最大震度7を観測した令和8年の熊本地震から間もなく1か月となる2026年8月25日、東北大学災害科学国際研究所教授であり日本活断層学会会長を務める遠田晋次氏が日本記者クラブで会見を開き、今回の地震の発生メカニズムや現地調査の成果、そして今後の留意点について網羅的に解説した。
地震活動の活発化が警告、巨大地震につながるメカニズム
遠田氏は2016年の平成28年熊本地震の直後から継続して現地調査を行っており、今回の震源となった日奈久断層帯が、10年前に活動した布田川断層帯の延長線上にある全長約100キロメートルに及ぶ超大型活断層帯の一部であることを指摘した。
地震活動の基本原則として、微小な地震が増加すればするほど大規模な地震が誘発されやすくなると説明し、前回の熊本地震以降、八代周辺などで平時の2倍から3倍の地震活動が継続していたことが今回の被害に繋がったと述べた。
これは能登半島地震の発生前に、群発地震が通常の400倍という猛烈なペースで起きていた状況と共通する特徴を示している。
2016年熊本地震が残したひずみ、日奈久断層帯を刺激
地震発生の物理的メカニズムについて、遠田氏は断層面における摩擦現象と「固着すべり」のモデルを用いて解説した。2016年の熊本地震によって布田川断層帯が大きくずれ動いた結果、周辺地域の地殻にひずみが伝播し、クーロン応力変化と呼ばれる現象が生じた。
GPS電子基準点のデータを用いた詳細な解析によれば、九州中部の地殻が南北に引っ張られて離れていく動きを見せ、日奈久断層帯、特に日奈久区間へ大きな負荷が集中していたことが明らかになっている。
遠田氏によれば、この活断層の連動はトルコの北アナトリア断層でみられるドミノ倒しのような連鎖現象と酷似しており、巨大な断層系の中でひずみが未解消の区間に次々と飛び火する形で今回の破壊が進展したという。
さらに、今回の地震を誘発した要因として、最新の調査データと地表の余効変動の存在が挙げられた。平成30年に報告された文部科学省の重点調査観測によれば、日奈久区間北部の平均活動間隔は2000年から4000年であり、直近の活動からすでに約2000年が経過していた。
そのため、地震を発生させるポテンシャルが十分に蓄積されていた状態であった。このデータに基づく当時の30年発生確率は約5.7パーセントと試算されており、活断層としては極めて高い危険度を示していた。
また、2016年の地震後、御船町高木などの地域では地表の断層が数年にわたり年間数センチ規模でずるずると動き続ける「余効変動」が確認されており、この持続的な地殻の横滑りが今回のさらなる破壊を後押しした可能性が高いと分析している。
活断層による直下被害、インフラ対策の課題浮き彫りに
現地調査に基づくインフラ被害の実態について、遠田氏は地表地震断層による直接的な破壊の脅威を強く訴えた。 (関連記事: 熊本地震後にふるさと納税での支援が急増、熊本への寄付額は前年比3.5倍以上に | 関連記事をもっと読む )
今回の地震では南九州自動車道や、八代市の小学校の校庭から校舎にかけて断層のずれがはっきりと現れ、甚大な被害をもたらした。活断層のずれに対しては、いかに建物の耐震性を高めても直下で変位が起きれば被害を免れることは困難である。













































