日本記者クラブで2026年8月21日、「中国で何が起きているのか」と題した第34回シンポジウムが開催され、防衛省防衛研究所中国研究室の山口信治主任研究員が中国の核戦力に関する最新の動向と戦略的意図について講演した。
山口氏は、中国が従来の限定的な抑止力から、米ロに匹敵する規模と実戦的な運用体制へと急速に移行しつつある現状を分析し、東アジアの安全保障環境、とりわけ台湾有事における核の役割について強い懸念を示した。
中国、核を急速に増強 2035年に1500発との予測も
山口氏の分析によると、中国は地上、海中、空中の「核の3本柱」を急速に発展させている。内陸部での大規模なミサイルサイロ建設に加え、グアムに到達可能なDF-26などの中距離弾道ミサイル、射程が延長された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、そして空中発射型の巡航ミサイルを搭載可能なH-6N爆撃機などを実戦配備しつつある。
さらに極超音速滑空体や部分軌道爆撃システム(FOBS)など、ミサイル防衛網を突破する新技術の開発も進められている。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)や米国防総省の推計を引き合いに出し、2010年に約240発だった中国の核弾頭数は2024年には約500発に達し、2035年には1500発にまで増加する予測があると言及した。
これが実現すれば、実戦配備数において米国やロシアと均衡する水準に達することになる。
変化する中国の核運用、ミサイル防衛と誤認リスクに警鐘
また、戦力の規模拡大以上に注目すべき点として、山口氏は核兵器の運用体制の変化を挙げた。中国はこれまで「先行不使用」を宣言し、弾頭とミサイルを分離保管することで偶発的な衝突を防いできた。
しかし近年は、人工衛星や大型フェーズドアレイレーダー(LPAAR)による早期警戒網を構築し、敵のミサイルが着弾する前に報復攻撃を行う「早期警戒即時発射(LOW)」体制への移行を進めていると指摘した。
同時に、ミサイル部隊を管轄するロケット軍では通常弾頭と核弾頭が混在して運用されており、有事の際に相手側の誤認や予期せぬエスカレーションを招く危険性が高まっていると警告した。
中国の核増強、台湾有事で米軍介入阻止の狙いか
こうした核戦力増強の背景には、習近平国家主席が掲げる「強大な戦略抑止体系の構築」という目標がある。中国の意図について山口氏は、米国の通常戦力やミサイル防衛網の向上に対する強い警戒感があると説明した。
さらに台湾問題に関連して、米国による軍事介入を阻止するためには確実な核抑止力が必要不可欠と中国側が認識していると分析。
核兵器の戦力が米ロと均衡することで核による威嚇が機能しにくくなり、結果として通常戦力による紛争のハードルが下がり、「通常戦力レベルでの不安定化」を招く恐れがあると警鐘を鳴らした。
将来的な軍備管理の可能性については、米ロ中の「3極体制」における戦略的安定の構築は極めて困難であり、中国の核動向に対する冷静かつ客観的な分析を引き続き行っていく必要があると結んだ。
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編集:小田菜々香















































