ネパール氷河崩壊が突きつける警告 「ヒマラヤ全体が融けている」、1000年に1度の洪水が数年ごとに

2026年8月30日、洪水被害を受けたネパール・ヌワコート郡の様子。(写真/AP通信)
2026年8月30日、洪水被害を受けたネパール・ヌワコート郡の様子。(写真/AP通信)

ネパール北部、中国チベット自治区との国境に近いランタン・リルン(標高7234メートル)の北側で先週早朝、大規模な氷河と山壁の崩落が発生した。これによりボテコシ川沿いで壊滅的な土石流が起き、下流のヌワコート郡デビガート周辺では住宅が泥流にのみ込まれた。死者と行方不明者は合わせて3000人を超える可能性がある。

米紙『ニューヨーク・タイムズ』は29日、この災害が突きつけている本当の警告は、気候変動によって高山の地形そのものが急速に変化していることだと指摘した。かつて「1000年に1度」と表現されていたような洪水が、今後は数年ごとに起きる恐れがあるという。

同紙によると、ネパールで洪水が発生した日の午前、4000マイル以上離れた英国南部ドーセットでは追悼式が営まれていた。

ネパールの著名登山家ニルマル・プルジャ(通称ニムスダイ)氏と、ほか9人の登山者が今年7月30日、パキスタンのカラコルム山脈にあるブロード・ピークで雪崩に巻き込まれ、死亡したためだ。

自ら捜索隊を率いて犠牲者の遺体を収容した登山遠征会社「Imagine Nepal」の創設者で、ネパールを代表する登山家のミンマ・ギャルジェ・シェルパ氏も追悼式に参列した。

1カ月足らずの間に、パキスタンとネパールで相次いだ二つの大規模災害。そこから浮かび上がるのは、地球温暖化の影響で高山の氷雪が急速に融けつつある現実だ。それは、登山を重要な産業とするネパールの経済基盤にも影響を及ぼす恐れがある。

大きな影響を受けるネパール 観光は重要な経済基盤

世界銀行の統計によると、観光業はネパールの国内総生産(GDP)の6.1%を占める。2023年には120万人の雇用を生み、国内の総就業人口の15%近くに相当した。

2025年にネパールを訪れた外国人旅行者116万人のうち、16万5056人が「トレッキング」や「登山」を主な目的としていた。関連産業には3000社以上のトレッキング旅行会社、数万人の有資格ガイドのほか、多数のポーター、ティーハウス、ホテル、航空会社、ヘリコプター運航会社などが含まれる。

2026年8月30日、ネパール政府が鉄砲水の警報を発令し、ダディン郡ガルチの住民が高台に集まり水位の急上昇を見守っている。(AP通信)
2026年8月30日、ネパール政府が鉄砲水警報を発令するなか、ダディン郡ガルチの住民が高台に集まり、急上昇する水位を見守った。(写真/AP通信)

『ニューヨーク・タイムズ』は、高標高で行われる商業登山が、ネパールにとって特に収益性の高い産業の一つだと指摘する。今年春には1195人の登山者が、計31座の山への登山許可を取得した。政府が得た登山許可料は約900万ドルに達した。

このうち約500人がエベレストの登山許可を取得。外国人登山者の春季の登山許可料は現在、1人1万5000ドルとなっている。

ミンマ・ギャルジェ・シェルパ氏によると、トップクラスの高標高ガイドの収入は、ネパールの一般的な賃金の10倍に達することもある。しかし、地球温暖化の影響が強まるなか、こうしたネパールの経済モデルも大きな脅威にさらされている。 (関連記事: 氷河崩壊で大規模洪水 ネパール側で162人死亡、日本人5人も連絡取れず 関連記事をもっと読む

カトマンズのトリブバン大学で氷河を研究するアルビンドラ・カドカ氏は、ヒマラヤの氷河が現在、年間約1メートルのペースで融解していると指摘する。「危機に瀕しているのはエベレストだけではない。ヒマラヤ山脈全体が融けている」カドカ氏はこう語る。

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