台湾の立法院(国会)は27日、今会期最後の本会議を開き、ドローンや無人艇などを対象とする「国防自主強化・無人システム産業発展条例」を可決、成立させた。中央政府に対し、無人システム産業の育成や国防力強化のため、6年間で計2400億台湾元、年間400億台湾元を年度予算として計上するよう定める。
与野党3党はそれぞれ再修正案を提出したが、最終的には立法院で最大議席を持つ国民党党団の案に沿って条文が可決された。ただ、国民党の最終案には民進党、民衆党などが提出した複数の案の内容も取り入れられた。
立法院長(国会議長)の韓国瑜氏は26日午後、行政院(内閣)や与野党、立法委員(国会議員)が提出した計13案について党団協議を招集した。しかし、所管官庁をどこにするか、年度予算と特別予算のどちらを用いるか、予算上限をどう設定するかなどをめぐり合意に至らなかった。
韓氏は27日午前にも与野党党団と議事日程を協議。約2時間の協議を経て、同日の本会議では無人システム関連法案のほか、「産業創新条例」「水土保持法」などの改正案を処理することで合意した。野党が予定していた「公民投票法」を改正し、一度の投票で複数の案件を扱えるようにする案は、次期会期に持ち越された。
午後1時過ぎから各党団の再修正案などについて審議が始まり、党団代表による討論を経て午後1時半ごろから採決に入った。午後4時8分に三読手続きを終え、条例が成立した。
国民党と民衆党、所管官庁や予算上限で相違
国民党と民衆党の案は大部分で共通していたものの、第2条の所管官庁、第4条の予算上限、第24条の施行時期などでは違いが残った。
民衆党案の第2条を採決した際には、国民党党団の幹部3人は投票しなかった一方、ほかの国民党議員が両案の違いに気づかず、いったん賛成票を投じる場面もあった。
国民党党団総召集人の傅崐萁氏が投票カードを抜くよう指示したものの、23人の国民党議員がすぐには対応できず、採決結果は賛成31票、反対50票となった。
韓氏、立法院副院長の江啓臣氏、民進党の楊曜立法委員は投票に参加しなかった。
国防相の要望を反映 与野党の複数案を取り込む
顧立雄・国防部長(国防相)は26日の党団協議で、国民党案を例に挙げながら、3つの条文を修正するよう求めていた。
所管官庁を経済部としつつ、国防調達に関する事項については国防部を所管とすることや、予算規模の見直しなどを求めた。
国民党案は当初、年度予算の上限を年間400億台湾元としていたが、条例の対象には幅広い無人システムが含まれる。顧氏は、来年度予算案だけでも軍用無人システムに311億台湾元が計上されているとして、年間400億台湾元を上限とした場合には不足する可能性を指摘した。
国民党が27日に提出した再修正案では、こうした要望を踏まえ、所管官庁や予算に関する規定が修正された。
条例の名称も、民衆党案に沿った「国防自主強化・無人システム産業発展条例」となった。国民党の頼士葆立法委員による案や民衆党案の複数の条文に加え、民進党の王定宇立法委員が提出した草案の一部も盛り込まれた。
6年間で2400億台湾元 年間400億元は下限に
成立した条例では、原則的な所管官庁を経済部とし、国防用の調達に関する事項については国防部が所管すると定めた。
国防調達、研究開発への補助、重要技術の輸入、サイバーセキュリティー審査、試験区域の設定などについては、経済部が国防部などの関係機関と共同で取り組む。
無人システム産業を長期的かつ安定的に育成し、国防自主能力を強化するとともに、安全で信頼できるサプライチェーンの構築や国際競争力向上を図るため、中央政府は年度予算の手続きに基づき、6年間で計2400億台湾元、毎年400億台湾元を計上する。
400億台湾元で不足する場合には、総額と各年度の予算を実際の需要に応じて追加計上できる。年間400億台湾元は事実上の下限となる。
所管官庁は4年ごとに関係機関と共同で「無人システム産業発展大綱」を策定し、2年ごとに内容を見直す。
大綱は、行政院副院長(副首相)が主任委員を務める「国家無人システム産業発展戦略特別委員会」の審議を経る必要がある。
同委員会は15~19人で構成し、経済部、国防部、交通部、国家通信放送委員会(NCC)、公共工程委員会、デジタル発展部などのトップが委員を兼務する。立法院の各党団が推薦する学者や専門家から委員を選任する仕組みも盛り込まれ、その人数については全委員の半数未満とすることができるとした。
中国・香港・マカオ企業の調達参加を禁止 2027年までに信頼できる供給網
条例では、無人システムによる防衛体制を構築する際、「分散型レジリエンス」の原則に従い、配備や生産拠点の集中を避けることも定めた。
公的機関が使用する無人システムは、平時と戦時で運用を切り替えられる機能を備える必要がある。
調達契約では、遠隔操作ドローンの調達指針に基づき、中国大陸に加えて香港、マカオの企業の参加を禁止する。また、調達を実施するチームに中国、香港、マカオ籍の人物を含めることも認めない。
国家安全保障にリスクをもたらす情報通信関連製品の流入を防ぎ、2027年までに中国系に依存しない「完全に信頼できるサプライチェーン」を構築することを目標としている。
単一の無人システムの調達額が1億台湾元を超える場合には、国防部または所管官庁が落札決定から30日以内に立法院へ書面で報告しなければならない。
攻撃型・偵察型ドローン、小型自爆無人艇を優先調達
国防調達については、台湾製の低コスト・高性能な無人システムを優先的に調達するよう国防部に求めた。
作戦上のニーズや技術の発展に応じ、航渡や泊地からの上陸段階で優位性を発揮できる攻撃型、監視・偵察型の無人装備を調達する。
- 沿岸監視・偵察型ドローン
- 沿岸攻撃型ドローン
- 小型自爆型無人艇
高リスクな供給元の部品使用に行政罰
条例には、補助金や政府調達をめぐる違反行為への制裁も盛り込まれた。
認証を受けていないものや出所が虚偽のもの、高リスクな供給元に由来するもの、または高リスクな供給元から実質的な支配を受けている重要部品、ソフトウェア、ファームウェア、システム、サービスを使用しながら、条例に基づく奨励、補助、投資、融資、信用保証、政府調達への参加資格を取得した場合、資格を取り消すか廃止する。
すでに受け取った資金は返還させた上で、受給額の1~3倍に相当する行政制裁金を科す。
虚偽の資料を提出した場合は100万~500万台湾元、所管官庁や調達機関、委託された専門機関による法令に基づく監査や検査、抜き取り検査、再検査を回避、妨害、拒否した場合には50万~300万台湾元の行政制裁金を科す。違反が続いた場合には、その都度処分することもできる。
予算規定は公布後直ちに施行 条例本体は6カ月後
所管官庁は関係機関と共同で、条例の公布・施行から1年以内に第1期の無人システム産業発展大綱を策定する。同時に、無人システムを空域、水域、陸域の管理制度に安全に組み込むための計画をまとめ、試験区域、試験回廊、実証区域の設定を完了する。
また、公布・施行から6カ月以内に、信頼できるサプライチェーンの段階別認証制度を整備する。施行時期については、第4条の予算編成に関する規定のみ、条例の公布後直ちに施行する。条例本体は公布から6カ月後に施行し、施行細則についても所管官庁が公布後6カ月以内に定める。