100m9秒39で「ボルト超え」 中国の人型ロボット、速くても本当に「働ける」のか 8月22日、北京で開催された世界人型ロボット運動会で100メートル走に参加したロボット。(AP通信)
第2回「世界ヒト型ロボット 大会(World Humanoid Robot Games)」が22日、北京市の屋内競技場、国家速滑館で開幕し、中国で開発されたヒューマノイド(ヒト型ロボット)が100メートルと400メートルの人類の世界記録を次々と塗り替えた。ただ、ロボットたちは トラック上で人間の身体能力の限界を超える驚異的なスピードを叩き出したものの、ゴール後にブレーキをかける制動能力を欠き、高速で壁に激突して担架で運び出される事態となった。
英ロイター通信 は、ゴール手前での制御不能による混乱や、その後に公開された精密動作テストの結果を踏まえ、中国政府が国家戦略に位置付けるヒューマノイド が、実際に工場の生産ラインに投入されるまでには、依然として長い道のりを要すると指摘している。
22日に行われた男子100メートル予選では、北京人形機器人創新中心 (Beijing Humanoid Robot Innovation Center)が開発した「天工ウルトラ」が9秒39を記録し、ジャマイカのウサイン・ボルト氏が2009年のベルリン世界陸上で樹立した9秒58の人類世界記録を上回り、グループ1位に立った 。
また、スマートフォン大手・栄耀(Honor)が開発したロボット「閃電(Lightning)」はスタートでリードしながら、 ゴール直前で逆転されたものの、こちらもボルト氏の記録を上回る9秒47でゴールした。さらに、「天工ウルトラ」と同型の別のロボットは400メートル走で39秒7という記録を叩き出し、南アフリカのウェイド・バンニーキルク氏が保持する43秒03の世界記録を大幅に更新した。
2026年8月22日、世界ヒト型ロボット大会におけるロボットたちのパフォーマンス。(AP通信)
防護マットに激突、担架で搬出される異例の事態に トップアスリートがゴール後にスムーズに減速できるのとは対照的に、出場したロボットたちは高速走行時における深刻な制動上の欠陥を露呈した。2体のロボットはゴール後に全くスピードを落とすことができず、ゴールラインの数メートル前方に設置された分厚い防護マットに激突した。「天工ウルトラ」は猛烈な衝突の後にバランスを崩してトラック脇の通路に倒れ込み、現場の観衆が慌てて避難する騒ぎとなった。一方の「閃電」は衝突後にその場に崩れ落ちて自立できなくなり、最終的にスタッフによって担架で競技場から運び出された。
中国国営中央テレビ(CCTV)の報道によると、「閃電」は大会前のテストで9秒32、最高秒速14.5メートルを記録していたという。開発チームは今大会に向けて、脚の長さを以前ハーフマラソンに出場したモデルの 95センチから1.05メートルまで10センチ伸ばす改良を施した。2025年の第1回大会で「天工ウルトラ」が21秒50で優勝したことと比較すると、今年のロボットのランニング速度は爆発的な進化を遂げた。
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8月22日、北京で開催された世界ヒト型ロボット大会の開会式。(AP通信)
政策支援により産業サプライチェーンが急成長 中国政府は近年、ヒューマノイドを戦略的新興産業と位置づけており、人工知能(AI)とハードウェアの強みを融合させ、製造、物流、消費分野への導入加速を目指している。今大会には世界16カ国から666チーム、計2056体のロボットが参加。第1回大会の280チームから規模が大幅に拡大した。資本市場の熱狂も連動して高まっており、中国の代表的なヒューマノイドメーカー、宇樹科技(Unitree)は先週、上海証券取引所に上場。初日に株価が5倍以上に急騰し、時価総額は約500億米ドルに達した。
会場で観戦したロボット分野の投資家、徐僑声(Xu Qiaosheng)氏は、今年の競技レベルは昨年よりはるかに高く、ロボットのバッテリー管理と冷却システムに対して極めて高い性能が求められたと指摘。これは中国の産業分野の発展において重大な意義を持つとの認識を示した。
8月22日、世界ヒト型ロボット大会の北京開会式前夜、準備に着くロボットたち。(AP通信)
「走る・跳ぶだけでは生産性向上に寄与しない」 今大会では全51の競技種目が設けられ、30のスポーツ種目と21の実用シーンでのパフォーマンスが含まれた。大会の技術パートナーを務める通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・Huawei)によれば、全種目の40%以上でロボットの完全自律稼働が求められるという。プログラムには短距離走、綱引き、重量挙げ、太極拳、宴会で行われる伝統的な遊び「投壺(とうこ)」のほか、電気自動車(EV)の充電、レストランの配膳サービス、緊急対応や、資材運搬、ケーブル配線といった工場での組み立てテストも組み込まれた。また、北京のロボットスタートアップ企業、銀河通用(Galbot)は、自律型ロボットによるテニスのダブルスマッチを披露した。
陸上競技場での記録更新ラッシュをよそに、複数の産業界幹部らは海外メディアの取材に対し、こうした「極限のスピード誇示」に対しては慎重な姿勢を崩していない。彼らは、現実世界の物理的制約を克服してこそ、初めて商業的価値が生まれると強調している。
Lumos Roboticsの最高経営責任者(CEO)、于超(Yu Chao)氏は、「ロボットがエンドユーザーによる実際の活用シーンに導入されてこそ、真の価値を持つ。単にトラックの上で走ったり跳ねたりするだけでは、生産効率の向上には全く寄与しない」と言い切る。
8月22日、北京で開催された世界ヒト型ロボット大会の開会式終了後、ロボットを搬送するスタッフ。(AP通信) ロボットスタートアップ、Zerothの最高マーケティング責任者(CMO)、華蓉(Hua Rong)氏も、「熱狂の後に待ち受ける真の競争は、製品が販売された後、それが確実にユーザーの課題を解決できるかどうかにかかっている」と強調した。
英ロイター通信は、現実の作業環境には、角度がずれたプラグ、重心が移動する荷物、ミリ単位の歩幅のズレなど、ランダムなノイズが満ちていると指摘する。ロボットには、物体を認識し、正確に位置を特定し、制御された力を加え、自律的にエラーを修正する能力が求められる。今大会において、ネジ留め、ボトルのキャップ開け、ピンセットでビーズを挟むといった「ロボットハンド(Robotic hands)」の課題が新たに加えられたのはこのためだ。人間の精密な触覚や微細なフィードバック調整能力を備えたロボットハンドの開発は、平坦な地面をまっすぐ疾走するよりはるかに複雑だ。これこそが、ヒューマノイドが競技用デモンストレーションの枠を超え、真に産業用生産ラインに普及するか否かを左右する重要な戦場と言える。
8月22日、北京で開催された世界ヒト型ロボット大会で、サッカーの試合をするヒューマノイド。(AP通信) 更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
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