中国とロシアによる第6次合同巡航は8月6日、西太平洋北部海域に入った。今回の巡航は中露海軍史上、兵力規模が最も小さいとみられるが、「西太平洋の安全保障上の脅威に共同で対応する」という戦略任務を担っている可能性がある。今後は、日米の海上軍事同盟への対抗策として定期的な巡航となる可能性も指摘されている。ロシアのプーチン大統領と米国のトランプ大統領は15日、アラスカの米軍基地で「ロシア・ウクライナ戦争」をめぐる協議を行ったが、この後には第9回「合同空中戦略巡航」任務が予定されている。さらに英国の空母打撃群が9月上旬まで日本に滞在する予定で、この間、中露両国の軍事協力は一層緊密になる見通しであり、中国東部戦区は警戒態勢を強化するとみられる。
中央気象局によると、台風11号(ポードル)は8月13日午後1時ごろ台東県太麻里付近に上陸し、同日午後4時ごろ台南市七股から台湾海峡に抜けた。14日午前5時の時点で中心は金門の西約210キロにあり、西北西に向かって広東省汕頭へ進んでいる。中国艦は早ければ14日から15日にかけて台湾周辺海域に戻る可能性があり、中国軍機も15日から次々と海上に展開する見込みだ。気象局の予報では、16日(土)から17日(日)にかけて台湾各地は晴天に向かい、中国艦艇や航空機は即座に台湾海峡へ戻って演習を再開すると予想される。
まず、筆者の推測では、気象庁の情報に基づき、台風11号は8月10日午前8時時点で北緯21.4度、東経138.5度付近にあり、時速19キロで西進していた。この進路は、米国、英国、日本などの軍事同盟が西太平洋海域で演習を行っていたエリアに向かう可能性があり、演習が早期終了するか、中露合同巡航編隊が日本周辺海域への接近を一時延期するか、さらには台湾海峡を含む両岸関係が一時的に冷却期間に入るかが注目される。(関連報道:陸文浩の視点:ジョンソンと頼清徳が連携して中国を牽制、中国軍戦備の強化新模式!)
日本防衛省統合幕僚監部は8月12日、4件の発表を連続して行い、このうち2件では中国海軍艦艇3隻(052D型駆逐艦「淄博」=156、054A型護衛艦「揚州」=578、815A型電子偵察艦「玉衡星」=798)が8月10日と11日に西太平洋から宮古海峡および大隅海峡を経由して東シナ海へ戻ったことが報告された。これらの艦は、浙江省舟山の定海第6駆逐艦支隊および第2作戦支援艦支隊に所属し、西太平洋での監視と電子偵察任務を終了。米英日豪西ノルウェーが8月4日から12日まで西太平洋で行った海上合同訓練の影響を受け、さらに台風の進路が演習海域を直撃する予測もあったため、東部戦区海軍の艦艇は8月10日と11日に宮古海峡および大隅海峡を通過して浙江省舟山の基地へ戻り、台風に備えたとみられる。
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英国海軍の「エリザベス女王」級空母「プリンス・オブ・ウェールズ」(R09)は8月12日、神奈川県の米軍横須賀基地に接岸した。同行する打撃群の一員である英国海軍Type45防空駆逐艦「ダントレス」(HMS Dauntless)や、ノルウェー海軍の対潜フリゲート艦「ロアルド・アムンセン」(HNoMS Roald Amundsen)も、近隣の海上自衛隊横須賀基地などに到着。西太平洋での合同演習は、台風対策のため少なくとも5日間前倒しで終了し、日本の軍港で休養に入った。
共同通信の8月12日報道によれば、この空母打撃群は今月下旬に東京国際クルーズターミナルに寄港し、9月上旬まで日本に滞在する予定とされる。中国軍の海空兵力は、台風が台湾や中国福建沿岸を通過した後、台湾周辺海域に5〜6隻を常時配置する見通しで、天候が回復次第、航空機も再び出動し海上での活動や演習を再開する計画だ。米英日連携艦艇が港で休養する間、中国軍戦略支援部隊は軍事宇宙・情報支援などの準備を進め、日米英など軍事同盟の動向を把握して迅速対応や領土主権の維持に備えている。
日本側の発表によると、ロシア海軍の「ヴィシュニヤ」級情報収集艦(208)が北海道奥尻島西約50キロの海域を南下。8月2日から3日にかけて奥尻島西方の接続水域から渡島大島南西の接続水域へ移動し、日本海で巡航。その後8月9日から10日にかけて東へ進み津軽海峡を通過、太平洋へ向かった。筆者の長期観察では、このロシア艦は英国空母とその打撃群の活動を狙って沖縄・米軍横須賀基地周辺を訪れ、その後電子偵察や情報収集任務を行ったとみられる。
さらに、8月12日午前6時ごろ、海上自衛隊はロシア海軍の「タランタール」III級ミサイルコルベット(978号・937号)2隻が北海道礼文島北西約70キロの海域を東進するのを確認。宗谷海峡を経由してオホーツク海へ向かうと推定されている。
米露首脳がアラスカで対峙する中、中露海軍の合同巡航が核心海域に迫った。
続いて、国際メディア報道によれば、ロシアのプーチン大統領と米国のトランプ大統領は8月15日にアラスカで会談し、ロシア・ウクライナ戦争について協議する予定だという。米メディアはホワイトハウス関係者の話として、この「双普会」はアンカレッジの米軍基地で行われると伝えた。タス通信は、米連邦航空局(FAA)がアラスカ州アンカレッジ市で一時的に空域を閉鎖し、16日に解除する計画を報じており、これらは関連しているとみられる。
中露は8月1日から5日にかけてロシア太平洋艦隊のウラジオストク港や大ピーター湾海域で「海上合同-2025」を実施。中国側からは北部戦区海軍青島第1駆逐艦支隊の052D型駆逐艦「ウルムチ」(118)、東部戦区海軍舟山第3駆逐艦支隊の052D型駆逐艦「紹興」(134)、第2作戦支援艦支隊の903型総合補給艦「千島湖」(886)、北部戦区海軍青島防災救難船支隊の927型総合援潜救命船「西湖」(841)、東部戦区寧波象山第42潜水艦支隊のキロ級636M型潜水艦(371)が参加。ロシア側は無畏級1155型対潜艦「トリビュッツ海軍大将」(564)、守護級20380型コルベット「グロームキイ」(335)、21300型潜水艦救難艦「イゴール・ベロウソフ」、キロ級636.3型潜水艦「ボルホフ」(B-603)を派遣した。
鳳凰衛視は8月7日、演習が8月5日に終了後、補給を経て中露の混成編隊が北太平洋ベーリング海に向け第6次合同巡航を開始したと報じた。東部戦区海軍の「紹興」(134)と「千島湖」(886)、ロシア太平洋艦隊の「トリビュッツ海軍大将」(564)など3隻で構成された編隊は、8月7日に日本海から北海道西方海域を通過、8日には宗谷海峡を抜け東進した。ロシア太平洋艦隊の発表によれば、8月12日時点で中露海軍はアジア太平洋地域で合同巡航を行い、カムチャツカのペトロパブロフスク港に寄港して補給を実施したという。
最後に、筆者の長期観察によれば、中露海軍は2021年10月、2022年9月、2023年8月に合同巡航編隊を組み、日本海から津軽海峡を通過して日本東方海域を南下し、宗谷海峡を抜けてベーリング海へ向かってきた。そして今回、その航路をさらに延長し、米国アラスカ近海まで進出している。今年8月12日には中露海軍の混成編隊がカムチャツカ半島のペトロパブロフスク港に到着し、補給のために停泊。一般的に訪問と補給には4〜5日を要するため、16日前後には再びベーリング海周辺で第6次合同巡航任務を続行するとみられる。
昨年(2024年)7月25日に実施された第8次「合同空中戦略巡航」(または合同空中巡航)に先立ち、6月18日には中国空軍のY-20輸送機がペトロパブロフスク空港に着陸したとの報道があった。筆者はこれを、第8次合同空中巡航の調整任務チームや軍高官、後方支援物資を運んだ動きと推測している。
同年7月25日の第8次合同空中巡航直前には、中国北部戦区海軍青島第1駆逐艦支隊の055型駆逐艦「ラサ」(102)、第1作戦支援艦支隊の903A型総合補給艦「ココセリ湖」(903)、遼寧大連第10駆逐艦支隊の052D型駆逐艦「開封」(124)、青島第1駆逐艦支隊の054A型フリゲート「煙台」(538)、第1作戦支援艦支隊偵察船隊の815A型電子偵察艦「金星」(799)などが6〜7月にかけて太平洋北部から西部海域で遠洋巡航を行い、再びアラスカのアムチトカ海峡北部海域へ展開した経緯がある。
こうした過去の動向から、今回の第6次海上合同巡航終了後にも、2025年度第9次「合同空中戦略巡航」が実施される可能性は高い。米・日・韓の3か国は、中露の2025年下半期における海空合同巡航の動きや配置を厳重に監視するとみられる。今回の第6次巡航は、わずか3隻という最小規模の水上戦力で実施されたが、これは中露が初めて「西太平洋の安全保障上の脅威への対処」を名目とし、1つの艦隊と1つの補給艦隊、そしてロシア側1隻による混成編成を常態化させ、日米海上軍事同盟の合同訓練に対応する戦術として位置付けた可能性がある。
また、中露両軍の援潜救命艦とキロ級潜水艦各2隻は、8月5日に「海上合同-2025」演習を終えているが、筆者が本稿を締め切った14日午前9時時点で、日本防衛省統合幕僚監部は両軍の援潜救命艦や潜水艦が対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡を経て中国本土へ帰投したという公式情報を発表していない。中露は引き続き日本周辺の戦略海路を経由して西太平洋で遠洋訓練を行う可能性がある。
筆者の日本防衛省統合幕僚監部に対する長期観察では、日本側は中国軍の動向を的確に把握して最終報告を行っており、意図的に情報を秘匿したり、曖昧な情報を流すことはないとみている。特に中露のキロ級潜水艦の動きは、米・日・韓3か国にとって重要な監視対象であり続けることは間違いない。