中国国鉄集団(国鉄グループ)は8月初め、「新蔵鉄道」有限公司を設立した。この計画は、中国交通運輸部が最近発表した《加速建設交通強国重大工程及重大プロジェクト(2025年版)》に含まれており、中国西南国境における新たな大型インフラプロジェクトである。単なる交通建設というよりも、中国が南西国境に「新たな戦略的要塞」を築くものと位置づけられている。

新蔵鉄道有限公司の設立は2025年8月7日付で行われ、法人株主は国鉄グループとなった。実はこの鉄道計画は2004年1月に発表された《中長期鉄道網計画》ですでに盛り込まれており、その後2008年10月、2016年7月、2018年11月と複数の時期において再度取り上げられてきた。
計画によれば、新蔵鉄道は新疆ウイグル自治区の和田を起点に西蔵(チベット)のアリ地区を経由し、最終的に西蔵のシガツェ市に至る。全線は約2000キロメートルにおよび、設計速度は時速160〜200キロ。建設は新疆区間と西蔵区間に分かれ、新疆区間は2025年11月に着工が見込まれている。

近年、中国は南西地域およびチベット地域での地政外交を強化し、パキスタンやネパールへの大規模支援を進めてきた。インドの影響力を削ぐ戦略の一環として、この新蔵鉄道の着工は中印関係に新たな衝撃をもたらすとされる。新蔵鉄道は西蔵自治区内の10の県市を通過し、そのうち9県は国境地域に位置している。とりわけ普蘭県のバガー鎮は、インドの首都ニューデリーからわずか470キロにあり、インド側にとって極めて敏感な地域である。
中印両国はチベット南部の領有をめぐって争いを続け、これまでに数度の衝突も発生している。今回の新蔵鉄道は、すでに建設が進む川蔵鉄道とも接続し、アリ地区に鉄道網が未整備であった歴史を終わらせることになると期待される。
この計画の着工は、中国経済の活性化を促す可能性もある。特に、かつて共産党指導部が掲げた「以工代賑」(公共事業を通じた地域振興・雇用創出)の戦略的意図に合致するものだ。総投資額は350億元(約1,750億円)以上に上り、中国西南の国境地帯に経済的な活力を注ぎ込むと期待されている。
さらに、国境地域の開発は国防力の強化や民族団結教育の推進という意味合いも持つ。現時点でインド政府は新蔵鉄道に関する公式な声明を出していないが、すでに多くのインドメディアが注目している。
この鉄道の輸送力は旅客や貨物輸送にとどまらない。将来的には有事の際、軍需物資や戦略物資の輸送にも活用できると見られている。
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