台湾ファミマ、杖ホルダーや老眼鏡を導入 高齢者向けサービスを台湾全土20店舗に拡大 台湾ファミマの葉栄廷董事長は、多様な人々に配慮した店舗を展開し、地域コミュニティの互助プラットフォームとなりたいと述べた。(台湾ファミマ提供)
台湾では、65歳以上の人口が全体の2割を超える476万人に達し、正式に超高齢社会へと突入した 。同時に、1世帯当たりの人数は2.37人まで減少し、家庭内での介護機能は徐々に弱体化している。これに加え、小売業界が慢性的な労働力不足と人件費高騰の圧力に直面する中、コンビニエンスストアは「消費ニーズの変化」と「店舗運営モデルの転換」という二重の課題に直面している。セルフレジの導入や深夜帯営業モデルのテストから、高齢者に配慮したシニアフレンドリーなサービスの提供に至るまで、コンビニ各社は地域社会における店舗の役割を再考し始めている。
3割以上の顧客がセルフレジ利用 高齢化と労働力構造の変化を背景に、コンビニが提供する「便利さ」は、もはや24時間営業サービスの提供だけにとどまらず、限られた人的資源でいかに多様な消費ニーズに応えるかという点にシフトしている。台湾のコンビニ大手、全家便利商店(台湾ファミリーマート)の葉栄廷 董事長(会長)は先般、同社がすでに1000店舗以上でセルフレジを導入していることを明らかにした。一定の案内期間を経た結果、現在では3割以上の顧客がセルフレジを利用するようになったという。
葉氏は、台湾ファミマが大規模な運営モデルの変更を行う際、まずは賛同するフランチャイズ加盟店を募って実証実験を行っていると説明した。セルフレジを例に挙げると、機器の導入後すぐに顧客に操作を任せるわけではなく、初期段階では専任スタッフを配置して使い方を案内する。「少なくとも1カ月間の案内期間が必要だ」と指摘する通り、顧客に実際に利用してもらうことで、従来の決済習慣を段階的に変えていく狙いがある。
現在、3割以上の顧客がセルフレジを利用しているが、葉氏によれば、最大の目的はピーク時のレジ待ち行列の解消だ。購入点数が少ない顧客が自ら決済を行えば、レジ前の混雑を分散でき、順番待ちの顧客に対応する店員の心理的負担を軽減することにもつながる。
セルフレジに加え、市場では最近、コンビニ各社が深夜帯の運営モデルをさらに見直すかどうかに注目が集まっている。これについて葉氏は、現在一部の店舗で深夜0時から早朝6時までの営業モデルをテストしているものの、全面的な「無人店舗化」を推進するわけではないと強調。引き続き店員を店舗に常駐させており、主に商圏ごとの人の流れや需要に基づいた調整を行っている段階だという。
高齢者がコンビニで直面する困難とは? 一方、「人手不足」がもたらす運営上の圧力だけでなく、人口構成の変化もまた、コンビニの消費シーンを再構築しつつある。台湾ファミマが電通サステナビリティコンサルタントおよび市場調査会社・東方線上(イースタン・オンライン)に委託して実施した「2026中高年コンビニ大調査」によると、8割以上の高齢者が週に1回以上、コンビニを訪れている。一人暮らしの高齢者や子世代と同居していない高齢者に至っては、平均して2日に1回来店していることが判明した。
高齢者にとってコンビニは、コーヒーや惣菜の購入にとどまらず、各種支払い、荷物の発送、さらには社会的交流といった生活サービスの拠点となっており、外出する理由そのものになりつつある。この傾向を受け、コンビニは単なる「消費の場」から「生活の場」へと変化し始めている。
台湾ファミマは共生社会対応型のコンセプト店舗にシニア向けの貸出ボードを設置し、拡大鏡の貸し出しサービスを提供することで、高齢者が商品情報や表示内容を読みやすくするよう支援している。(台湾ファミマ提供)
これに伴い、台湾ファミマは非営利組織、鄰里123共生協会と提携し、「全家一塊伴老共生社区(高齢者寄り添い共生コミュニティ)」プロジェクトを始動したと発表した。第一弾として、台北市文山区忠順里に「共生ケア実験街区」を構築。さらに、高齢者に配慮したシニアフレンドリーなサービスの提供を台湾全土の20店舗へと拡大している。
台湾ファミマは文山区の順輝店に初となる「共生社会対応型コンセプト店舗」をオープンし、「シニアフレンドリー123」アクションを展開している。具体的には、レジカウンターに「杖ホルダー」を設置したほか、老眼鏡、拡大鏡、血圧計、さらにはマルチメディア端末や公式アプリの操作方法を解説した下敷き型の案内板などを提供している。
高齢者が実際にコンビニを利用する際に直面する問題点に焦点を当て、消費行動やデジタルサービス利用時の障壁を引き下げる狙いだ。葉氏は、台湾ファミマが長期にわたり「Place for all(全ての人の場所)」を理念に掲げており、多様な人々に優しい、利便性の高い売り場であると同時に、地域社会における助け合いの生活プラットフォームとなることを目指していると述べた。
高齢化の進展に対し、コンビニは単に商品やサービスを提供するだけでなく、高齢者にとって親しみやすく、足を運びたくなる「身近なサードプレイス」となることで、日常的なサービスを高齢者の生活を支える力へと昇華させていく方針だ。
台湾ファミマは共生社会対応型のコンセプト店舗に、コンビニ業界初となる「杖ホルダー」を導入し、高齢者が会計時に安心して杖を置けるよう配慮している。(台湾ファミマ提供)
店舗環境の整備にとどまらず、シニア層の消費動向は商品のラインナップにも反映され始めている。台湾ファミマでは今年、24品目の調理済み食品がシニア向け食品認証「Eatender(イーテンダー)」を取得した。これらの商品は、咀嚼のしやすさ、飲み込みやすさ、栄養素の補給、開けやすいパッケージといったニーズを網羅している。同時に、高タンパク質、カルシウム・マグネシウム・亜鉛を含む食品、カフェインレス飲料などの選択肢も拡充し、食の面からシニア層の日常的な需要に応えている。
コンビニ業界「次なる競争」の行方 このほか、葉氏は下半期の小売業界の景気動向についても言及した。同氏は、小売業自体が安定した消費基盤を持っているとした上で、鍵となるのは事業者が消費ニーズに正確に応えられるかどうかだと指摘。「的確に対応できれば、売り上げは必然的に向上する」と自信をのぞかせた。一方で、今年の消費市場が二極化の様相を呈しているとも分析している。一方は高所得者層が増加し、より高価格帯の商品を求める層であり、もう一方は所得が伸び悩む中で、価格や割引をより重視する層だという。
コンビニ業界にとって、これは将来の競争が単なる店舗数の拡大競争にとどまらず、限られた人材と店舗スペースの中で、いかにして異なる消費者層のニーズに的確に対応していくかに移行することを意味する。セルフレジの導入による運営効率の向上から、シニアフレンドリーなサービスの展開による新たな消費・コミュニティシーンの創出まで、台湾ファミマが現在検証を重ねているのは、まさに次世代における コンビニの役割そのものだ。それは、さらなる効率化を追求すると同時に、人口構成の変化に伴う新たな生活ニーズにこれまで以上に寄り添うという姿勢にほかならない。
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