【北京観察】中国「愛国少年」の史料に偽造疑惑 官製メディアも称賛、その裏で浮かぶ「愛国ビジネス」の実態

数名の中国人未成年学生が、自費で旧日本軍の中国侵略に関する史料を収集し、関連資料を記念館に寄贈した。こうした活動は中国の官製メディアにも取り上げられ、ネット上で脅迫を受けたことから警察も介入した。当局側の語りでは、「実際の行動で歴史を心に刻む」少年たちとして描かれている。写真は1937年、日本軍の爆撃で被害を受けた南京市街。イメージ。(資料写真/AP通信)
数名の中国人未成年学生が、自費で旧日本軍の中国侵略に関する史料を収集し、関連資料を記念館に寄贈した。こうした活動は中国の官製メディアにも取り上げられ、ネット上で脅迫を受けたことから警察も介入した。当局側の語りでは、「実際の行動で歴史を心に刻む」少年たちとして描かれている。写真は1937年、日本軍の爆撃で被害を受けた南京市街。イメージ。(資料写真/AP通信)

中国の未成年の学生数人が、自費で旧日本軍の中国侵略に関する史料を集め、関連する資料を記念館に寄贈した。こうした行動は官製メディアでも大きく報じられ、ネット上で脅迫を受けたとして警察が介入する事態にもなった。当局側の語りの中で、彼らは「実際の行動で歴史を心に刻む」少年たちとして描かれている。

中国の官製メディアが最近、大々的に取り上げているのが、楊宇軒、周犇、徐凱睿の3人だ。いずれも未成年で、自費で旧日本軍に関する史料を収集しているという。

中国メディア「澎湃新聞」などの報道によると、3人はお年玉や小遣いを使って史料を購入し、今年5月には黒竜江省ハルビン市にある「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」を訪問。「九六式馬防毒面具取扱法案」や、1855部隊と1875部隊に関する経済資料などを寄贈した。同館は3人に寄贈証書を授与している。

このうち徐氏が以前購入した旧日本軍兵士の手紙2通については、河北革命軍事館が旧日本軍兵士によって書かれたものと鑑定し、収蔵を決めたという。少なくとも一部の史料は単なるネット上の話題作りにとどまらず、実際に中国の公的な博物館や記念館の収蔵品となっている。

これに対し、中国共産党浙江省委員会宣伝部は8月6日、微信(WeChat)の公式アカウント「浙江宣伝」で、「『精日』という病は徹底的に治すべきだ」と題する文章を発表した。

同記事は3人の「愛国少年」を強く擁護し、自費で購入した「旧日本軍の罪証」を陳列館へ寄贈したことでネット上の誹謗中傷を受け、個人情報を特定して晒す「開盒」や、「銷戸」と呼ばれる殺害をほのめかす脅迫まで受けたと指摘した。さらに矛先を「精日」に向け、各プラットフォームに専用の仕組みやアルゴリズムを設け、「精日」現象を徹底的に取り締まるよう求めている。

しかし、「少年が抗日史料を集める」という物語が注目を集めるコンテンツになるにつれ、歴史そのものも公文書館や博物館から、動画アプリ「TikTok」のショート動画へと移り始めた。

「珍しい罪証を見つけた」「これは南京大虐殺の現場だ」「海外から買い戻したオリジナル写真だ」――。こうした物語は、無機質な収蔵番号よりも、「いいね」やシェア、フォロワーをはるかに集めやすい。

中共党系メディアによる本件の報道。(微信動画アカウントより)
中国共産党系メディアによる本件の報道。(写真/微信動画アカウントより)

「精日」とは何か 中国で使われる「精神日本人」の略称

​「精日」とは、中国で「精神日本人」の略として使われる言葉だ。

2014年、中国の一部都市で尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張するデモが行われて以降、日中関係は冷え込んだ状態が続いてきた。最近では、高市早苗氏の「台湾有事は日本有事」との発言に中国共産党が強く反発し、両国関係はさらに悪化している。 (関連記事: 長崎原爆資料館、「南京大虐殺」表記変更案に市民団体が抗議 「加害の歴史隠し」と批判 関連記事をもっと読む

こうした世論環境の中、中国のSNSでは、日本について好意的な発言をするネットユーザーが「精日」とレッテルを貼られる場面も珍しくない。「精日」と呼ばれる人々は、日本の政治制度や文化、日本人との交流に傾倒し、あたかも「身は中国にありながら、心は日本にある」かのようにみなされる。

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