供給が逼迫する中、エッジ用途の複雑さも同時に増しており、生産能力計画にかかる圧力は今後も拡大するとみている。
同氏は、ソフトウェアの最適化やメモリーデバイス当たりの実効帯域幅を高めることで、AIの単位出力当たりのコストを引き下げることは可能だとする一方、「世界全体では依然として供給が大幅に不足している」と指摘し、新たな生産能力の増強は避けられないとの見方を示した。
新たな生産能力が順次立ち上がるまでの間、業界にとって短期的により差し迫った課題は、既存メモリーの利用効率を高めるとともに、コンピューティング、パッケージング、システム各社と共同で帯域幅と放熱のボトルネックに対処することだという。
デボア氏は、AI時代のメモリーはもはや演算チップに付随する部品ではないと述べた。HBMからDDR、低消費電力DRAM、SSDに至るまで、各製品にどのように生産能力を配分し、帯域幅を高め、熱密度を制御するかが、AIデータセンターをどれだけ速く拡張できるかを直接左右する。また、自動車やロボットなど、次の波となるエッジAI製品が順調に量産を拡大できるかどうかも、それによって決まることになる。
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp
編集:梅木奈実 (関連記事: 【SEMICON対談】TSMC、AI需要で必要な装置台数が半年で1.9倍 台湾13工場・世界約20工場を同時建設も「なお足りない」 | 関連記事をもっと読む )















































