習近平氏、ベトナム訪問 中越が5G・AI・鉄道で協力強化へ、米中対立にらみ供給網再編

中国国家主席習近平(右)は2025年4月にベトナムの首都ハノイを訪問し、ベトナム共産党書記長グエン・フー・チョン(左)と会談。(AP通信)

米中の関税戦争が激化する中、米国のトランプ大統領は「中国の習近平総書記からの電話を待っている」と述べた。そうした中、中国の習近平国家主席は14日、東南アジア3カ国歴訪を開始し、最初に訪れたベトナムで共産党書記長のグエン・フー・チョン氏と会談を行った。会談で習氏は「中国とベトナムは戦略的な忍耐力を強化し、一方的な覇権的行動に共同で反対し、世界の自由貿易体制と産業・供給チェーンの安定を守るべきだ」と述べた。チョン書記長は「対中関係の発展はベトナムの外交政策において最優先事項である」と強調したうえで、「デジタル転換と科学技術分野の協力を中越関係の新たな焦点とし、重要技術分野の協力を強化すべきだ」と提案した。

習近平氏は東南アジア歴訪を開始する直前の14日、ベトナムの官製新聞『人民報』に寄稿し、「多国間貿易体制を揺るぎなく守り、世界の産業・供給チェーンの安定を保ち、開かれた国際協力の環境を維持すべきだ」と述べた。また、「中越は産業・供給チェーンの協力を強化し、5G、AI(人工知能)、グリーン発展などの新興分野において連携を拡大すべきである。中国はベトナム産の高品質な製品が中国市場に多く流入することを歓迎する」と述べた。

習近平氏:一方的覇権主義に共に抗し、サプライチェーンと貿易秩序を安定化

ロイター通信によると、習氏は会談中、ベトナムに対し、米国の関税による影響に対応するため、貿易とサプライチェーン分野での中越の協力を強化するよう呼びかけた。中越両国が署名した協力協定には、サプライチェーンや鉄道建設の連携強化などが含まれており、その中の1件には、中国国際貿易促進委員会とベトナム商工会議所の協力を強化する覚書も含まれている。なお、ベトナム商工会議所は商品の原産地証明の発行を担っている。

中国の国営通信『新華社』によると、習近平氏とグエン・フー・チョン氏は、中越双方が署名した計45件の二国間協力文書の締結に立ち会った。文書は、交通インフラの接続、AI、税関検査・検疫、農産物貿易、文化・スポーツ、民生、人材育成、メディアなど多岐にわたる分野をカバーしている。

中國半導體、晶片(芯片)、科技戰、5G、華為、長鑫存儲。(美聯社)
中越双方が署名した45件の二国間協力文書は、相互接続、AI人工知能、税関検査検疫、農産品貿易、文化とスポーツ、民生、人材開発、メディアなどの分野を網羅している。(AP通信)

新華社によると、習近平氏はチョン書記長に対し、中越双方は「政治的信頼をより高く、安全保障協力をより実効的に、実務協力をより深く、民意の基盤をより強固に、多国間の協調をより緊密に、意見の相違をより適切に管理・解決する」という「6つのより高い目標」に基づき、包括的な戦略的協力を質の高い形で推進し、「中越運命共同体」の構築を安定的かつ長期的に進め、「人類運命共同体」の構築にも新たな貢献を果たすべきだと述べた。

中越が45件の協力協定に署名、貿易・AI・文化分野を網羅

ベトナムの国営メディア『ベトナム通信社』によると、双方は定期的なハイレベル交流を維持することで一致し、外務省、国防省、公安省間の戦略対話メカニズムを閣僚級に格上げすること、また両国政府間で鉄道協力委員会を設置し、鉄道分野での連携を促進することでも合意した。さらに、多国間協調の強化や意見の相違の適切な管理・解決も確認された。チョン書記長は、両国が外交・国防・安全保障など重要分野における両党の協力を強化し、戦略的な交通インフラの連携、優遇融資の提供、技術移転、人材育成を促進し、ラオカイ―ハノイ―ハイフォン鉄道プロジェクトの円滑な実施を確保するよう提案した。

さらにチョン氏は、中越関係の新たなハイライトとしてデジタル転換と科学技術協力の推進を提唱し、重要技術分野での連携強化、よりバランスの取れた貿易と高品質な投資の促進、ベトナムにおける象徴的な大型プロジェクトの優先展開、ハノイや大都市における大気汚染問題への支援も提案した。

また、中国の国営通信『新華社』によると、チョン氏は「ベトナムは一つの中国政策を堅持し、中国の統一実現を支持し、『台湾独立』のいかなる分裂行為にも断固反対する」と述べたという。ただし、こうした内容はベトナム国営メディア『ベトナム通信社』の報道には含まれていない。 (関連記事: 韋安の視点:トランプが世界経済に「三つの切り込み」 国際政治の主流が「中国包囲」から「アメリカに注意」へ⁉︎ 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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