ヘビースモーカーの猫を主人公にしたアニメ作品が、台湾でたばこ規制や表現の自由、動画配信プラットフォームの責任をめぐる議論を呼んでいる。
8月下旬以降、台湾の保健当局は、15歳以上向けの深夜アニメ『ヤニねこ』について、実在するたばこ銘柄が繰り返し大写しになる場面を削除するか、ぼかし処理を施すよう求めてきた。台湾の複数の配信プラットフォームが同作の配信を全面的に取りやめる一方、Netflixは当局が求める修正を行わないまま、新たなエピソードの配信を続けている。

『ヤニねこ』のたばこ描写に正式申し立て 台湾当局が審査
『ヤニねこ』は、ヘビースモーカーという設定の擬人化された猫を主人公とする作品だ。識別可能なたばこのパッケージが、ぼかし処理なしで頻繁に大写しになる点が台湾の禁煙運動団体の問題意識を呼び、董氏基金会(John Tung Foundation)が正式に申し立てを行った。これを受け、衛生福利部(保健省)が審査に乗り出した。
石崇良・衛生福利部長(保健相)は8月21日、記者団に対し、「この作品は確かに規定に適合していない」と述べた。ぼかし処理が施されていないたばこ銘柄の大写しが複数あるほか、台湾の菸害防制法(たばこ被害防止法)が求める健康警告表示のない喫煙シーンがあると指摘した。
同法に違反した事業者には、最大100万台湾ドル(約500万円)の罰金が科される可能性がある。

台湾の配信各社は取り下げ Netflixは未修正で配信継続
「バハムートアニメ瘋(巴哈姆特動畫瘋)」やAni-One Asiaなど台湾の配信プラットフォームは、董氏基金会による申し立てと衛生福利部の審査を受け、同作を配信ラインナップから取り下げた。
一方、世界同時配信の一環として毎週ノーカット版を配信してきたNetflixは追随せず、当局が問題視したたばこ銘柄の映像を修正しないまま、新たなエピソードの配信を続けている。
対応が遅れている背景の一つには、Netflixの社内手続きがある。台湾向け配信コンテンツの変更には米国本社の承認が必要で、現地当局からの規制上の要請への対応に時間を要しているという。
創作者の権利団体が反発「たばこの害を描く表現まで否定すべきではない」
一連の配信停止に対しては、台湾のアニメ業界やファンから反発も出ている。
ACGN創作者権益協会は、配信各社による取り下げについて「比例原則に反し、創作表現を萎縮させるものだ」と抗議した。また、調査結果が出る前に、罰則を科される可能性がある中で作品が取り下げられた点も問題視した。
同協会は「たばこの有害な影響に反対することは、その影響を描いた芸術表現に反対することを意味しない」と主張している。
ファンの一部からも、主人公が依存症に苦しむ姿そのものが、喫煙を促すのではなく、むしろ反喫煙のメッセージとして機能しているとの声が上がった。 (関連記事: 台湾で人気のアニメランキングTOP10 『ちいかわ』が首位、『鬼滅の刃』『ONE PIECE』を上回る | 関連記事をもっと読む )
これに対し規制を支持する側は、特定の識別可能なたばこ銘柄を繰り返し大写しにすることは、単にキャラクターの喫煙を描くこととは異なると反論する。こうした映像を修正せずに配信すれば、若年層の視聴者にたばこ銘柄を身近なものとして受け止めさせる可能性があるほか、同様のコンテンツも同じ理由で規制を免れる恐れがあるとして懸念を示している。













































