日本記者クラブは2026年8月20日、著書『社会保障改革の岐路 信頼のセーフティネットは可能か』を出版した宮本太郎・中央大学教授を招き、社会保障制度が信頼を取り戻すための考え方について記者会見を開催した。
時事通信の小林伸年企画委員が司会を務める中、宮本教授は現在の社会保障において生じている制度不信の根源が雇用の分断にあると指摘し、新たな改革の方向性を詳細に提示した。
物価高でも「減税・保険料引き下げ」求める声
宮本教授は冒頭、生活不安や物価高が進行しているにもかかわらず、社会保障の充実よりも減税や保険料引き下げが前面に出る現状に言及した。
かつては新自由主義的な市場の論理が社会保障を揺るがしているとされたが、現在起きている現象はそれだけでは説明がつかず、ポピュリズムという言葉で人々の感情的な反発として片付けることも不適切であると指摘した。
給与明細の控除欄が増加する一方で実質賃金が上がらない中、人々は控除欄を減らすことしか生活改善の道を見出せず、年金、医療、介護、子ども・子育て支援の全分野において制度への不信感が高まっていると述べた。
「低福祉・高負担」の現役世代、雇用の劣化が社会保障の分断招く
この不信の背景には、かつての昭和的な条件に適合していた「皆保険・皆年金」制度が、非正規雇用などの雇用の劣化によって機能不全に陥っている事実がある。
日本の社会保険は税財源も多大に投入して維持されてきたが、その結果として生活保護などの公的扶助に回す財源が絞られ、受給に対するスティグマ(偏見)を生むことになった。
さらに、雇用の劣化により、社会保険の逆進性が顕著になっている。所得が200万円から300万円の層は、企業の福利厚生などの恩恵も少なく「低福祉」であるにもかかわらず、社会保険料の負担が重い「高負担」層となっている現状を宮本教授は強く懸念した。
雇用劣化の進行により、現在の日本社会は、なんとか社会保険に入り安定的に働ける層、福祉を受給している層、そして不安定就労や非正規雇用などの「新しい生活困難層」の三つに分断されている。
この分断が、制度不信から相互不信へと転化していると宮本教授は分析した。安定就労層は控除された保険料の使途に不満を抱き、生活困難層は制度から取り残され、それぞれが異なる性質の生きづらさを抱えながら、連帯の糸口を見出せずにいる。
「全世代型社会保障」にも限界、雇用と切り離した改革に課題
政府はこれまで「全世代型社会保障」として、人生序盤や中盤への給付拡充を図ってきた。また、生活困窮者自立支援制度などを通じてセーフティネットの信頼度を高めようとしてきた。 (関連記事: 飲食料品の消費税、8%から1%へ なぜ「0%」ではない?高市政権案の狙いと財源 | 関連記事をもっと読む )
しかし、児童手当拡充の財源として新たな支援金が徴収されることに対し「独身税」との批判が巻き起こるなど、これらの施策は空回りしている。若年層の貧困率が高齢者を上回り、子どもを持つこと自体が「贅沢」とみなされる中で、雇用問題と切り離された社会保障改革は現役世代の理解を得られていない。
















































