NVIDIA最大の脅威はAMDではなく「顧客」か Google・AnthropicがAIチップ内製化、主戦場は「推論」へ AIチップ市場で不動の首位に立つエヌビディアの地位を脅かすのは、長年の競合、米AMDではなく、日々同社からチップを大量購入している「自陣営の顧客」かもしれない。(AP通信)
米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)は人工知能(AI)向け半導体市場で確固たる地位を築いているが、同社の牙城を脅かす可能性があるのは、長年の競合である米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)ではなく、日々エヌビディアから半導体を大量購入している「顧客」かもしれない。
知識力科技(Ansforce)の曲博CEO( 最高経営責任者)は、台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』の番組『下班国際線』で、米グーグル(Google)が米ブロードコム(Broadcom)との長期的な提携に加え、米マーベル・テクノロジー(Marvell Technology)との協業を拡大している点や、米AIスタートアップのアンソロピック(Anthropic)が独自の半導体開発チームを設立した事実を指摘。AI市場における最大顧客が次々と半導体設計分野に乗り出す中、エヌビディアが直面しているのは、単なる価格競争ではなく、顧客たちの「エヌビディア依存からの脱却」だ。
曲氏の分析によれば、その背景には極めて現実的な理由がある。クラウドサービスプロバイダー(CSP)は大規模なデータセンターを構築する必要があり、数万から数十万個のプロセッサを導入するため、すべての半導体をエヌビディアから調達すれば、そのコストは膨大なものとなる。同氏は番組内で、クラウド事業者が「どれほど利益を上げても、最終的にはエヌビディアに還元される構造になっている」と指摘。そのため、グーグル、米マイクロソフト(Microsoft)、米アマゾン(Amazon)、米メタ(Meta)といった大手IT企業が専用半導体の自社開発を進めるのは、コスト削減と「利益の流出を防ぐ」ことが最大の目的との見方を示した。
AI開発の主戦場は「学習」から「推論」へ移行 番組司会者の路怡珍氏が、エヌビディアにとって最大の競合はAMDなのか、それとも自社の顧客なのかと問いかけると、曲氏は「理論上は自社の顧客だ」と答えた。グーグルなどの巨大企業がデータ処理を自社開発の特定用途向け集積回路(ASIC)やAIアクセラレーターに移行させれば、本来購入されるはずだったGPUの需要を直撃することになるからだ。
推論処理に特化して開発されたグーグルのAIチップ新製品「TPU 8i」 。(中央社)
しかし、エヌビディアが直面するリスクは、顧客のコスト削減の動きにとどまらず、AI産業自体のフェーズの変化にある。曲氏は、過去10年間のAI開発は「学習(トレーニング)」が中心だったが、今後10年は「推論(インファレンス)」の重要性が高まり続けると予測する。モデルの学習にはアルゴリズムの頻繁な修正が伴うため、汎用性と柔軟性に優れたGPUが有利だ。だが、モデルの学習が完了した後の推論プロセスは比較的固定されているため、専用アクセラレーターの方が高い処理効率を発揮する可能性が高い。
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これは、エヌビディアが「最強のGPU」という強みだけで市場を維持し続けるのが難しくなることを意味している。曲氏は、エヌビディアがいかに先進的なGPUを開発したとしても、推論の領域で専用アクセラレーターに対して絶対的な優位性を保つことは困難だと指摘する。そのため、エヌビディア自身も新たなAIアクセラレーター市場に参入せざるを得ない状況にある。クラウドサービスプロバイダーにとって、今後はモデルの学習にはエヌビディアのGPUを使用し、推論プロセスは自社開発の半導体に徐々に移行させるハイブリッド型アーキテクチャが主流になる可能性が高い。
エヌビディア自身もこの市場の変化を認識していると曲氏は述べる。同社はAIアクセラレーター開発の米スタートアップであるグロック(Groq)に投資したほか、今年に入り、同社初となるAIアクセラレーター「言語処理ユニット(LPU)」を発表し、推論時代の市場に向けた布石をいち早く打っている。
米AIスタートアップのアンソロピックが開発した大規模言語モデル「Claude」。(AP通信)
アンソロピックも半導体開発に進出 さらに注目すべきは、従来の巨大クラウド企業ではないアンソロピックまでもが、半導体の内製化を目指している点だ。司会者の路氏によれば、アンソロピックはすでにグーグルのTPU開発人材を引き抜き、自社のコンピューティングチームに迎え入れているという。曲氏は米オープンAI(OpenAI)を例に挙げ、大規模モデル開発企業が自前の半導体やデータセンターを持たない場合、他のクラウド事業者から莫大な計算能力を借り受ける必要があり、インフラ構築にかかる高額なコストが利益を圧迫することになると説明した。
したがって、アンソロピックのようなAI企業にとって、半導体の自社開発はIT企業による単なる技術的探求ではなく、収益力に直結するコスト革命となる。モデル開発企業の規模が拡大し、一度のサービスを投入するたびに数万個のプロセッサを必要とするようになれば、専用半導体を自社で設計し、半導体受託製造(ファウンドリー)業者に 製造を委託することによる経済効果がじわじわと明らかになってくるだろう。
とはいえ、エヌビディアが取るべき最も現実的な戦略は、顧客をつなぎ止めるための大幅な値下げではないと曲氏は見ている。次世代の半導体、最先端の製造プロセス、そしてより強力な製品を継続的に市場へ投入することで、顧客が独自の半導体を保有したとしても、最終的にはエヌビディア製品を再び購入せざるを得ない状況を作り出すことだと結論づけた。
風傳媒の番組『下班国際線』に出演する知識力科技の曲博CEO (右)と司会者の路怡珍氏(左)。(柯承惠撮影)
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