台湾はAI(人工知能)時代に入り、かつてないほどのテクノロジーの恩恵を受ける一方、「デジタル主権」が徐々に失われつつあるとの懸念も出ている。
最近、台湾通信学会の理事長に就任した前国家通信放送委員会(NCC)委員の王維菁氏は8月21日、台湾メディア『新新聞』のインタビューに応じ、台湾のテクノロジー主権が失われつつあることへの懸念を示した。
王氏は、大規模AIモデルや低軌道衛星などの先端技術をめぐり、台湾には「選択する能力」「代替する能力」「責任を追及する能力」が必要だと強調した。データ、計算資源、モデル評価、人材、民主的ガバナンスによって台湾独自のエコシステムを構築し、GoogleやFacebookなど多国籍企業が掲げる「自主規制」をそのまま受け入れてはならないと指摘する。そうしなければ、台湾は報道や文化の分野でますます弱い立場に置かれるという。
テクノロジー主権と聞いて、台湾で多くの人がまず思い浮かべるのは、「護国神山」とも呼ばれる台湾積体電路製造(TSMC)だろう。
台湾がGPU(画像処理半導体)やサーバーなど、AIを支えるハードウェア分野で重要な役割を担っていることは間違いない。一方で、多国籍企業のAIモデルが急速に市場へ浸透するなか、台湾のデジタル主権は失われ続けているとの指摘もある。
今年初めには「人工知能基本法」が正式に公布され、政府機関に対し、2年以内に関連する下位法令の整備と法制度の調整を完了するよう定めた。しかし、AIの導入・活用に関わる政府調達については、データの所有権や保存に関する規定など、なお制度上の空白が残っている。
「テクノロジー主権」は「デジタル主権」より広い
例えば、高雄市とエヌビディア(NVIDIA)が進めるAI交通・都市ガバナンスの「灯台プロジェクト」は、すでに開始から3年以上が経過している。
同プロジェクトで収集された人流や車流のデータは、事業者と政府のどちらが所有するのか。仮に事業者が所有する場合、政府には緊急時にデータを取得・利用する権限があるのか。「人工知能基本法」の成立後、こうした問題への関連機関の対応力が問われることになる。
台湾通信学会は今月末、「2026テクノロジー主権サミットフォーラム」を開催する。デジタル発展部の林宜敬部長のほか、歴代NCC委員から陳耀祥・前主任委員、詹婷怡氏らが出席する予定だ。NCC副主任委員候補に指名された国立中山大学マーケティング・コミュニケーション管理研究所の蕭蘋教授も招かれている。

国立台湾師範大学「AI倫理・ガバナンスセンター計画」の責任者でもある王氏によると、「デジタル主権(Digital Sovereignty)」とは、国家、組織、個人がデジタルインフラ、データ、技術、意思決定のプロセスを独立して掌握する能力を指す。
一方、「テクノロジー主権」はデジタル主権よりも広い概念で、半導体、計算資源、光海底ケーブル、通信規格、サプライチェーンの安全保障なども含む。




















































