岩波書店から刊行された台湾をテーマにした新刊『旅して学ぶ台湾』が、発売後に大きな反響を呼び、短期間で3刷となった。台湾文化部駐日台湾文化センターは8月29日、紀伊國屋書店新宿本店で出版記念トークイベントを開催し、同書を共同執筆した赤松美和子氏、洪郁如氏、胎中千鶴氏、山崎直也氏、劉彦甫氏の台湾と日本の著者5人が登壇した。
会場では、旅を通じて台湾の歴史や社会への理解を深める視点について語られた。イベントは募集開始からわずか1日で満席となり、当日は立ち見席も設けられるなど、日本の読者の台湾に対する高い関心がうかがえた。
旅を入り口に台湾の歴史と社会を学ぶ
近年、台湾は日本の中高生にとって海外修学旅行先の定番の一つとなっている。一方、日本の教科書で扱われる台湾に関する歴史記述は依然として限られている。
こうした背景から、赤松氏、洪氏、山崎氏ら台湾研究者は2018年、「日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)」を立ち上げた。台湾研究の成果を教育現場で活用できる教材や情報へとつなげ、日本の学生が台湾への理解を深められるよう支援を続けてきた。
『旅して学ぶ台湾』は、こうした理念を受け継ぎ、長年にわたり台湾研究や教育、メディアの現場に携わってきた台湾と日本の専門家5人が共同で執筆した。
先史時代から現代の民主化を経た台湾まで、歴史や社会の変遷を各地のスポットと結びつけ、旅を入り口に分かりやすく解説している。
台湾を理解するための「座標」
同書の「はじめに」と「おわりに」を執筆した一橋大学社会学部の洪郁如教授は、台湾を理解するためには、旅先で目にしたものや、そこで抱いた疑問を整理するための「座標」が必要だと語った。
その発想について、台南にある国立台湾歴史博物館から大きな示唆を得たという。
洪教授は、同館が掲げる「この土地、この民(斯土斯民)」や「出会いの島(相遇之島)」という考え方を起点に、土地と人との関係、さらに異なる人々や文化が台湾で出会ってきた歴史を通じて、現在の台湾がどのように形作られてきたのかを読み解く視点を提示した。
また、こうした視点は長年にわたる台湾研究の蓄積による「諸先輩方から受け継いだ貴重な贈り物」だとし、世代を超えた研究者らとともに成果を一冊の本にまとめ、より多くの日本の読者に届けられることを大変光栄に思うと述べた。
著者5人が薦める台湾のスポット
日本の読者に薦めたい台湾の場所について、5人の著者はそれぞれの専門分野や関心に基づくスポットを紹介した。
洪教授は、本書の中核となる考え方の着想源となった国立台湾歴史博物館を挙げた。日本大学文理学部の赤松美和子教授は台東の八仙洞、元目白大学外国語学部の胎中千鶴教授は阿里山、帝京大学准教授の山崎直也氏は金門島、東洋経済の記者である劉彦甫氏は国立故宮博物院と芝山巌をそれぞれ推薦した。
博物館や史跡、離島、山林など多彩な場所が挙げられ、実際に各地を訪れることで台湾の重層的な歴史を学ぶという本書の趣旨が改めて示された。
日本の出版・読書市場で台湾文化を発信
台湾文化部駐日台湾文化センターは近年、日本の書店流通への働きかけを強化している。
紀伊國屋書店と連携した「台湾月(台湾ブックフェア)」や台湾・日本の作家による交流イベントの開催、SNET台湾と連携した『台湾書旅』の制作などを通じ、日本の出版・読書市場における台湾文化関連の需要を開拓してきたという。
同センターは、今回の『旅して学ぶ台湾』への反響について、日本の読書市場で台湾関連コンテンツへの関心が着実に高まっていることを示すものだとしている。
今後も日本の書店や流通網との連携を続け、より多くの台湾作品や文化コンテンツを日本の読者の日常に届けていきたいとしている。
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編集:梅木奈実


















































